魔法陣の販売
王太子ノアの主導の元、宮廷魔術師ニコラによって開発された魔法陣の描かれた紙が平民向けに安価で販売されることとなった。
…ユフィーレが開発の立役者なのは秘密だ、これはユフィーレの希望である。
安価な火と水の魔術の魔法陣はあっという間に平民たちに広まった。
その便利さから平民の生活は一気に楽になり、豊かになった。
そしてその薄利多売から国庫も潤う。
…誰も損をしない、好循環である。
「素晴らしいぞ、ノアよ!まさか乳兄弟と共にこれほどの功績を挙げるとは!これからも期待しているぞ」
国王からも絶賛されるノア。
しかし自室に戻ると正妃のアリスに溢す。
「本当は俺たちだけの功績じゃない、ユフィーレさんのおかげなのに…」
「そうですね、ノア様…でも、ユフィーレ様自身が望んだことですから…残念ですね」
「そうなんだよなぁ…」
一方でその頃、離宮では。
「まあ、国益になるアイデアを出してくれないか…ですの?そんなもの悪女に聞いてどうしますの?悪いアイデアを出すかも知れなくてよ?」
「それでもユフィーレ殿下のご意見をお伺いしたいと思ってね。なんせ魔法陣を描いた紙のアイデアで国庫はかつてないほど潤ってる」
「…そうですわねぇ」
ユフィーレは一口紅茶を飲んだ後、カップを置くと口元に指を当てて考え込む。
「この国の卵はとても濃厚で美味しいわ。あとお米も。「親子丼」や「他人丼」、「カツ丼」や「チキンカツ丼」はいかがかしら。この世界ではまだ開発されていないようですし」
「おや、今度は打って変わって「食文化」に手をつけるの?でもどれも聞いたことがないな…」
「だからこそ開発の価値があるんですわ。レシピは書いて差し上げますから、あとはご自分たちでなんとかなさって」
さらさらと紙にペンを走らせるユフィーレ。
一生懸命に頭の中のレシピを文字起こしするユフィーレは、オスカーやニコラ、マリユスの優しい視線に気付いていなかった。
しかし、ユフィーレの書き上げたレシピを受け取った三人の目は優しいものから鋭いものに変わる。
この国の食文化を揺るがしかねないそれに、確かな価値を見たのだ。
「…これは、すごいな。ダシという概念、半熟の卵で包むという技術…王都の食堂や宿屋に広めれば、王都の経済力がすごいことになりそうだ」
「ふふ、そうでしょう?試作品は三人で毒味でもなさって。私にもお裾分けしてくださってもよろしくてよ」
得意げなユフィーレに、三人は(やっぱり悪女に見えないな)と思いつつお裾分けの約束をしたのだった。




