悪女の心配
「ああ、一応…王太子殿下には香水が完成するまでは妹を近付けないで」
調合用のガラス瓶を片手に、ユフィーレは真剣な表情で三人にお願いする。
「香水が完成したら、王太子殿下に事情を話して渡してちょうだい。妹はきっと、近いうちに接触してくるわ。だって読まなかったけど、手紙まで送りつけてきたもの。最近のエトワールはさらに発展したのもあるし…」
「まあ、その発展の立役者は君だけど」
「それも含めて、理解した上で接触してくる可能性が高いの。妹はプライドも高いから」
「わかった。約束するよ、僕たちがノア殿下を守る。絶対に君の妹は近付かせない」
「よかった…」
ユフィーレがホッと胸を撫で下ろすと、ニコラが空気を変えるように明るく声を上げる。
「はーい!じゃあそういうことで、早速調合開始しよう!魅了魔術に対抗する効果があるとされるフルーツをいくつか用意したよ!」
「まあ、ありがとうニコラ様」
「果皮のオイルを抽出して、ユフィーレ殿下の祖国の失われた古代魔術の知識で香水を合成したら…妹さんだって下せるような香水の出来上がりさ!」
「ふふ、そうね。さっそく試して見ましょう」
「しかし出来たとして、どうやって試す?」
「あ、僕魅了魔術も使えるよ」
ニコラが手をあげる。
「掛かってくれるのは誰かな?」
「私はパスよ」
「そりゃそうだよ、第二妃であるユフィーレ殿下にそんなことできない」
「僕もパス」
「ならわししかおらんか…まあええ!やってやるきに」
ニカッと笑って引き受けるマリユスにユフィーレは驚く。
「いいの?マリユス様」
「おう、わしに任せちょけ!」
ユフィーレはマリユスの献身に感謝しつつ、三人と共同で作業に取り掛かった。
「ねえ、この実験が成功したら…ユフィーレ殿下は表舞台に出るよね?」
「ええ、そうなりますわね」
「…ちょっと残念。君をこうして三人だけで独占する時間、好きだから」
オスカーの言葉にユフィーレは意外そうにオスカーの顔を覗き込む。
「あらやだ、そうですの?私は表舞台に戻らなくても良くってよ?」
「え、でもノア殿下と夫婦として…」
「そこは、愛され役のアリス殿下、お仕事用の私と役割分担しますわ。執務なり外交なりでお手伝いすることはあっても、ノア殿下の子を生むのはアリス殿下だけですことよ?」
「なっ…じゃあ、ノア殿下と夫婦になる気は本当にないが!?」
「ええ。だってあのお二人、嫉妬するほどラブラブですもの。間に割って入ろうとする方が虚しいですわ」
ユフィーレがそう呟くと、オスカーやニコラはにんまり笑いマリユスは驚愕で目を丸くした。
「だったらさ。僕たちがユフィーレ殿下をノア殿下から下賜して貰うって言ったらどうする。僕もオスカーもマリユスも国には貢献してるし、出来ないことではないはずだけど」
「…ええっと…いやではないですわよ?本当にそんなことが出来たら、ですけど」
「言ったね?」
オスカーとニコラとマリユスの真剣な表情に、ユフィーレは困った顔になるばかりだった。
…しかし、ユフィーレも嫌な気がしないと感じているのも確かだった。
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