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新米魔法使いの生きる道 その2  作者: GANON


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8/10

砂漠の工場

 ある日、私たち4人はギルドの2階、来客や話し合い用の部屋へと集められた。

 ちょっと硬めのソファに2人ずつ座る。

 私の横にはアイフェ。左のソファにはヨアンナ姉妹。

 テーブルを挟んで、正面のソファにはめずらしくギルド長が座っている。


「まずはこれを見て欲しい」


 目の前のテーブルには10枚くらいの紙がある。

 その中から1枚を手に取って眺める。


(なになに? 親権の移行がどうたら?)


 ざっと読んだ感じ、紙には人身売買の記録。もとい孤児の引き取り記録のようだ。


「これに問題が?」

「記録自体には問題はない」

「じゃあなんで?」

「いずれも各地の孤児院から子供が出ている。しかし、その行先はとある砂漠の地域へと引き取られることが多い。今回、君たちにはそれに問題がないか調査してほしい」


 内部調査だ。

 私は初めて受ける。

 ギルド内での仕事は主に依頼主がおり、このように上から直接指示を受けるのは珍しい。

 細かい段取りの説明を受け、翌日にはその場所へと向かうことになった。


「食料を確保してくる」


 そう言ってヨアンナ姉妹は市場へと向かっていった。


「私、初めての調査なんだけど。アイフェは?」

「アタシも初めてかなぁ? アタシの魔法は隠密に向いてないからねぇ」

「たしかに」


 とりあえずアイフェと薬屋へと足を向ける。

 いろんな効能の薬を眺めて、必要なものを思案したいから。


「ある程度怪しい状態が無くなれば問題ないとして帰って報告できるけど、怪しい限り2週間まで粘って調査してくれってよ」


 調査の内容は、孤児院から引き取られた人間、少年少女たちがどうしているのかというもの。

 ここ最近、調査対象の砂漠の場所に引き取られたのち、連絡が途絶えるケースが増えている。

 タミテンカから1日、中継の村を挟み、街を出て2日後。砂漠地帯の東北へ向かう馬車。


「あっついなぁ」


 アイフェがそう呟く。

 私も馬車に揺られているだけなのに、汗が止まらない。

 

