02
「駅前にさ、新しいラーメン屋できたのよ」
「へぇ」
「そこの塩ラーメンが美味しいらしくてさ、食べたくて」
「小川さん塩ラーメン好きですね」
「うん。ラーメンの中で一番好き」
着替えてから一緒に駅前に新しくできたラーメン屋さんに向かう。
小川さんは僕より30cm大きくて、いつも僕が見上げる形になってる。
見上げるたびに、まつ毛長いなとか、鼻筋通っててイケメンだなとか、なんか思っちゃって。
「…斎藤くん」
「え、あ、はい?」
「…そんなに見つめてなぁに?」
「え?あ、…いえ」
イケメンだなとか何考えてるんだろ、僕。
いや、イケメンだけど、イケメンだけど!人の顔じーっと見るとか、何考えてるの、僕。
じーっと見てたことが恥ずかしくて、今度はまともに顔が見れなくなった。
そのままラーメン屋さんについて、小川さんは塩ラーメン、僕は味噌ラーメンを頼んで、美味しい美味しいと言いながら食べた。
「はー、美味しかったー。当たりだね、このお店」
「そうですね」
「あ、斎藤くんこの後時間あったりする?」
「?はい。ありますよ」
「ちょっと寄りたいところあるんだけど付き合ってもらってもいい?」
「はい」
ラーメンも食べ終わって帰ろうかって時に、小川さんからの追加のお誘い。
断る理由もないし、なんだったらもうちょっと一緒にいたいかも…?とか思っちゃってるし。
「本屋さん?」
「そう。今読んでる小説の新刊出たからさ、欲しくて」
「小説読んでるんですか?」
「うん。恋愛小説」
「え、意外…」
「そう?」
「はい」
へぇ…小説とか読むんだ。いや、偏見とかではないけど、小説より漫画読んでそうなイメージあったから、意外だ。
「斎藤くんは?小説とか読まないの?」
「読みますけど…恋愛小説は読んだことないです」
「まじ?おすすめだよ?」
「…今度読んでみます」
「うんうん。きゅんとしたりぎゅってしたりするよー」
「…きゅんはわかりますけど、ぎゅってなんですか」
「ぎゅっは、ぎゅっだよ」
「ぎゅっ…」
「そう、ぎゅっ。こう、心臓をぎゅってされる感じ」
「………?」
小川さんの言葉遣いは不思議だな…でもなんか楽しいな。
この時間がもう少し続いたらいいのにな…なんて。
でも、この夏休みが終わったら、小川さんはバイトを辞める。
今年受験生だから、もうそろそろ勉強しないとダメで、バイトどころではない。
だから、こうやって過ごせるのはこの夏休みの間だけ。
学校が始まったら、もしかしたら学校で会えるかもしれないけど、ただのバイト仲間だし、ただの後輩だし。




