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ワールドロード・sin again  作者: オメガ
序章・ Jacta alea est
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ゼノ・クライム

 『前回のあらすじ』

 sin歴161年の教会でユイとタカト、如月と桔梗が会合を行うも、タカトは部屋の隅で怯えるばかり。

 ベーゼレブルが連れ出しに現れ、話は進むもユイの他二名は突発的な高熱に倒れ、不参加。

 本当はユイ自身も高熱で苦しむも、他に話せる者が居ない為、無理をしていたが如月に寝かされる。

 ベーゼレブルに誘われ、三人はテラー粒子を最悪な触れ方をした為、イェソドが誕生すると言う。



 sin歴171年。並行世界の未来に取り残されたエックス達は元の次元・時間軸へ帰還すべく。

 倉庫内や周辺を探索するのだが……見付かるのは何かの研究資料や、誰かの日記と思われる手帳のみ。

 ただ、倉庫内で情報を探るエックスが手に取った紙束は『テラー化とクリフォトの樹の関係性』。

 長々と書き記された文字に眼を通し、内容を考える中──背後から迫る謎の左手が彼へ向く刹那。

 エックスは素早く振り向くと同時に、ズボンの右ポケットからレ・マット・リボルバーを抜き、構える。


「流石は歴戦の勇士。反応・感知速度が貪欲(グリード)の誰よりも段違いだ」


「……大陸を見下ろした時に視て感じた、赤い茨の冠か」


 振れようとしていた手も含め、両手を頭上に上げ降参の意図を示し、危機感知能力を褒めるのは……

 茶色い革の長靴、黒いローブを纏う者。相手の発言や顔を隠す風貌にエックスの黒い瞳孔が。

 円を描く様に広がり、虹の輪を作るとsin歴161年へ跳ばされて視た、左右の大陸に纏わり付く色と形。

 それらを思い出させ、口にする。すると相手の口角が微笑む様に、満足げな風に少しだけつり上がり。

 ローブに付属されたフードを自ら両手で捲り見せるは──首に届く白髪のポニテ、中性的で幼い顔。

 深緑の眼に紅い瞳を宿すつり目。日本人を思わせる顔立ちに、エックスはより強い警戒心を見せる。


「自己紹介を。余はディクテクター及びディクテイターの総帥。うむ?此方では『元』……か」


「そのお偉いさんが何の用だ」


「単刀直入に言おう。反逆の王冠を被りし罪人よ──汝に問おう」


 しかし向けられた銃口も全く意に留めず、紳士同然の振る舞いで礼儀正しく頭を垂れ、自己紹介。

 一人称を余、更にはディクテクター及びディクテイターの総帥と言い放つも、この世界軸では。

 壊滅済みの為、元であると認識。エックスが何の用件かと訊ねれば、彼をまた新しい異名で呼び。

 単刀直入に「『我々』ディクテイターと共に世界を──人類の未来を破壊する気はないか?」と問う。

 それは過去、オラシオンの琴音にも吐いた勧誘の言葉。その後に訪れる、体感的には長い暫しの沈黙。


「…………アンタ、名前は?」


「ゼノ。ゼノ・クライム」


 相手の背後や周囲を眼で見渡し、再度相手を見詰め──銃口を下げ、面と向かい名前を問う。

 漸く対話の席に着いたと認知し答えるは、組織・ディクテイターの総帥、ゼノ・クライム。

 彼は今のやり取りの後。右手を口に付け、クスッと笑う。その姿を視たエックスは距離を算出。

 互いの距離は二メートル、腕を伸ばせば更に距離は縮まる。直ぐ様再び銃口を向け、引き金を引く。

 刹那……申し訳無いと右手を出し、静止を促すゼノは深い溜め息を吐き、表情を戻し向き直る。


「失礼。オラシオンの琴音嬢と全く同じ反応をされたのでな」


()の事を馬鹿にするのは構わん。だが次──(家族)を貶す言動をしたら問答無用で破壊する」


 謝罪し理由を話すも、思い出し笑いをしてしまった為、その言動が逆鱗に近い部分を撫でてしまい。

 感情が抑え切れず激昂し、一人称が俺へと変化。自分の悪口陰口は兎も角、大切な存在への侮辱。

 又は類似した言動を次行えば、如何なる事情があろうとも破壊する。破壊者としての最終通告を言う。

 その意味を理解し、深く頷けば再度額に向けられた銃口は下がるも、睨み付ける瞳だけは下がらない。

