異世界生活の始まり⑷
水の流れをたどって、俺達は暫く歩くとそこに、水の流れる2~3mはあるだろう大きな岩肌を発見した。
俺と莉沙は、ハイタッチして喜んだ。
(だが、この水飲めるのか?)
俺の不安そうな顔を見て、莉沙が言う。
「加寿にぃ!もし、この水が飲めなかったら、あたし達は、生きていけない。少し心配だから、沸かしてから飲みたい気持ちは有る。でも、沸かす手だてが今無いのなら、一か八か飲んでみようよ!正直、あたし、喉カラカラ!」
そう言うと、莉沙は俺の不安そうな顔等気にしない素振りで、手で岩肌を伝わる水をすくい飲んで見せた。
「あぁー美味しい!加寿にぃも飲みなよ」
そう言って、莉沙は水をすくっ手を俺の口元迄よこした。折角すくってくれたのを飲まない訳にはいかない。俺は、莉沙の手から水を飲んだ。
(確かに旨いな)
「莉沙!ありがとう。」
「どういたしまして。でも、加寿にぃ!少し手がくすぐったかっよ。」
そういって、莉沙ははにかんで見せる。
(こういうところ、本当に莉沙は可愛いよな。)
「そうか?じゃ~、今度は俺が莉沙に飲ませる番な。」
そう言って、俺は莉沙に手を差し出した。
「何となく恥ずかしいな……。」
そう言いながらも、俺の手から水を飲む莉沙。
俺も何だか恥ずかしくなってきたが、それを誤魔化そうと、辺りを見回して何か捜す振りをした。キョロキョロする俺を見て莉沙が訝しげに俺に話しかける。
「加寿にぃ!何か捜しているの?」
「水を入れられる物が無いか捜してた。」
咄嗟に、俺は答えたが嘘ではない。
「そうだね。ここでは、ちょっと寝られそうにないし…。水を飲む為に、毎回ここまで来るのも大変かも。」
そう言うと、莉沙もキョロキョロ周りを見て捜し出す。しかし、水を運べる様なものは見つからず、暫くして二人とも捜すのを諦める。まあ、仕方無い。早々次々と都合良く物事が運ぶはずもない。
(こんな時、魔法が使えたらなぁ。)
俺は、心の中で水筒出てこいと念じてみる。
勿論、出ない。かたわらで、莉沙が不思議そうに俺を見ている。
「ほら、異世界転移モノに付きもののスキルとか魔法が使えたらなぁってね」
少し照れながら、莉沙に弁明する。
「加寿にぃ!まだ、異世界かどうかも判らないんだよ!」
「はっはっ」
俺は、呆れ顔の莉沙に見られ、少し顔を赤くした。
「加寿にぃ!何赤面してるのよ。」
そう言うと、俺を弄り出そうとする。
「莉沙!今は勘弁!俺達未だ水しか見つけてい無い。」
そう言って、莉沙の弄りから辛くも逃げ出した。
「そうだった。」
莉沙も、真顔に戻った。俺達は水場を後にした。
始まりの場所とでも呼ぼうか。俺達は、この森の中のスタート地点に戻ってきた。探索する様になっていたからか、始まりの場所に着いて直ぐに俺達は雨風をしのげそうな、空洞化した大木の幹を発見した。
「莉沙!ここ、今晩泊まるのに良くない?」
「うん!良さそうだね!」
(良し!これで、取り敢えず、水と寝る場所は確保出来たな。後は食料だけれど、どうしたものかな~。移動中、ずっと植物や菌類で、食べられそうな物がないか注意して観てきたのに、見つからないんだよなぁ……)
思案している俺の顔を見ている莉沙が、少し心配そうな表情をしているのに気づいた俺は、俺の胸の内を話すことにした。
「莉沙、後は食料が見つかれば、俺達行き長らえな。」
そういって、莉沙の顔を見る。
「そうだね。加寿にぃ!でも、何か見つからないね?」
(そうか!莉沙も、俺と同じ様に感じていたんだな。)
俺は、もっと莉沙を気遣っていかなきゃいけないと気づいた。
(もっと、しっかりしろ!加寿!)
俺は、自分自身にはっぱをかけた。
(俺は、莉沙を守りたい!その為に必要なモノは全て手に入れたい!しかし、今の俺は、ここで生き抜く為には頼り無さすぎる。)
俺は、心底自分自身の不甲斐なさを嘆いたが、莉沙を守る為に落ち込んでいる訳にはいかない。俺は、本気で神頼みをしようと心の中で強く念じてみた。
(神様が居るなら、俺に莉沙を守る力を与えてくれ!頼む!)
その瞬間、俺の頭の中に見知らぬ声がした。




