悪女の知恵
「やあ、ユフィーレ殿下。ご機嫌いかが?」
「あら、オスカー。ニコラにマリユスまで、どうかして?」
「ただのご機嫌伺いさ」
「退屈してへんか?」
「ええ、ここは三人の仰る通りに完璧に手配されていて居心地がいいわ。趣味のかぎ針編みも思う存分できるし」
幽閉されて三日。
さっそくのご機嫌伺いに、ユフィーレは満足そうにそう言い切った。
とりあえず三人とも安堵する。
「ならよかったよ。ノア殿下も気にしてたんだ」
「あら、そんな必要ないのに」
「あんまり早く撤退するとノア殿下に文句を言われるから、少し世間話して行ってもいいかい?」
「もちろんですわ。ここまで素敵な「檻」を用意してくれたんですもの、少しくらいなら構いません」
そんなユフィーレにマリユスは愚痴をこぼす。
「ノアがな、平民たちにも火魔術や水魔術が使えれば生活が楽になるのにと嘆いておってな。三人でこっそりどうにか出来ないか考えよるが、思いつかん」
「…平民たちに火魔術と水魔術、ね。たしかに生活は楽になるでしょうね。なら、紙に魔法陣を書いて売ったらどうかしら。学のない平民でも、魔法陣が最初から完成されていれば使えますわ。ただし、平民の少ない魔力でも使える特別な魔法陣を開発しなければなりませんけど」
ユフィーレは得意げにそう答える。
三人は目を丸くした後、満足げに笑い拍手した。
「なるほど、特別な魔法陣を開発して印刷して売るか…それならノア殿下の望みも叶いそうだ」
「ユフィーレ殿下は発想が豊かだね!」
「もしかして、魔法陣の開発にも協力してくれるが?」
「…え?」
マリユスの期待を込めた目にユフィーレは目をぱちくりする。
ユフィーレとしては、ただの思いつきを言葉にしただけだ。
開発にまで協力してやる理由もない。
…だが、趣味のかぎ針編みくらいしかやることがなかったユフィーレにとってはちょうど良い暇つぶしにはなりそうだ。
「…そうね、協力して差し上げてもよくてよ?」
「やった!ユフィーレ殿下の柔軟な発想には期待してるんだ」
「こらニコラ、はしゃぎすぎ。ありがとうございます、ユフィーレ殿下」
「いいんですのよ、ただの暇つぶしですから」
「ユフィーレ殿下、頼みますきに!」
ということで魔力が少ない平民向けの、大気中の魔力を取り込む式の特別な魔法陣を作る国家プロジェクト(四人がかり)が開始されることとなった。
その頃ノアとアリスは…。
「ユフィーレさん、離宮気に入ってくれたかなぁ」
「そうだといいんですけど…」
ユフィーレの幽閉生活の満足度を心配していた。
まさか自分たちのために全面協力してくれているとも知らずに。




