una maledizione eterna
『前回のあらすじ』
ワールドロードの名を持つエックスとベーゼレブルが状況を打破すべく、融合。
ワールドダブルロードとなり、名に恥じぬ能力を使いリンクスを撃破。だが制限時間は極めて短く。
弾かれる形で分離。残ったイェソドに少ないエネルギーで挑むエックスに迫る二重毒。
機転を利かせて危機を乗り越えイェソドを浄化。海に落ちたユイ達を陸へ上げるも、自身は水底へ。
暗い暗い海の中。三人娘を救出するも力尽き、肉体は物理的に深い水底を目指して沈み。
心は深層心理世界で目を覚まし、綺麗な茜空を半壊したボロい屋敷の縁側で一人、見上げるエックス。
天井は壊れて物理的に無い。屋敷と言ったが、今彼が座る縁側と玄関入口以外は崩壊し、存在しない。
視線を下げれば黒煙を上げ、敗戦直後の国とも思える程に全壊し、瓦礫に埋もれ焦土と化した街がある。
彼の眼は後悔と罪を宿し、瞼を閉じれば項垂れる様に頭を垂れ、諦めと自責の念を込めた溜め息を吐く。
「おやおや。『 』に辿り着き、契約を交わした者が溜め息とは……珍しい事もある」
「…………」
突然現れては隣に近付き、挑発目的の煽り文句を吐くも……言われている当人は無視を貫き。
やれやれ、仕方ない。とばかりの表情にジェスチャーを加え、隣に腰を下ろし座るゼノ・クライム。
会話無く、風も余り吹かず柱の残骸に括り付けられた、ピンク色のカンパニュラを描いた風鈴だけが。
時折吹く風に揺られ、物寂しげに魔除けの音色を奏でるその時。背後から縁側へと置かれるお盆が一つ。
上には素朴な土肌の陶器湯飲み、小判型で艶のある茶色い栗饅頭の乗った小皿が、それぞれ二つある。
二人が上半身を捻り、視線を後ろへ向けた先にはメイド姿の如月が何も言わず、ただ立っているだけ。
それは主人と来客にお茶と茶菓子を提供しに現れた従者──と言われれば納得しかない光景。
「……君と自分は主従関係じゃないだろ?」
「確かに、私は貴方の従者じゃないわ。けど……私と貴方は恋愛関係よ?」
「ッ──副王に嵌められた、望まぬ一夫多妻の関係だけどな」
敢えて如月の顔を見ない様に焦土の街へ視線を戻し、少しの沈黙後に口を開き主従関係ではないと確認。
その言葉に肯定するも、主従ではなく恋人だと言い返せば──エックス頬を赤く染め。
照れ隠しも含めて右人差し指で頬を軽く掻き、副王ヨグ=ソトースの罠・策略に嵌められた結果。
枝分かれした可能性を駆け抜けては巻き戻され、一つの束にされた一夫多妻だと自虐的な意味で言う。
「それでも私は──貴方に感謝してるのよ?みんなと一緒に愛してくれて」
「…………破壊者の愛なんて。ただ、相手を壊してしまうだけなのに?」
自虐的発言に対し、それでもと続けて感謝の言葉を返す如月の表情はとても柔らかく、涼しげ。
感謝を伝えられ、暫く言葉に悩み漸く吐き出せた言葉も自虐的だが、街を視る眼は何処か寂しげで。
哀愁を漂わせる顔をしていた。人類種でも同じ経験は当然ある。愛しても当人の中では全く足りず。
愛する者を壊す程愛したいと言う欲求は、エックスの場合それが顕著に現れ易く、また──
絆を紡ぐ際の切っ掛けを作り易いメリットもあれど、当然仲間を狙われ易くなるデメリットもある。
「だからこその一夫多妻でしょ?一人じゃ貴方を二重の意味で満足させてあげられないし」
「まあ、そうだな」
(う~ん……このまま惚気話を聞き続けるハメになるのかな?)
「で……君が此処に居る理由は分かるんだが、アンタは何故居る?」
愛を確め合う度に壊し、壊されない為の選択だと如月は嬉しそうに言い、理解してくれる存在に微笑み。
照れた顔を見せない為、そっぽを向くエックス。二人の惚気に当てられ、この話は続くのかな?
