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■第8話「男子トイレは地獄」

ミナ・クロフォードとして過ごすようになってから、俺はかなり慎重な人間になった。スカートの裾を確認する。髪の位置を確認する。声の高さを確認する。うっかり「うるさい」と言わないように、口を開く前に一秒だけ我慢する。

それだけではない。更衣室は避ける。保健室もできるだけ避ける。強風の日の渡り廊下には警戒する。知らないはずの名前を口にしない。朝比奈湊の話題が出ても、初耳の顔をする。


つまり、学校生活のほとんどが地雷原になった。復讐って、こんなに実務が大変なのか。

朝、ミナ計画ノートを開いた俺は、いつものように今日の目標を書き込んだ。


今日の目標。

平穏に過ごす。


余計な事故を起こさない。

できれば、三人に少し意識させる。


ただし、自分が先に照れない。


最後の一行を書いた瞬間、俺は少しだけ苦い顔になった。自分が先に照れない。

最近、この注意事項の重要度が上がっている。陽斗が近づく。朔がさりげなく助ける。凪が何も言わずに逃げ道を作る。


そのたびに、俺の胸がいちいち変な反応をする。違う。

これは復讐中の緊張だ。あいつらがミナを女子だと思って優しくしているから、その反応を観察しているだけだ。


俺はミナとして、あいつらを落とす。落とされる側ではない。

そこを間違えたら終わりだ。そう自分に言い聞かせて、俺は女子制服に着替えた。


鏡の中のミナは、初日よりだいぶ自然になっていた。それが嬉しいのか悔しいのか、もう自分でも分からない。


****


学校に着くと、教室はいつも通りだった。女子たちはミナに慣れてきたし、男子たちも「交換留学生がいる日常」を雑に受け入れている。

人間は思ったより適応力が高い。


「ミナちゃん、おはよ」

「おはようございます」


挨拶を返して席に座ると、隣の朔がこちらを見た。


「今日は顔色、戻ったな」

「昨日は少しだけ寝不足だったので」


「少しだけ?」

「少しだけです」


「微熱出してそうな顔してたけど」


なぜそこまで分かる。俺は昨日、家で測った体温計の数字を思い出して、目をそらした。


「大げさです」

「そういうことにしとく」


その言い方が、昨日の陽斗と少し似ていた。そういうことにしとく。

俺の嘘を暴かず、でも信じ切ったふりもしない距離感。最近、三人がそういう対応をするたびに、俺は少しだけ落ち着かなくなる。


「ミナちゃん、今日元気?」

「元気です」


陽斗が前の席に座って、俺の顔をのぞき込んだ。


「本当に?」

「昨日から皆さん、疑い深すぎませんか」


「だって、ミナちゃんも湊も、無理してる時ほど大丈夫って言うから」


心臓が跳ねた。ミナちゃんも湊も。

並べるな。その二人を並べるな。


「朝比奈くんのことは知りません」

「そっか。まだ会ってないもんね」


陽斗はそう言って笑った。その笑顔に、少しだけ困った影があった気がした。

気のせいだ。全部、気のせいにしておく。


後ろの席から、凪が静かに言った。


「今日は無理しない日」

「何ですか、その日」


「決めた」

「勝手に決めないでください」


「じゃあ、努力目標」


凪の声はいつも通り静かだった。けれど、昨日俺が本当に無理していたことを知っているような響きがあった。

俺は返事に困り、ノートを開くふりをした。今日は平穏に過ごす。


そう決めた。決めていた。

だが、平穏というものは、たいてい油断した時に死ぬ。


****


二時間目の終わり、俺は完全に油断していた。昨日より体調も良い。

授業も普通に受けられた。スカートにも、歩き方にも、口調にも、大きな問題はない。


だから、休み時間に廊下へ出た時、俺は少し気を抜いていた。次の授業は移動教室だった。

教室から少し離れた特別棟へ向かう途中、俺はふとトイレに行きたくなった。ここで問題がひとつある。


俺は朝比奈湊として、この学校の男子トイレの位置を体で覚えている。つまり、何も考えずに歩くと、自然に男子トイレへ向かってしまう。

ミナ・クロフォードとしては、女子トイレへ行かなければならない。


が、さすがにそれはまずいということで、澪に職員用の共用トイレを使えるよう取り計らってもらっていた。

ところが俺は、ぼんやり考え事をしていた。


陽斗の「ミナちゃんも湊も」という言い方。

