進化の加護⑴
『加寿にぃ!あたし莉沙だよ!聴こえる?あたしの念波届いてる?』
突然の声が頭に響いた事に驚き、俺は莉沙を見た。莉沙は、微笑みを浮かべているだけで、声を発していないようだ。
『加寿にぃ!どう?伝わっている?』
「莉沙か!」
『そうだよ!思念伝達スキルを具現化(創造)してみたの。加寿にぃも多分使えるよ。』
[スキル(思念伝達レベル1)を獲得しました。これにより、半径10mエリアに居る相手に、言葉を発しなくても相手に頭で念じた事を伝えられる様になりました。]
(おお!凄い!)
『莉沙!俺も使えるようになっぞ!』
『良かった!これで、他人に聞かれたくない事は、このスキルを使えば良いね!』
(ナイス!莉沙!でも俺達の加護はチート過ぎるな!)
俺と莉沙は、サティウスで二人が生き抜くために必要そうなスキルを、進化の加護を活用して獲得することにした。
(先ず、俺達の居るこの森が、安全かどうか?調べたいな!どうしたものか?)
俺は、無意識にそう念波を発していた。
[ご希望のスキル(感知レベル1)を獲得しました。これにより、半径10mエリアに居る動物植物を感知出来るように成りました。]
(進化の加護の力なのか?スゴ!)
俺は[スキル感知]を獲得して直ぐに、俺の五感能力が鋭くなったように感じた。
(おや?何か動いたな!?)
俺は、莉沙に目配せをし、今しがた感知した生物が何かを調べることにした。
『莉沙!俺達にとって危険な獣かもしれないから、相手に気付かれないように慎重にいこう!』
『加寿にぃ、判った。』
ここサティウスでは、俺達は間違いなく弱者だと思う。それはそうさ!ほんのさっきまでの、平和で安全な日本の中学生だったのだから当然だ。俺も莉沙もサバイバル生活とは無縁だったのだから……。
『莉沙!万が一、相手から攻撃されて怪我したら大変だから、怪我を治せるスキル具現化できないかなぁ?』
『そうだね!』
その時ステイタスボードが俺達に通達してきた。
[ご希望のスキル(治癒レベル1)を獲得しました。これにより、小さい怪我を修復できるようになりした。]
俺と莉沙は、顔を見合せ驚きと共に、興奮して顔が上気するのを感じた。
(やった!こんなに簡単にスキルが獲得出来るなんて!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!)
『でも、加寿にぃ!相手から攻撃されたら、怪我する前に防御できた方がいいよね!』
『そうだな!莉沙、いい考えだ。しかしどうなんだろう?進化の加護でも限度が有るんじゃない?』
俺は、いくらなんでも念じたら具現化するみたいな、まるで漫画の世界のようなことはないよな?と思った。
(とは言え、尋ねるのは直ぐ出来るし。願った者勝ちみたいなところがあるかもだし……。念じてみるか!)
『あの~。ステイタスボードさん!今の内容、具現化出来ます?』
[ご希望のスキル(防御レベル1)を獲得しました。これにより、レベル1の物理的な攻撃に対して物理耐性が出来ました。]
(早!スゴ!神か!???そうか!守護神→神なんだ!)
『加寿にぃ!あたし達、何かスキル獲得速度と言うか、進化速度早くない?』
『莉沙!これってヤバイ!レベルの早さだと思う。いや!ヤバイ!ヤバイ!レベルか?いやいや、ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!レベルか?』
(加寿にぃったら、思考回路がショートしてるみたい!小学生並の語彙力と言うか?他人に聞かれたら、超恥ずかしいレベル!でも、あたしはこういう加寿にぃの反応、そんなに嫌いじゃないかな……?)
『加寿にぃ!そろそろ感知したモノを調べに行こうよ!』
『お!おぅ!』
(莉沙、張り切ってるな。ここ(サティウス)に来て、不安そうにみえたけれど、進化の加護によってスキルを獲得するようになってから、いつもの莉沙に戻ったみたいだな。俺、少しホットした。これなら、莉沙と2人何とかここ(サティウス)で生きて行けそうな気がしてきた。)
突然、莉沙から念波が届いた。
『加寿にぃ!小さな動物みたいのが居るよ。』
『俺も確認したよ。』
そこには、毛色が銀色をした狼のような子供の獣が居た。
(テイム!)
俺は、ペットが出来たら、莉沙が喜ぶ気がして無意識にテイムと念じていた。異世界物の漫画の読み過ぎと言われても仕方ないが、ちょっと獣魔を使役する事に憧れていたので、衝動的と言うか、何も考えずに閃いた時には念じていたのだ。
[スキル(テイム(使役)レベル1)を獲得しました。これにより、自分と同レベルの獣を使役出来るようになりました。尚、使役した獣のステイタスボードは、テイマーによって開くことが可能です。]
(おぉぉ!来た~!)
『加寿にぃ、凄い!』
莉沙が興奮して俺の腕を掴み、俺の体を激しく揺すっている。
(まさか、テイム出来るとは……)
『ステイタスボード!』
俺のステイタスボードの横に、今テイムした獣のステイタスボードが展開した。
[名前 無、年齢1歳、性別オス、牙狼獣(幼体)]
「牙狼獣かな?莉沙!この子に名前付けてあげようよ。」
「そうね!加寿にぃ!あたしが名前付けていい?」
「あぁ、いいよ」
「それじゃ~。………」
莉沙は、暫く考えてから牙狼獣の名前を俺に告げた。
「ベタだけど、呼びやすいから、シルバーかな?」
「あなたの名前は、今からシルバーよ。宜しくね!」
「ガゥ」
莉沙の言葉が判るみたいに、牙狼獣シルバーはひと鳴きすると、尻尾をバタつかせた。
「あっ!シルバーのステイタスボードに名前が自動で入った!すげ~便利だな!」
「本当に便利と言うか、スゴ過ぎだよね。」
「おや?シルバーにもスキルがあるな。瞬足レベル1と跳躍レベル1か?どの位のことが出来るのかな?」
俺達は、進化の加護から具現化されるスキルに夢中になり、辺りが暗くなり始めて、やるべき優先事項を思い出した。
「莉沙!ヤバイ!食料の確保と安全な寝床確保がまだだ!」




