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ワールドロード・sin again  作者: オメガ
序章・ Jacta alea est
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弊害と休息

 『前回のあらすじ』

 為すべき事をやり遂げ、力尽きて海の底目掛け沈むエックスは、意識が深層心理空間へ飛んでいた。

 残骸しか残っていない和風一軒家の縁側にて、何故か居るゼノ・クライムや如月の二人と話す。

 ユイ達三人娘を引き渡せば対価を渡すと言われるも拒否すると、二通の依頼書を渡され受け取る。

 人類が罪を繰り返すのは永遠の呪いと言い、恐怖の計画や天界がトップを失った等情報を吐くゼノ。



 水底へ沈む中。ゆっくりと薄目を開ける様に目蓋が開き、エックスのぼやけた視界が捉えるは。

 黒いドレスを着、長い黒髪をポニーテールにした女性が此方へと右手を伸ばし、潜る姿なのだが……

 疲労困憊のエックスは身動き一つ取れず、耐え難い眠気に負け、閉じて行く目蓋が深い眠りへと誘う。

 そんな事等知らずとも、親友の命を救うべく海へ飛び込もうとするベーゼレブルの探知網に反応が六つ。

 それぞれ陸海空に二つずつ引っ掛かる。高速で飛び去る者、屋根に足を着け此方を視る者が空に。

 陸では数回フラッシュを焚き現場から去る者や、一部始終を見届けようと物影から眺める者が居り。

 海からは水底より急上昇する反応が二つ。此方は知る相手だが……警戒心を解かず自身も海へ飛び込む。


(先に飛び込んだのは如月?だがこの反応は魔力や霊力ではない……)


 先行する如月や沈むエックスに追い付くべく、負けじと手足を動かし速く、深く潜るベーゼレブル。

 如月が先にエックスを抱き抱える形で沈むのを阻止し、水底・海底より上昇する金髪人魚二人の助力で。

 肉食の鮫等に襲われると言ったハプニングも無く、無事海面へ浮上。心配する桔梗やパイモンも。

 救出され、昏睡状態のまま陸地に上げられた彼を見て少しだけ緊張が緩んだ後、仮拠点へ急いで運ぶ。

 彼が次に目を覚ましたのは仮拠点として利用中の、宿屋兼酒場・二階個室ベッドの上。

 時刻は昼過ぎ。カーテンと窓は全開の為、陽射しが室内へと入り、吹き付ける風がカーテンを揺らす。

 水中の次は室内と言う突然の場面変更に驚き、思わず勢い良く身体を起こすも……全身に走る電流と痛覚。


「っ──!!」


 先の戦いでの無理が祟り、首から下が筋肉痛。誰が脱がせたのか上半身裸、下半身は履いて来たズボン。

 耐え難い痛みから来る『痛い』の一言さえ出ない。継続的に襲う痛覚に苦しめられながら。

 ゆっくりと起こした上半身をベッドへ寝かせ、意識を失う前までの経緯を少しずつ思い出す。

 イェソドを倒し、共に海へ落ちた三人娘を陸へ上げ、自身は力尽きて水底へ沈む最中に意識が途絶え。

 深層心理空間でゼノ・クライム、そして如月に化けた彼女と会話した旨を。だが故に……疑問に思う。

 アレは単に夢だったのだろうか?それとも現実だったのか。そう考える中、部屋の扉が開く。


「漸く起きたか。どうだ?身体の調子は」


「……?」


 其処には神父服姿のベーゼレブルの姿が。右手にはお盆があり、汗や身体を拭う為の白いタオルの他。

 透き通る程に綺麗な白湯を注いだ透明な硝子コップをお盆に乗せ、室内へと入りつつ容態を尋ねるも。

 聞かれた当の本人は返事を返そうにも全く声が出ず、右手で自身の喉に触れ、首を傾げ不思議がると。

 ベーゼレブルは「やはりな」と何かを知っている様子で呟くとベッド横の長方形テーブルに置いてある。

 タブレット端末を落とさない様、左隣にお盆を置けばエックスに向き直り、左手で顔を掴み。

 天井を向かせて三口程白湯を飲ませ、水分補給と腸温度を適度に温まったと感知すればお盆に戻す。


「声が出ないのだろう?それもそうだ。あんな戦い方を続けている弊害と知れ」


(融合して知られたのはソコだけ……か?少し様子を見つつ、鎌を掛けるか)