差し出された栗饅頭を口に含み、素朴な甘味に満足すると温かい緑茶を一口飲む、微笑ましい疑問は。
何故此処に居る?と聞かれ、自身に話題を振ってくれたと内心感謝するゼノはエックスの方を向き──
「貴方が保護したナズナ・イクス・ユイを含む三名を、我々ディクテイターへ引き渡して下さい」
ユイ達三人娘を引き渡せ、と言った直後。振り向いた如月の眼が青から赤に変わったのを。
ゼノは眼で追う。避けるなり阻止しなければ、如月が右手に持つ黒いナイフに喉を刺され。
前のめりに倒れ込むと一目で分かる程。だが左首へギリギリ当たらない所で止まり、眼を細め鋭く睨む。
先程の振り払いには首を切断する速度と殺意があったにも関わらず、寸前で止まったのには理由がある。
彼女の右腕をエックスが右手で掴み、殺害を阻止。ゼノを睨むのも、今直ぐお前を殺すと言う意思表示。
「駄目。……一応、理由と対価があるなら訊くが?」
「これはこれは、どうもご丁寧に。理由は研究材料、対価は一人当たり五十万ゼニーでどうでしょう?」
「ゼニー?ゲームでしか聞かん通貨名だな」
「此方では円や国外の通貨が潰え、ゼニーが主流。円換算すると五百万円位だね」
変に長々と語らず冷静に静止を呼び掛け、ゼノに引き渡しを求める理由と対価を一応訊ねれば。
殺害を阻止してくれた事へ感謝を述べ、理由と対価を話すのだが……ゲームでしか聞かない金銭名に対し。
違和感を覚え、眉をひそめ返答を返すとゼノが答えてくれたのだが、言葉足らずがあったのか。
如月が「人類と幻想種の戦争で通貨が潰えた為、双方で話し合い出来た通貨ですわ」──と。
話を聞き眼を細め、ゼノを睨む。眼を背けたり表情を崩すならクロ、無いなら……そんな思考を読んでか。
はたまた偶然か。右手を小さく振り、微笑み返す姿を見て苛立つ如月と苦笑いを作るエックス。
「返答はNoだ。対価に渡そうとした金で、世界再生をやれ」
「成る程。ディクテクターが誇る貪欲、四つの欲望を振り撒く死徒が君の仲間達を……!?」
例え幾ら大金を積まれてもユイ達を手離さない。その金を世界再生に使えと興味無さげに言い返す。
ゼノはその返答と態度を、ディクテクターに対する宣戦布告と受け止め、自らの欲望を世界中に広め。
死を撒き散らす仲間──略して死徒が、エックスの仲間達を弄んで殺すだろう。言い切る直前……
ゼノは自身が粉微塵に弾け飛ぶイメージを見て、続く言葉を胸の内に飲み込んで口を閉じる。
しかし、彼の顔に恐怖は無い。寧ろ引き入れたなら、これ以上ない程の心強い仲間だと言う確信が。
笑みとして少し表情に出た時、エックスから手渡される白紙の紙束。理解が及ばず相手を見れば……
「取り敢えず二時間後までに読書感想文と反省文を書いて、提出しろ」
「反省文は兎も角……えっ?読書感想文?二時間後までに提出?!」
返答を宣戦布告と受け取ったら、何故か反省文の序でに、読書感想文の提出まで押し付けられ。
突然の行為に困惑し、思わず紙束とエックスを二度見するゼノ。相手は真顔でボケてる様子もない。
どう返したら良いのか分からず、取り敢えず右腰のウエストポーチに収納後、二枚の茶封筒を出し。
エックス宛てと言わんばかりに差し出す。何かしらの罠か?と疑うも受け取って破り、中身を取り出す。
中に入っていたのは、二通とも手紙が二枚と見知らぬ人と人外達。片や二十代前半、片や八十代の老人。
共通点は双方共に男女一組の大人かつ、六歳位の女の子が一緒に写っている。何かと思いゼノを見れば。
「君宛ての依頼書さ。もし次の行き先が決まってないのなら、目安すると良い」
エックス宛ての依頼書だと言うのだが、誰が・どうやって受け付けたのかすら分からない。
次の目安にと言われた後──「これはゲームのクエストじゃない。禁忌は日々犯される」と言葉を続け。
席を立ち、焦土の街を眺めるその顔には、懐かしさや罪悪感を孕んだ後悔、そう言った何かを感じれる。
取り敢えず自身も立ち上がり、横へ立ち並ぶと同じ様に焦土の街を眺め、申し訳なさそうな表情に。
