1-3-5:1対3の最初の模擬戦④…【レスターside】
【レスター・レディエル・カルテットside】
(なんでっ!?)
目の前の教官の男に向かって何度も攻撃を繰り出す。
高速での連撃の突き。フェイントを入れた攻撃。
しかし目の前の男は此方の攻撃をすべて見切り余裕に躱し続ける。
苛立ちが募る。
それはなぜか?理由は簡単だった。
それは目の前の男がけっして此方に武器を向けないことだ。
最初に攻撃した時から男の両腕はだらんと下がったままだった。
その態度がどうしても気に入らないと思った。
相手が各上の存在であるのは分かっていた事だった。
理由は知らないが嘗て魔法師であったが今では魔導器持ちの魔導師に落ちた人。
魔法師であった頃にこの学院で2度魔導競技祭に参加し優勝している事は、この学院にいれば誰でも知る事だった。
自分に精一杯だったから他がどうとか考えている余裕はあまりなかったが、【一なる全】と呼ばれたアシュレイ・バークレインの噂くらいは耳に入っていた。
とある理由からわ――オレはある魔法師を事を探していた。
その魔法師は『ゼロ』と呼ばれる事しか分からなかった。
オレはその魔法師に遇ったらあの日の感謝を伝えたいと思っていた。
ある時に『ゼロ』と呼ばれたその人がエアリーズの学院に在籍していると言う噂を聞いた。
ちょうど学院に入学するので逢えたらいいな、と期待をしていた。
しかし入学してまだ数か月なのだが秘かに在籍している魔法師を確認してみたが、それらしい人はいなかった。
赤い髪をした男の人。
瞳はサングラスを掛けていたので分からなかったけど、サングラス越しに見たその瞳からは圧倒的な何かを感じた。
自分より3年上くらいの年齢かなと思う。
だから学院にいれば4回生かとも思ったがそれらしい人はいなかった。
残念に思っていたが、いないのであれば仕方ない。
そう思ってた時だった。
噂になっていたアシュレイと言う名の魔法師が1年ぶりに帰ってくると聞いたのは。
その話を聞いた時にもしかしたらその人が?
と思った。
聞けばその男の人は圧倒的な魔法能力を持っており、最強と呼ぶ声が多かった。
競技祭に2度単騎優勝する実力。
今は4回生である事。
そして赤い髪の男の人。
もしかして?と思い期待感が出た。
しかも色々あって入学してから組んでいた小隊から抜け、小隊フリーの状態だったのだが、新たに新設される小隊に組み込まれることを知り、その小隊の教導官を噂のアシュレイ・バークレインが行うと知った時は期待した。
けどアシュレイ・バークレインが帰還した時の噂を聞いて懐疑的になった。
聞いていた容姿と異なる(髪の色が赤でなく白に近い朱色)。
何より嫌っている魔導器を身に着けていたと。
魔導師――。
何よりも嫌いな存在。
魔法師に劣等感を抱く存在。
そんな存在が嘗て救ってくれ、魔法の現実と空の恐怖、そして憧れを教えてくれたその人が魔導師であるはずがないと。
そして彼に会った。
教導官であるアシュレイ・バークレイン。
一目見てなんとなく似てる。
そう感じた。
けど何か違う様な気もした。
上手く説明できないが、以前にあった『ゼロ』と呼ばれたその人と違う魔力を秘めている。似ているけど違うと感じていた。
だからやはり人違い。他人の空似だったと思い残念に思った。
教官に印象は冷たいだった。
全身から他人を拒絶している感が放っている。しかも本人も隠していない。
本当にこの人に教わって魔法師として強くなれるのか?
そう思った。
過去魔法師であっても今は魔導師なのだ。
オレには目標がいくつかある。
その一つが誰もが認める魔法師になる事。
誰からも認められる魔法師と言えばやはり『最強』だと考えた。
だから自分なりに入学以前から――あの日の誓いを立てた時から特に訓練に励んだ。
だから入学当時から1回生の中で魔法師としての実力を秘めている事もあり、又、魔法科に高い評価で入学した。
ただ、当初は他の者とチームを組んでいたが、ある事件以降毛嫌いしている【魔技科】の者が一緒という理由でなかなかチーム内に馴染む事が出来なかった。
始めて組んだ小隊チームでは組んでいた魔技科の生徒と一悶着の末に小隊から脱退する事になった。その後もどうしても馴染めずに今日まで来た。
だから今回組む小隊でも【魔技科】の子がいると知り、(またか…)と落胆した。
教官との最初の模擬戦闘。
1対3。人数で言えば3人である此方に有利になる。しかもこれは教官が自分達の力量を知るためのもの。だから本気で来ることもないとは思っていた。
しかし、オレは一騎打ちに出た。
理由はやはり心の内からの魔導師、つまりはミツキに対して信頼することが出来なかった。
背を預ける事が出来ないと思ったからだ。
信頼関係のない連携に意味はない。そう思った。
それに面前の教官に自分の力を見せ付け認めさせたいと思った。
だから1対1を望んだ。
実力を示すには1対1が理想。
しかし結果これだ。
相手に武器を構えさせることすら出来ず、訓練を繰り返し身につけた技が通じない。
(なぜっ、このッ、掠りさえしないなんてっ…)
「アンタ!いい加減武器を構えたらどうなんだぁ!その両手にある物は飾りかっ!」
「……」
思わず叫んでいた。
自分を馬鹿にしているのかと。
しかし相手は何も言わず、その金の瞳をこちらに向けるのみ。
何を考えているのか読めない瞳。
いや、その瞳からは落胆が秘めているように感じる。
それが認められない。
「オレの魔法戦技で一番威力のあるこの技ならどうだぁ!!」
自分の習得している魔戦技の中で奥の手に当たる一撃を放つことにした。
現在習得している魔法戦技は近接技が殆ど。
そして今から繰り出す技もだ。
教官から少し距離を取る。
魔槍を構えると魔力を籠める。その瞬間魔槍が青白い光を放ち始める。
「いくぞぉ!!」
叫びと共に蒼白い光を纏った魔槍を、教官に向かって一気に加速すると教官の目前に迫ると必殺の一撃を突きを放つ。
最初の加速しての突きに似ているが威力が違う。
繰り出す速度も桁が違う。
狙うは相手の心臓部。
相手を殺すつもりで放つ。殺すつもりでも届くか分からない。だけど生半端な攻撃では決して届かない。
「…今の一撃は合格点だ」
そんな教官の声が聞こえた。
驚愕して硬直していた自分の耳に届く。
結果は届かなかった。
渾身奥の手の一撃。その一撃を教官は左手に握っていた短刀型の魔導器で受け止めた。
教官は必殺の一撃の威力を魔導器で殺し受けたのだ。
正直何が起きたか分からなかった。
どうやって受け止められたのか理解できなかった。
教官の動きが見切れなかった。
一撃を繰り出した瞬間に受け止められたとしか認識できなかった。
「……」
声が出せなかった。
全力の魔力を籠め必殺の一撃を放った。魔導器では受け止められないはずの威力だった。
なのに破壊すら出来ず受け殺された。
呆然としつつ認めたくないがこの人はふと初音が言っていた通り『最強』が相応しいと思わされた。
そして呆然と戦意喪失してしまった此方に教官は【魔槍】を左の剣で弾かれた。その瞬間右手に持っていた銃を向けられた。
その銃から無威力の魔弾が―の胸を撃ち抜かれた。
その一撃にただただ悔しさがその身を震えさせていた。