「しかし納得がいった。戦後の倦怠感もあの戦い方が理由だ」


 声が出ないのを言い当て、それが戦闘中の戦い方が生む問題であり弊害だと、説教混じりに心配する。

 のだが……心配されている本人は顔でこそ苦笑いを作るも。内心、ワールドダブルロードへと為った結果。

 何処まで隠し事がバレたのか?共有していた痛覚や感覚だけか?と疑問を解く為、相手の様子を見て。

 鎌を掛け、情報を引き出そうとしていた。対するベーゼレブルは先の戦闘でエックスの抱える問題。

 強敵との戦闘後に動けなくなったり、酷い倦怠感に襲われ眠ってしまう原因を突き止めていた。


「何はともあれ。眠っていた一週間の間に、色々と面倒臭い展開へ移りつつあるぞ?」


 机の隣に有る木製の椅子に座り、懐から手帳を取り出すと開き、昏睡状態の間に起きた出来事を話す。

 1、南区・港町トワイライト半壊による四大魔王定例会議の緊急開催と魔王パイモン・ラース強制召集。

 2、ワールドダブルロードの姿が新聞記事に載り、東西両大陸へばら蒔かれ破壊者伝説・神話が再燃。

 3、黒竜娘・ユウキの消息不明。仮に敵側であれば、此方側の戦力や弱点が露呈し、攻められ易い。

 4、港町トワイライトは深海王国・アトランティス、北区自然都市の協力下で現在復興中。

 5、世間一般に姿がバレて伝説や神話が再燃した為、賞金首となり魔女狩りの対象になった……と話す。


「前大戦でもそうだったが──記者やマスゴミ達の情報に苦戦させられていたな」


(アレも貪欲(グリード)だねぇ。お陰様で人類に撃たれて死に掛けたけど……)


「兎に角、今はゆっくりと休め。その間に色々と装備を新調してやる」


 思い出すのも嫌だ。と言わんばかりに眉をひそめ、苦虫を噛み潰した様な表情で人類の記者やマスゴミ。

 情報発信者を毛嫌いする二人。そう、エックスは新聞記者に正体をバラされた。ただそれだけで……

 拠点の国で悪口を書かれ、何も知らない国民から支持を失い、魔神王軍が持ち掛けた取り引き。

 融合四天王の国王とエックスの身柄交換。その取り引き材料にされると確定後、離れる破目となった上。

 国お抱えの専属少数精鋭メイド部隊オラシオン。彼女達六人も離れ、国は衰退と襲撃を受け壊滅。

 新聞記者兄弟の正義感一つで国が滅び、数百万の命が散った。思い出す行為すらも嫌になってか。

 ベーゼレブルはエックスに休む様促し、自身はその間に装備の新調をしてやると述べ、部屋を出て行く。


(……罪をもう一度──か)


 内心ポツリと呟く。sin again……それはエックスらが抱える罪か。それとも人類が罪をもう一度──否。

 人類の歴史が証明する様に『罪をもう一度』、と何度も繰り返す意味なのか……天井を眺めそう考える。

 衣食住の問題から国民を救う、又は自身の欲望を叶える為の戦争。人類が口にする善悪等は所詮。

 人類が勝手に決めた都合の良い基準でしかない。話し合いで解決出来ないからこそ、力尽くで解決する。

 それが知性ある者の行う行為だろうか?結局は野生動物と変わらぬ弱肉強食でしかない。その癖──

 共通の敵や利益の前には一致団結し対応。人類に何度も殺された者として、人類は救わないと再び誓う。

 突然タブレット端末に電源が入り「恐怖に挑め。汝が人間を愛するなれば」の文字が画面に浮かび……


「起動完了問題無し。受け取って早速起動するかと思えば、放置するとはね」


「仕方ないわよ。記録では恐獣三体やラルヴァ・リンクスと戦ったみたいだし」


「──!?」


 長く真っ直ぐ伸びた白髪と黒髪、女性二人の立体的なホログラムが画面上に現れ、突如喋り出す。

 突然の出来事に思わず体を起こすが……当然筋肉痛は治っておらず、全身に走る激痛が動きを止める。

 痛みに堪え顔をタブレット端末へ向ける。其処には黒を基調とした学生服(ブレザー)にロングコートを着。

 頭のカチューシャに小さい桃色の蓮の花を付けた、何度も対面して見慣れた白髪少女ヨグ=ソトース。

 隣には体に密着する白いシースドレスを着て、右耳にアメジストの粒を付けたイヤリングを付け。

 副王との髪型に差別化をする為、その場で括る位置を低めにしたポニーテールへと変える新月サクヤ。


「取り敢えず、イェソド撃破おめでとう。やはり貴方でなきゃ駄目だったわね」


(副王にサクヤ?どうしてタブレット端末のホログラムに?)


「ヨグ、先ずは説明からよ。アトアから話は聞いてると思うけど……」


 唐突にイェソド撃破を祝われ、やはりと言う辺り過去に採用した犠牲者で試した結果なのだろう。

 エックスでなければ駄目だったと続け、再びゆっくり体を寝かせながら目の前の疑問に思考を回す。

 状況を察したサクヤにより説明を受ける。曰くディクテクターとインベーダー、双方に自身らの情報を。

 可能な限り与えない為。特にインベーダーは女性を狙い易く、更に同胞同類よりも強大な力を持ち。

 倒す・拘束出来ない状態の相手の前には自ら出ず、襲い掛からない。弱肉強食のピラミッドを。

 遺伝子に刻まれた略奪と侵略を繰り返し、他を犯し孕ませ、魔神王の世界統一計画とは違った意味で。

 他種族全滅、自己種族限定による繁栄・平和を成し遂げんとする宇宙の癌細胞たる奴らを倒す策と言う。


「改めて訊くわ。オメガゼロ・エックス。いいえ、貴紀。再び貴方の力──勇気を私達に見せて欲しいの」


(人類が滅亡しようが興味無い。けど……大切な家族と仲間、大好きな宇宙を救う為だ。仕方ない)