朔の「そういうことにしとく」。凪の「今日は無理しない日」。


それらが頭の中でぐるぐるしていて、足が勝手に慣れた方向へ進んだ。

そして、ドアを開けた。中に入った瞬間、脳が状況を理解した。


男子トイレだった。

終わった。完全に終わった。


しかも、入った瞬間は誰もいなかったのに、廊下の方から男子たちの声が近づいてくる。出るなら今だ。

そう思ったのに、体が動かなかった。俺は女子制服を着ている。ミナとして男子トイレから出てくるところを見られたら、どう考えてもおかしい。


いや、おかしいどころではない。変な噂になる。

ミナ・クロフォード終了。朝比奈湊も終了。


俺の人生、ここで終了。とっさに、俺は個室へ飛び込んだ。

鍵を閉める。息を止める。


数秒後、男子たちが入ってきた。


「次、移動だるくね?」

「分かる。特別棟遠いんだよな」


声がする。足音もする。

俺は個室の中で、スカートを握りしめた。何をやっているんだ、俺は。


更衣室を避け、スカートを守り、名前事故を乗り切り、似すぎ疑惑を押し切り、体調不良まで隠し通したのに。よりによって、男子トイレ。

馬鹿なのか。いや、馬鹿だ。


絶対に、ミナ計画ノートに今日の被害として「自分の習性」と書く。外の男子たちはなかなか出ていかない。

それどころか、廊下からさらに別の足音が近づいてくる。人が増えたら終わる。


出るタイミングがない。個室に長くいればいるほど、不自然になる。

俺はスマホを取り出そうとして、手を止めた。誰に連絡する。


澪か。いや、澪が来るまでに終わる。

女子友達か。無理だ。説明ができない。


三人の誰か。その選択肢が浮かんだ瞬間、俺は自分で自分に腹が立った。

なんで、そこであいつらが出てくるんだ。俺は復讐対象に助けを求めようとしているのか。


違う。絶対に違う。

俺は自力で何とかする。そう決めた瞬間、外で大きな声がした。


「うわ、やば。水こぼした!」


陽斗の声だった。俺は個室の中で固まった。

なぜいる。


「え、瀬名、何してんの」

「いや、飲もうとしたら落とした。ごめん、こっち危ないから出て出て」


「マジかよ」

「床濡れてるって。滑るから、今使わない方がいい」


陽斗の声は、いつもより少し大げさだった。男子たちが「うわ、ほんとだ」と言いながら出ていく気配がする。

水をこぼした。たぶん嘘だ。


でも、男子たちが外へ出る。人の気配が減る。

次の瞬間、入口付近から朔の声が聞こえた。


「ここ、しばらく使うな。先生呼んでくる」

「え、そんなに?」


「濡れてる。移動教室遅れるぞ」


朔の声には圧があった。男子たちは文句を言いながらも、廊下の方へ流れていく。

入口が制御されている。誰も新しく入ってこない。


俺は個室の中で、ただ息を殺した。そして、すぐ近くの壁の向こうから、低い声がした。


「今」


凪だった。心臓が跳ねた。

声は小さい。他の誰にも聞こえないくらいの声。


でも、俺には聞こえた。俺は鍵を外し、個室のドアを少し開けた。

外には誰もいない。入口の方には、朔の背中が見えた。


廊下側では、陽斗が男子たちを大げさに引きつけている声がする。凪は、個室から出口までの死角に立っていた。

俺を見ると、何も言わずに少しだけ顎で示す。早く。


でも、焦らなくていい。そんな合図だった。

俺は足音を立てないように、男子トイレを出た。女子制服のスカートが、今までで一番重く感じた。


廊下へ出る直前、朔が少しだけ体をずらした。外から俺が見えない角度。

完璧な壁。俺はその影を通り抜け、廊下の端へ出た。


凪が後ろから静かについてくる。そして、何事もなかったように特別棟へ向かう廊下へ出た。

陽斗が少し離れた場所で、男子たちに向かって笑っている。


「だから、向こうのトイレ行こうって。こっちは今アウト」

「瀬名、ドジすぎ」


「いやー、ごめんごめん」


ドジなわけがない。たぶん、わざとだ。

俺は壁際に立ち、震えそうになる手を握った。助かった。


助かったけれど、全身の血が冷えたような気がした。やばかった。

今までの比ではなく、やばかった。凪が隣に立った。


「歩ける?」

「……歩けます」


「なら、行く」

「はい」


いつものように追及しない。どうして男子トイレに入ったのかも聞かない。

それが余計に、胸を締めつけた。少し遅れて、朔が戻ってきた。


その顔は、かなり険しかった。


