ダブルロード
『前回のあらすじ』
破壊者とその仲間に絶望と恐怖を与えようとするリンクスに、抵抗せんと挑む負傷したパイモン。
時間を稼いでくれたお陰もあり、エックスが帰還するとバックルが赤い靴システムが起動。
溢れる程の殺意と積み上げた経験値は的確に弱点を突き続けるのだが……心身を蝕む両刃の剣。
彼を正気に戻し、ベーゼレブルは宇宙に君臨するロードとなる為、エックスに変身を促す。
『00!double Road!!00!double Lord!!』
「「変身!!」」
『Wake up!未知なる遍くキセキを超越し、全てを統べる皇!ワールドダブルロード!!』
バックルから流れる力強い声の電子音。発音的にはダブルオー!が伸ばし、ダブルロード!!は声高に叫ぶ。
意味的に考えれば二人のワールドロード。前者が王で後者が道、二つ合わせてワールドダブルロード。
二人揃って変身と叫べば、神父姿だったベーゼレブルの体が黒い闇と成り、エックスを包み込む。
鼓動の様に揺れる終焉の闇の中、バックルが目覚めろ!と吼えた途端白い鎖が闇を締め上げて圧縮。
続けて誕生する存在を手短に説明した後、闇の中から現れるは──白い長髪、裸の上半身に黒いズボン。
一歩ずつ闇から退出するのに合わせ、闇は自らを一本の帯と化し両腕に巻き付き頭上へ虹の輪が浮かぶ。
顔にテラーの仮面を被り、通常の変身と比べパワードスーツは無く、外見的に防御力は心許ない。
「奇跡を超越し、全てを統べる王だぁ?」
「…………」
顕現したワールドダブルロードに向け、腹の口を大きく開けながらにじり寄り、挑発的な言動で煽る。
のだが──彼は眼中に無いのか、全く微動だにしない。優しく吹き抜ける風が白い長髪を靡かせると。
風の行き先たる海へと顔を向け、ずっと眺めているだけ。バックルの中央ランプが赤く明滅すれど。
等の本人はどこ吹く風。苛立ちの余り痺れを切らしたリンクスが全力で殴り掛かるも、彼は海へ降り。
海面に波紋を幾つも広げ──爪先でクルリと半回転後、両手を広げて背中から水面へと倒れ込む。
『アクセス。Beyond The Time!!』
バックルがそう発言すると水面の『向こう側』へと水飛沫を散らしながら落ちて行く。
暗い暗い闇の中。光の道は真っ直ぐ伸びたり、蛇行しているが……共通点が一つだけある。
それは紅い扉と黒い扉が無数にあり、彼が選んだ道の看板や他のにも数字や文字が刻まれてあって。
選んだ扉に刻まれた文字と数字ならsin歴161年。しかし月日と時間が『──』としか書かれていない。
自ら開いた扉の先では、イェソドの正面にある空間が突然歪み、薄暗い紫が渦巻く中から現れた存在。
ラルヴァ・リンクスが現れ、淡々とエックスの幽閉、破壊者の居ぬ間に支配を~と言い放つ辺り。
『deadlyFinish!!!』
「そうそう。あぁ~んな落ちこぼれの人間なんかにさ。このぼく達が二度も倒されて──?!?!」
バックルの上部にあるボタンを左親指で押し続ける間、鼓動が脈打つ生々しい音が鳴り続き。
開いた扉の先へ駆け出せばリンクスの真正面へ飛び出し──漸く親指を離した直後、致命的な最後。
そんな物騒極まりない音声がバックルから流れ、認識するよりも速く眼前の空で時空が捻れて渦巻き。
目の前で穴が開いたと認識した瞬間。『エックス』の右飛び蹴りが相手の胸部へと繰り出される。
この時のリンクスは煽りが目的であり、突如目の前に現れた幽閉した筈の相手が突如現れた為。
現状を理解しようと意識が集中。疑問と困惑が思考・判断力を削いだが故……背後の存在に遅れて気付く。
『Paradise Lost』
(コイツら……いつの間に?!)