 宇宙を蝕み繁殖する敵の脅威を改めて伝えた上で、魔神王を倒し救った勇気をもう一度見せて欲しい。

 副王に訊かれ、考える。元々魔神王云々に巻き込まれる前の純粋な人の頃ですら、人類には興味無く。

 平々凡々な独身人生を過ごして死ぬ予定だった。が……今や両手に抱え切れぬ程の宝物を得た上。

 大好きな宇宙や星々の美しい景色を救う大義名分もある。仕方ないと言いつつ短く頷き、受け入れる。

 二人はホッと胸を撫で下ろし、A5サイズ用紙のホログラムと写真を数枚展開、見せてくれた内容は──


「一通目はどうやら人類は、生存率を上げる為に(禁忌)をもう一度繰り返すみたい」


「もう片方は貴方を援助・迎え入れたいと言う、国王老夫妻からの申し出」


 深層心理空間でゼノ・クライムから手渡された内容と全く同じ物で、此方は正確な地図と座標付き。

 特に一通目は旧人類が禁忌の実験を行っている為、計画の阻止と破壊を依頼したいと言うモノ。

 詳細は依頼を受けてくれたなら、指定する場所で直接逢って話すと書いてあり、緊急性が極めて高い。

 二通目は世間一般に姿がバレた事で、破壊者伝説や神話を知る者から援助をしたいと言う申し出。

 但しこれが罠の可能性も大いに高く、下手をすれば国の中心に囲い込まれて袋叩きの恐れもある。

 最悪、両方共罠かも知れない為、準備や対策もせずおいそれと受ければ、全滅するやも知れない。

 故に最悪の展開を幾つも考える。依頼が罠として、自分ならどう仕掛け、逃げ道を塞ぎ叩くかを。


(ユイ達をドゥームに預けて、一通目の依頼を受けてみるか)


「一通目の依頼を受けるのね。なら此方から返信を送っとくから」


(……さも当然に此方の思考を読みやがる。まあいっか、今は声が出せないし)


 ある程度考えを纏め、被害を最小限にする為単独で受けると内心思えば、副王はエックスの思考を読み。

 確認の言葉も無く勝手に返信の電子メールを相手側へ送る。その対応に言いたい事はあれど。

 現在声が出せないし、依頼を受けると決めたので敢えて追及はせず、目を閉じて眠ろうとする。

 が……一週間も眠っていたからか。眠気は無く逆に目が冴え、ただ天井を眺めながら今回のイェソド戦。

 及びラルヴァ・リンクス戦の一人反省会と可能性対策を、脳内シュミレーションして時間を潰す。



 『unbelievab(アンビリーバ)le(ブル)


「貴紀。ディクテクターのゼノ・クライムからメールが届いたみたい。内容は読書感想文と反省文」


「本当に読書感想文と反省文を送って来るのかよ」


 唐突に届いたディクテクターの総帥ゼノ・クライムからのメール。内容は深層心理空間で言った。

 読書感想文と反省文の提出。どうやって送ったのかは向こうで依頼書を渡された事を思い出せば。

 何でもありな気がしていた為、敢えてツッコミを入れるのは止めたエックス。サクヤと副王へ頼み。

 どんな本を読んだ?感想文の内容はどんなものか?ただ単に好奇心が勝ち、読み上げて貰うと……


「真夏の海にデリ──」


「エロ本じゃねぇか!!確かに一冊自体が薄くて時間制限を考えればそうだけど!」


 ヨグ=ソトースが何の羞恥心もなく、淡々とエロ本のタイトルを読み上げ切ろうとした為。

 敢えて止めていたツッコミを自然な流れで行い、自身が時間制限を短くしたが為の原因だと。

 自らの間違いを納得した為、ゼノの行動を強く非難も出来ず、慣れで行ったツッコミにより。

 全身筋肉痛に襲われる中、面白がって読書感想文を朗読する副王と目を両手で覆うサクヤ。

 結局エロ本の読書感想文と的外れな反省文へツッコミを入れ、痛む体に苦しみつつ。

 約四十分。冒頭から読み終わりまで、エックスの二十回を優に越える具体的なツッコミと。

 行う度に伴う筋肉痛は続き、終わった頃には痛みと疲れで深い眠りに落ちたのであった。


「色んな意味でunbelievab(アンビリーバブ)le()な読書感想文ね。……ちょっと検索しようかしら?」


「止めてくれない?此方にまで情報が回ってくるんだから」


「マンネリ防止」


「先ずはジャンル分けから始めましょう。中身を確認するのはそれからよ!」



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