「給水休憩で~す」


 今回、馬車の御者は女性だった。珍しいこともあるものだ。

 白い半袖シャツから出た、よく日に焼けた筋肉質の腕。外に出て働く人の体だった。

 真っ白な服に、つば付きの帽子を被っていた。

 暑い地域ではよく見る服装らしい。本での情報として知っているが、見るのは初めて。


「みなさんは何をしに?」

「まあ仕事。ちょっと話を聞いて、監査みたいな?」

「へぇ~。観光するようなところでもないですしねぇ」


 行く先は砂漠、荒野地帯の町と村の中間くらいの規模の場所。

 特産品は鶏肉、牛肉と絨毯だそうな。

 宿を取り、夕食の細長いライスに冷製スープを頂いて翌日。

 同室の寝ざめのよいアイフェに起こされ、横の部屋のタール姉妹と合流して軽い朝食を済ませ、午前10時、問題の工場へ。

 服飾工場はキノコのような形の建物だった。


「元孤児はどこに?」

「ええ。呼んできますわ」


 工場長は3人の元孤児を呼んできた。


「イルです」

「イルちゃん、何か不満とかない?」


 茶色い髪の毛をポニーテールにしている女の子。たぶん年は12歳くらい。


「いえ、私のような人間を雇ってくださって感謝しています」

「ふ~ん。じゃあそっちの君」


 アイフェが指さしたのは15歳くらいの男だった。


「俺? 俺も特にないかなぁ? 飯にも困らない、寝る場所もある、着替えも自由。まあもっと自由になるお金が欲しいかな」

「ですってよ、工場長」

「善処します」

「んで最後、何かある?」

「ねえょ。仕事できて生活できるのに何にも文句はねぇ。仕送りもできて感謝しかない」


 最後の1人は私たちよりおそらく年上の男だった。

 かなり前から働いているらしく、勤続10年だと言った。


「特に問題ありませんよね? でしたら仕事の邪魔になっているので速やかに帰っていただけるとありがたい」

「わかりました。ありがとう」


 私たちは帰ると見せかけて、聴力強化の耳薬を耳に垂らし、閉まった部屋の扉に耳を近づけた。


『あいつら怪しんでたか?』

『いや、全然そんな感じしなかったぞ』

『じゃあ予定通りイルを入れよう。これ以上引き延ばすと納品に遅れちまう』


 全員がこの言葉を聞いて、確信した。絶対に何かやっていると。

 私とミナが勝手にいろんな部屋を開けてチェックする。

 見つかったらトイレを探していたと言えばいいとアイフェに言われた。

 いくつかのドアを開けると、少し豪華な部屋が見つかった。

 その工場長のものらしきデスクの中をチェックすると勤務表が入っていた。


(イルにチェックが入ってる。そして以降にイルに仕事の予定が入らなくなってる・・・・・・)


 宿へ戻って作戦会議。


「ウチとレイチェルが潜入。バレたら姉ちゃんとアイフェが突入ね」


 次の日、宿から引き払い、2人ずつに分かれて民家で過ごすことにする。

 理由は、何か犯罪などをするのならば当然警戒するだろう。

 宿の使用具合などもチェックされるはず。私たちがいないとなれば警戒もしなくなるだろう。

 宿へ支払う金額の倍額を払い、民家へ居候。

 外へ出ず、屋内でずっと過ごすこと2日。

 私たちは調査に入って4日後のチェックの入っていた日、その日、施設内へ姿消しの粉を使い無断で侵入した。


「怪しいのはここだよね」


 建屋の中でも物置だと言っていた部屋。ゆうに20人ほどが十分に入れる大きな部屋だ。

 姿を消す粉の効果が切れて、徐々に全身が見えるようになる。


「この中とかどう? 隠れるのにちょうどよくない?」

「いいね。3時間ほど様子を見て、何もなければ帰ろう」


 カラの箪笥がいくつか無造作に置かれている。

 埃もいっぱいだし、使われているということはなさそうだ。

 2つの箪笥に分かれて、扉を半分以上閉めて、ボロ布を垂らしておく。


(・・・・・・来た!)


 フードを被った何人かの男女の姿が見える。

 両手で抱えた石が中央に置かれる。

 絨毯が敷かれ、その前にイルが立つ。

 8人もの人間が、発光した大きな石、そして絨毯と少女を囲んで何かを詠唱していた。

 私とミナは箪笥の中からその様子を見守る。

 しばらくすると、胸の前で手を組んでいたイルが膝から崩れ落ちる。

 すぐに囲んでいた1人がそれを支え、そして4人で抱え、どこかへ行った。

 残された4人と、光を失った大きな石、絨毯。


「・・・・・・どうなったんだろう」


 残った4人が絨毯を丁寧に巻いて運んでいく。

 私たち以外誰もいなくなった部屋。

 

「1人、倒れただけ、とは思えない」

「詠唱していた人の顔は見えた?」

「2人は見えた。覚えたよ」


 帰りも姿消しの粉を使い、家へ戻った。

 翌日、もう一度潜入したが、そのイルが働いているところをみることはなかった。


(絶対に何かあるはず)


 結局盗み見た以上の証拠は見つからず、イルがいなくなったようだということしか事実としては無かった。

 みんなとの相談の上、盗み見たことは秘匿してもう一度工場長に会うことにした。





「イルの姿が見えないけど・・・・・・イルはどこに行ったの?」

「おや、あなたたちはもう帰ったのだと思っていました。イルは別の場所へと"転勤"になりましたよ」

「―本当に?」

「そうですよ。あなたたちに詳しく話す義理はありません。ウチで引き取った子、他の場所で仕事をしていれば問題ないでしょう?」

「・・・・・・では、その仕事先から我々のギルドへ連絡をイルにしてもらいたい」

「いいでしょう。書簡を送らせていただきます」




 私たちができたことはここまでだった。

 あとは街へ帰ってギルドに報告するしかない。

 全部言えないことが悔しかった。でもしかたがない。私たちが得た情報をもとに本格的な調査が始まってくれることを祈るだけだ。


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