前方から聞こえる電子音が背後では失楽園と聞こえ、魔力探知で探れば……エックスと同じ。
バックルを腰に装備したベーゼレブルが、自身の背後で後ろ回し蹴りを繰り出す為に身を捻る真っ最中。
気付いた時にはもう既に遅く、挟み撃ちかつ同時攻撃。胸に緋色の稲妻を纏うエックスの飛び蹴り。
背中に黒紫色のマナを纏ったベーゼレブルの後ろ回し蹴りを受け、夢幻の如く揺れて消える二人。
体がステンドグラスさながら結晶化するリンクス。バイク特有のエンジン音を耳にし、視界に入るは──
ワールドダブルロードがバイク形態のアイエフに乗り、自身の体を粉砕して通り過ぎる刹那の光景。
(加速に加速を加えて……減速する気が一切ないッ!!)
「leave all behind。全てを──振り切る!!」
バイク形態のアイエフが全てを置き去りにしてやる。そう言うと更に加速を加え……前輪を浮かせ。
後輪だけでバランスを取りながら走行し、リンクスを前方へ倒した前輪で踏み潰し進んで急停止。
すると周囲の景色が歪み、先程まではイェソドだったが、景色の歪みが自動修復された後には。
反転後のアィーアツブスに。アイエフの背中から降りるや否や、バックル・ランプの速い点滅が消え。
『Time out』の言葉を残し、変身は強制解除。勢い余って左右へ弾かれるエックスとベーゼレブル。
エックスに至ってはテラーの仮面も砕け、四重の意味で能力ダウン。それでも……と急いで起き上がる。
(体が異様に重い……これがっ、我が友が戦闘後に襲われる倦怠感ッ…)
(関係……無いッ!!最後の一滴。明日明後日の分まで、絞り出せ!)
「アアァァ……アァァァアアァッ!!」
同じく立ち上がろうとするも。踏ん張る脚から力が抜け、倒れぬ様地に両手を着け支えるが腕も同様。
もう限界、これ以上は無理。と力が抜け、地に伏して見上げる事しか出来ないベーゼレブル。
対してエックスは震える膝を両手で抑え、何度も体験する倦怠感に抗い、アィーアツブスへと走り出す。
しかし……その姿は英雄の様な堂々とした力強い走り方ではなく。痛みや親に棄てられた大切なモノを。
探し求めて泣きながら、時に蹴躓き、前のめりに倒れそうになりながらも走る子供そのもの。
(──ッ!!まだ……まだだ!)
そんな彼に迫るアィーアツブスの猛攻。頭狙いで放たれた矢は何故か軌跡が逸れ、左眉の上を掠り。
痛覚を付与した魔法の矢を降らせ、全身に激痛を与えても速度が落ちるだけで歩みを止めない。
杖で魔法の青い炎を浴びせた後。槌で上から殴り付け、拳を腹に命中させ殴り飛ばせど彼は──
もう限界だと震え警告する手で、足で立ち上がり、覚悟に満ちた鋭い眼を相手に向けて再び走り出す。
まだ倒れてはいけない。まだ鼓動は止まってない。まだ見聞きが出来て、体も動く……ならば止まるな!
痛みに耐えながらも心の中で呟く『まだ』と言う言葉には、沢山の意味と願いが込められている。
「あっ……アァァ!イヤ……貴方様ッ、貴方様ァァ!!我が神ヨ、我ガ主様ァ!」
「マタ、私は取り返シノ付かナイ罪を!!」
「ゴメンナサイ……ゴメンナサイ。モウ、無知と意地デご飯を残しタリしないカラ……泣かナイで」
猫娘の悲痛な叫び、藍色髪の娘は自責の罪を嘆き、ユイが謝罪する三人娘の抱く三者三様の恐怖が。
恐獣・アィーアツブスに更なる力を与え、攻撃速度も増し一撃ごとにクレーターが出来、土煙が舞う。
魔力や霊力で障壁や結界を作っても、不安定の権能により水飴煎餅同然に割られ、意味を成さぬ中。
瞬間的に強い風が吹き、土煙が払われた先には──誰もいない。ミンチや肉片一つすら見当たらない。
刹那。暗雲の空からアィーアツブスの背後目掛け、急速降下しては背中へと飛び付くエックス。
「バカッ!!ソイツは……」
「イヤァァァッ!」
「──!?」
首に腕を巻き付け、振り払われない様にしたまでは良いが……彼は知らない。その判断と行動が悪手とは。
注意を促そうとするパイモンだったが、時既に遅し。ウィンプルが逆立つ様に捲れ、現れる般若顔。
悲鳴にも似た叫びに驚く中、間近で吐き出された紫と黄色い煙を浴びてしまい、腕から力が抜け。
勢い良く横回転したアィーアツブスに振り払われ、陸地へ背中から滑り落ちては立ち上がろうとするも。
身体に力が入らず、咳き込めば吐血。意識が朦朧とし、鼓動すら弱々しくなり右手で左胸を鷲掴む。
(恐らく猛毒と麻痺毒による呼吸筋麻痺!!外が無理なら内ってか!?)
