悪女の妹
「あら、妹からの手紙?破り捨ててくださいな」
離宮の一室。
ユフィーレは嫌そうな顔をしてそう吐き捨てた。
ユフィーレの開発したスイートポテトや大学芋、サツマイモのポタージュなどのレシピは「サツマイモはそのままで充分美味しい」とシンプルなレシピしか必要としていなかったエトワールに激震を与えていた。
そもそもエトワールでは大量に作られて売れ筋商品でもあったサツマイモが、高騰するほど人気となったほどだ。
サツマイモ農家はウハウハ、王家も大喜びとなる事態。
その報告にご機嫌だったユフィーレだが、妹のことになると氷点下まで機嫌が下がる。
「おや、いいのかい?祖国に残してきた、可愛い可愛い異母妹からの手紙だよ?」
オスカーがいっそ清々しいほどの笑顔で皮肉を言う。
皮肉を言い合える程度には、親密になったとも言える。
「オスカー、知っていて?あの子、魅了魔術の使い手ですの。下手に関わると火傷しますわよ?私みたいに」
「…へえ」
その一言でなんとなく全部察した風のオスカー。
ニコラもまた察したようだ。
わかっていないのはマリユスだけ。
「私みたいにって、なんじゃ?」
「ユフィーレ殿下は妹の魅了魔術に操られたバカどもに国を追いやられたんだってさ」
「ユフィーレ殿下を悪女に仕立て上げたのもその力なんだって」
「はぁ!?それじゃやっぱりユフィーレ殿下は悪くなかったが!?」
ユフィーレは困ったように笑った。
「仕方ありませんわ。あの子の魅了魔術はすごい威力ですもの」
「ふざけんなや!ユフィーレ殿下が何をしたって言うんじゃ!」
「少なくともあの子にとっては目の上のたんこぶだったのでしょうね。そんな程度のことですわ」
勝手に自分のことのように憤ってくれるマリユスは嬉しいが、妹には関わりたくないユフィーレである。
「ユフィーレ、今ならエトワール王国側からシエル皇国に抗議するなり出来るよ?」
「個人的な復讐だって僕らが手伝ってあげられるけど」
「あらいやだ。私が復讐なんて望むように見えて?」
「…見えないけど。でもいいの?」
「いいですわ。あの子はあの子なりに祖国で幸せになればいい。私はここで幸せに暮らしますわ」
そこでユフィーレはポンと手を打った。
「あ、そうだわ。この間魔法陣開発とレシピ開発のご褒美にもらったお金、あれで魅了魔術を解く香水でも作りませんこと?エトワール王国にとっても、魅了対策は大切でしょう?」
「いいね!手伝うよ!」
「ノアにも持たせておきたいしね」
「よっしゃ、まずは材料集めじゃな!」
こうして魅了対策の香水を作る新たなマル秘国家プロジェクトが始まった。