「una maledizione eterna……人類は罪を繰り返す」
「確かにその通りね。人類は罪を、永遠の呪いの様に繰り返す」
「本来終焉の闇とは人体で言う白血球。なのに貪欲が取り憑き癌細胞と化すとは──旧人類恐るべし」
「…………」
罪を繰り返す愚行は、人類に与えられた永遠の呪いだとゼノが語り、如月もその発言を認める。
エックスが倒した魔神王たる部分も、結局は未来の並行世界に住む人類が魔皇アザトースへ続く。
窮境の門だとはつゆ知らず開け、終焉の闇を解き放ったのが根本的な原因。更に言えば──
その時終焉の闇が喰らった旧人類の貪欲さが、魔神王へと変貌させたばかりか。
数多の並行世界やエックスの居た地球さえも巻き込む、光闇大戦を引き起こす原因になった大戦犯。
その黒幕を倒し切れぬまま、ドゥームを救ったが為、罪をもう一度引き起こされたと理解する。
「恐怖の計画はもう、動き出している。君達に阻める──」
「阻む云々じゃねぇ。家族や仲間を襲い、脅かす脅威は──俺が破壊する」
「Good!!やはり信仰と姿形を失い、宿らなければ生存出来ない神々とは違うね。君は」
だからこそ──ゼノが言う『恐怖の計画』発言へ静かに反応し、阻めるかな?と言い切る前に。
発言を遮る形で口を挟み、己の意思と決意を言葉、身体から滲み出す緋色のマナ、鋭い眼光で示す。
絶対に計画を破壊する。そんな決意と凄味に満足してか微笑み、右手のグッドサインと共に称賛。
続けて人類を守るべき神々が信仰を失い、姿形が維持出来ず、モノに宿り力を蓄えるしか出来ない。
侮辱的な発言を吐き、エックスの左手首に付いた腕輪と左腰から鎖で繋がれし、懐中時計を見て言う。
「トップを失った天界はどうなる事やら。さて、そろそろお目覚めの時間だよ?」
「……ゼノ・クライム。アンタの狙いは何だ?何が目的だ」
「フフッ、相変わらず勘が良い。では、こう言いわせて貰いましょう」
次に空を見上げ、神々を失った天界がどうなるか?想像するに容易く煽りにすら聞こえる言葉を吐き。
そろそろ目を覚ます頃合いだ、と続く。エックスには疑問があった。何故この深層心理世界に居るのか?
己が立ち上げた組織の情報を、敵である此方側に伝える意味は何か。何を、何処まで知っているのかと。
故に直接問い掛ける。何が目的なのかと。するとゼノは勘の良さを褒め、自己流に吐いた目的は──
「愛です。愛ですよエックス」
「奈落の六層に強制移動させてやろうか」
なんと『愛』──なのだが如何せん、本気かギャグか。言い方がとある作品で仮面を被り。
深淵の全てを解き明かさんとする人物を連想させてしまった為、エックスから真顔でツッコミを受け。
知ってるのか!と言った驚きの表情を見せたゼノは、満足そうに口角を吊り上げ、腹を抱えて笑い出す。
右隣に居る如月と顔を見合わせ、何が面白いんだろう?とお互い不思議に思い、首を傾げる。
落ち着いたのか姿勢を戻せば、背筋を伸ばしてエックスと向き合い、視線は彼の左手首に向く。
「立ち去る前に君へ贈る言葉を一つ、良いかな?」
「……何だよ」
「ゲレゲレが溶ける程恋ハートは突然に、覚えていますか?」
「キャラ名と曲名のごった煮は止めろ」
再び視線を上げ、立ち去る前に言葉を一つ良いかな?と言われ、その時点で何かを察したエックスは。
少し間を空け、心構えをしてから何を言いたいのか聞き返せば……ボケのごった煮はツッコミが面倒な為。
そう言うボケは止めろと返すと、ゼノは物足りない表情をしており。
面倒臭いと右手で頭を乱暴に擦り「ゲレゲレは獣で溶けるのはゲレンデ、恋と書いてラブとは読まず」
「突撃するラブ心は突然起こるかも知れないし、愛は自覚しないと覚えている方が珍しいだろうな!」
と──ボケの内容を全部返せば、全部拾ってくれたと満足げに消えたのを見届け、もしかしたら幽霊?
そんな疑問をエックスと如月は互いの顔を見合わせ思う中……深層心理空間が真っ白に染まって行く。