「……何やってんだよ」


声は低い。怒っている。

ミナに向けるには、少し距離が近すぎる怒り方だった。俺は言い返せなかった。


「すみません」

「謝る前に、周り見ろ」


「はい」

「本当に危ないから」


その「危ない」は、噂のことなのか、正体バレのことなのか、俺には分からなかった。分からなかったけど、朔が本気で心配していることだけは分かった。

陽斗も戻ってきた。


「ミナちゃん、大丈夫?」

「大丈夫です」


「それ、本当に?」

「……本当に」


陽斗は笑わなかった。いつもの軽い顔ではなく、少しだけ困ったような、心配そうな顔をしていた。


「ならよかった」


それだけ言って、俺の逃げ道を塞がない位置に立つ。凪は相変わらず静かだった。

ただ、俺の手元を見ていた。


「指、白い」


俺は慌てて手を開いた。スカートを握りしめすぎて、指先が白くなっていた。


「何でもありません」

「うん」


凪は頷いた。それ以上、何も言わなかった。

特別教室へ向かう間、三人は俺の周りを歩いた。前に陽斗。


横に朔。少し後ろに凪。

まるで、さっきと同じ配置だった。更衣室の時も、スカートの時も、体調不良の時も。


気づくと、いつも三人は俺の周りにいる。危ない場所で。

逃げたい時に。見られたくない時に。


なんでだよ。なんで、そんなに都合よくいるんだよ。

授業中、俺はほとんど集中できなかった。ノートを取るふりはした。


けれど、頭の中では男子トイレの個室と、外から聞こえた三人の声が何度も再生されていた。陽斗が人を散らした。

朔が入口を止めた。凪がタイミングを出した。


完璧すぎる。たまたまでは済まない。

でも、どういうことだ。三人はミナが困っていると気づいた。


それは分かる。女子が間違えて男子トイレに入ったと思ったのかもしれない。

でも、それなら普通は驚く。理由を聞く。焦る。


あの三人は、驚きより先に動いた。まるで、俺がそういうミスをする可能性まで分かっていたみたいに。

朝比奈湊の習性を知っていなければ、分からないはずなのに。俺は、そこまで考えてペンを止めた。


いや。考えるな。

考えたら、何かが見えてしまう。


****


昼休み、俺は一人で空き教室へ向かった。今日は誰とも話したくなかった。

というより、三人の顔を見ると、たぶん変なことを聞いてしまう。どうして助けたのか。


どうして分かったのか。もしかして、何か気づいているのか。

そんなことを聞いたら終わる。だから逃げた。


空き教室の窓際に座り、ミナ計画ノートを開く。


今日の成果。

なし。


今日の事故。

男子トイレに入った。

終わり。


俺はその二行を見て、深く息を吐いた。短すぎる文は避けたいが、今日の事故に関しては、これ以上説明すると精神が削れる。


気を取り直して書き足す。


詳細。

移動教室中、考え事をしていて、いつもの癖で男子トイレへ入った。

個室に避難。

外に男子が来て、脱出不能。

人生終了かと思った。


今日の救助。

瀬名陽斗が水をこぼしたふりをして人を散らした。

桐生朔が入口を制御した。

神崎凪が脱出タイミングを出した。


俺はペンを止めた。また救助。


もはや、このノートは復讐計画ではなく、三人に助けられた記録になりつつある。まずい。

非常にまずい。俺は復讐している。


あいつらを落とすためにミナになった。なのに、落とす前に助けられてばかりいる。

しかも、その助け方が嫌じゃない。それが一番まずい。


俺はノートに続きを書いた。


今日の疑問。

なんでこのタイミングで?

なんで分かった?


男子トイレに入るとか、普通は予測できない。

でも助かったから、まあいいか。


……本当に、まあいいか?


そこまで書いて、ペン先が止まった。まあいいか。

最近、俺はこの言葉で三人のことを流しすぎている。助かったからまあいいか。


優しかったからまあいいか。嫌じゃなかったからまあいいか。

そうやって流しているうちに、何か大事なことを見落としている気がする。更衣室。


スカート。名前事故。似すぎ疑惑。体調不良。

そして、男子トイレ。思い返すと、全部おかしい。


タイミングがよすぎる。優しすぎる。

俺が一番嫌な形にならないように、三人が動いている。ミナを守っている。


でも、本当にそれだけか。俺はノートの余白に、思わず書いた。

もしかして、あいつら、そんな悪い奴じゃない?