(マズい!我が友の魂が……消える)
異なる二重毒で体内を攻撃し顔色は青く、助けを求め天に伸ばした左手は震えていたが……
糸が切れた人形同様仰向けに倒れ伏し、白目を向きピクリとも動かない。ベーゼレブルとパイモンは。
エックスの魂が蝋燭で揺れる風前の灯火だと理解した直後──命の灯火が消えたのを目の当たりにし。
未来は詰んだ。そう確信する時……ソレは静かに与えられた役割を果たし、『消えた選択肢』を再び動かす。
「残念だったな。ソレは体験済みだ」
何処からか先程亡くなった者の声がし、エックスの遺体へ視線を移せど、何処にも姿形すら無い。
またアィーアツブスの背中へ組み付いている?否、正面や背後にも彼の姿は見えず敵味方が周囲を探る。
此処は堤防寄りで隠れる物影は無く、見晴らしも良く隠れられない。その時……不思議な事が起こった。
錆び付いた歯車がぎこちなく、ゆっくりと回る様にアィーアツブスが反転して行くのだが……
当の本人も困惑しており、自身の意思ではない様子。しかし反転し切った時、一同は理由に気付く。
エックスはイェソド側──即ち、スカートの内側で逆さまにしがみ付き、無理矢理反転させたのだ。
「良く……言えたな。己の罪を認め、謝るってのは大人でも難しいのに」
「アッ……アァァアァッ!!」
「だから──赦してあげな?何処の誰からでもない。自分で、自分自身の事を」
相手の首に脚を絡ませた強制肩車状態で、頭を優しく撫でながら罪を認め謝れた行為を素直に褒める。
恐怖心からエックスを殺してしまったと、罪悪感が残っていた為か。声と感触に思わず歓喜の声が漏れ。
続く言葉に祈りながら涙を流し、分かりましたとばかりに何度も頷くイェソドは白い光に包まれた後。
素体の三人娘へ戻り、エックス諸共海面へと投げ出され着水。パイモンの協力もあり海側から陸地へと。
三人娘は救出されるも、エックスは無理をし過ぎたのもあり力尽きて海の底へと沈んで行く。
『え、今からでも入れる保険があるんですか!?』
(恐らく猛毒と麻痺毒による呼吸筋麻痺!!外が無理なら内ってか!?)
(マズい!我が友の魂が……消える)
異なる二重毒で体内を攻撃し顔色は青く、助けを求め天に伸ばした左手は震えていたが……
糸が切れた人形同様仰向けに倒れ伏し、白目を向きピクリとも動かない。のだが、実はこの時──
左胸を右手で鷲掴みしている中、エックスはとある仕掛けを自身に組み込んでいたのである。
(時限式セルフ電気ショック。威力調整ミスったら心臓の丸焼きかぁ。毒の方は頼むぜ……X抗体!)
鼓動の再始動に自身が扱う雷を利用し、毒は己の体内に仕込まれた自爆装置兼救済処置を意味し。
白血球の役割を持つ未知なる抗体──略してX抗体が毒を喰らい、無効化すると信じて自ら仮死状態へ。
場に居る者達の選択肢から自身を外し、時限式セルフ電気ショックで自身を時間差で蘇生。
アィーアツブスの下半身側。イェソドにしがみ付き、反転させ、元に戻せるチャンスをただ待っていた。