書いた瞬間、全身がむずがゆくなった。何を書いているんだ、俺は。

復讐対象だぞ。俺を傷つけたやつらだぞ。


可愛いとか、女みたいとか、女だったらとか言って、俺の胸にずっと残る言葉を置いていったやつらだ。それは本当だ。

だから、復讐をやめる理由にはならない。でも。


助けられたのも本当だった。俺はノートに強く書いた。


いやいや、ミナだと思ってるからだ。

ミナが女子だから優しいだけ。


朝比奈湊に戻ったら、きっとまた笑う。

だから、勘違いするな。


俺はペンを置き、しばらく窓の外を見た。中庭では、陽斗が男子たちと笑っている。

朔は廊下の向こうで教師に何か頼まれていた。凪は木陰に立って、誰かと話しているようで、ほとんど話していなかった。


三人とも、いつも通りだ。俺だけが、変に揺れている。


放課後、俺は空き教室から出る前に、もう一度ノートを開いた。


今日の勝敗。

事故ったので負け。


でもバレなかったので勝ち。

つまり引き分け。


ただし、精神的には大敗。


最後に、少し迷ってから追記した。


三人が助けてくれた。

嫌じゃなかった。


むしろ、助かった。

でも、それはミナだから。


朝比奈湊じゃない。

ここを間違えない。


ノートを閉じると、廊下に出た。そこに、朔がいた。

腕を組んで壁にもたれている。待っていた、ように見えた。


いや、偶然だと思いたい。


「帰るのか」

「はい」


「今日は一人で帰れる?」


その言い方に、少しむっとした。


「子どもではありません」

「今日、男子トイレで詰んだやつが言う台詞か」


心臓が止まりかけた。朔は言ってから、少しだけ目を伏せた。


「悪い。言い方きつかった」

「……いえ」


謝られると、怒りどころがなくなる。ずるい。


「でも、本当に危ないから。考え事しながら歩くな」

「はい」


「返事だけよくても信用できない」

「桐生くんは、私の何を知っているんですか」


言った瞬間、空気が止まった。俺は自分の失言に気づいた。

これは、ミナとしての質問ではない。朝比奈湊としての本音だ。


朔は俺を見た。長い沈黙のあと、低く言う。


「知ってることだけ」

「……それは、何ですか」


「無理する。意地を張る。焦ると周りが見えなくなる」


胸が鳴った。それは、朝比奈湊のことだ。

ミナが転入してからの短い時間だけでも、そう見えるかもしれない。でも、朔の言い方はそれよりずっと前から知っているようだった。


「あと、助けられると怒る」


朔は少しだけ笑った。


「でも、本当はほっとしてる」


息が詰まった。言い返せなかった。

ミナとしても、湊としても。朔はそれ以上踏み込まなかった。


「じゃあ、また明日」

「……また明日」


朔が歩いていく。俺はその背中を見ながら、心臓の音をどうにか落ち着かせようとした。

昇降口には、陽斗と凪がいた。今日は、待っているのを隠す気もなさそうだった。


「ミナちゃん、帰り大丈夫?」

「大丈夫です」


「今日は信じていい?」

「信じてください」


「じゃあ、校門までだけ」

「結局来るんですね」


「心配だから」


陽斗はさらっと言った。言われた俺の方が、なぜか目をそらすことになった。

凪が静かに続けた。


「今日は、道を間違えないように」

「……神崎くん」


「うん」

「それ、地味に傷つきます」


「ごめん」


凪はすぐ謝った。でも、その目は少しだけやわらかかった。

からかっているのではなく、本気で心配しているのが分かるから、余計に困る。校門までの短い距離を、三人と歩いた。


もう偶然とは言いにくい。でも、俺はまだ気づかないふりをした。

気づいたら、きっと何かが壊れる。


****


家に帰り、ミナ計画ノートを開く。


今日の最後の追記。

更衣室、スカート、名前、似すぎ、体調、トイレ。


全部、助けられた。

もしかして、そんな悪い奴じゃない?


いやいや、ミナだから。

ミナだと思ってるから優しいだけ。


でも。


俺はペンを止めた。でも、の先が書けなかった。

書いたら、認めてしまいそうだった。だから、ページの端に小さく書いた。


でも……。


****


その頃、学校近くの帰り道では、三人が並んで歩いていた。陽斗が少し疲れたように笑う。


「今日、本当に焦った」


朔は不機嫌そうに言った。


「あいつ、何で男子トイレに入るんだよ」

「湊だからじゃない?」


「理由になってない」

「でも、理由になるよ」


陽斗がそう言うと、朔は言い返せなかった。凪が静かに言った。


「考え事してた。足が勝手に行ったんだと思う」

「そこまで分かるの、凪も大概だよね」


「見てたから」

「ずっと?」


「うん」


凪は否定しなかった。朔はため息をつく。


「そろそろ限界だろ。あいつ、自分でも変だと思い始めてる」

「でも、まだ言わないでしょ」


「言わない。意地っ張りだから」


凪が短く答えた。陽斗は空を見上げた。


「湊が、自分で言うまで待つって決めたしね」


朔は黙っていた。けれど、否定はしなかった。


凪が小さく言う。


「今日は、泣かなかった」

「泣きそうだった?」


陽斗が聞くと、凪は頷いた。


「少し」


朔は低く呟いた。


「……泣く前に助けるしかないだろ」


三人はそれ以上、何も言わなかった。もちろん俺は、そんな会話を知らない。


****


俺はただ、ノートに残った「でも……」の文字を見つめながら、胸の奥が少しずつ変な方向へ動いているのを、必死に気づかないふりをしていた。


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