 決意と覚悟に満ちた眼で見詰められた時。ゼノは目を見開き、求める何かに出逢えた高揚感に包まれる。


「手足の筋一本足りも動かすな。動けばその素っ首、捩切れると知れ」


「おやおや、これはこれは。ワールドロードの分け身が二人も」


「用件だけ伝えよ。後の判断は我らが最愛の友が下す」


 と──ゼノの右側でトリックが左手で右腕を固定して頭を狙い、左側のジャッジが首に鎌を掛け。

 動きを封じ、行動の自由を奪い発言に気を付けて用件だけ話せ、判断と判決はエックスが決めると。

 ゼノは二人がベーゼレブルの分け身と知っており、危機的状況にも関わらず余裕を崩さず喋る程。

 故に、二人は内心焦る。その余裕は何処から来るのか?もしや、自身が殺されないと思い込んでいる?

 数的には優勢の筈が精神的には劣勢。だからか……脅しの筈が実行に移して首を捻り、鎌で刈り取った。


「通常の融合獣ならばこの程度で倒せる。が──sin世界の敵は違う」


「「!?!?」」


「特にテラーの名を冠する存在は特定の弱点を突く必要があるが……何事にも例外は存在する」


 にも関わらず、頭を失くし硬直していた胴体は突然歩き出すと屈み、落ちた頭を拾い上げ頭部に戻す。

 元融合四天王が驚いたのは、頭部と胴体が元々別々のデュラハンとは違い、首から大量出血している上。

 更に言えば痛がる素振りも無く、首だけで会話を行う点。まるで自身を見本に、sin世界に現れし。

 テラーの名を冠する敵の性能・能力、完全に倒す為には弱点を突く必要性を話すも……例外があると語り。

 エックスに向けて右手を伸ばした事で、元四天王も何かを察し納得したかの様に何度も頷く。


「破壊の力だけが……『テラー』を問答無用で打ち破る」


「そんな都合の良い話があるか。恐怖に対抗するんなら勇気や科学的根拠、光属性とかあるだろ?」


「君も知っている筈だ。根源的な感情には抗えず、根本的な解決法の無さを」


 破壊の力だけが恐怖を打ち破ると力説し、向けた右手で力強く握り拳を作り満足げなゼノ。

 しかし、それは余りにもご都合展開過ぎると思い、恐怖に対抗出来そうな他の例を口にして反論するも。

 ゼノは残念そうに首を横に振り、口を開き──「恐怖は根源たる闇より産まれし絶対捕食者」と語る。

 確かに闇は恐怖心や不安を与える反面、安堵や睡眠に関する良い面も多数持ち合わせる一長一短。

 では恐怖は?生命の危機や集中力に関する良い面も存在すれど、主に心を食い物にする内なる捕食者。

 そんな概念に太刀打ちし、根拠を突き付け光に照らそうが──心は根源的感情に勝てないとゼノは反論。


「恐怖心が強い程、テラーの名を冠した存在は力を増す。それは君も、心当たりがあるのではないか?」


「…………」


 恐怖心の向上は、その名を冠する存在の能力を底上げし、上限すら青天井に伸ばしてしまう。

 そんな体験、心当りに該当する件が幾つかあった。黄泉の国で偶然発現した時、港町へ来て使用した際。

 此方の並行世界でテラー化と遭遇等々、大体は自他の恐怖心が力の増加に関与しているのは事実。

 沈黙の中、巡る思考がふとある疑問に当たる。もし仮に『この星の生命体が一斉に恐怖』したら?

 惑星一つを覆う恐怖心。程度にも寄るが、もし死や積み上げたモノが台無しになる程の恐怖だとすれば。

 それは……終焉を招き、宇宙中。下手をすれば並行世界や異世界にも伝染する可能性だって否定出来ない。


「恐怖を無くしてはならない。然れど、野放しにすれば此処と同じ終焉を迎える」


「貴様は我らが敵なのだろう?何故情報を、選択肢を与える?!」


「──敵?では君達の言う敵とは何だね。余の組織か?それとも、君達に歯向かう者達かい?」


「それ……は……!」


 恐怖を完全に消して駄目だと言うも、不必要に放置すれば世界は終焉を迎えると付け加え教える。

 その行動は敵が塩を送り、対策と言う名の選択肢を与えるも同然。序でに言えば不信感をも与える為。

 疑心暗鬼に陥り、また、疑心暗鬼を払う為ゼノを自身らの敵と決め付け、情報提供をするのかと問う。

 その感情任せな問い掛けに敵とは何か?ゼノが率いる組織か、己らに歯向かう者達か?と問い返す。

 質問に質問で返す行為。なれど冷静さを欠くトリックは言い返せず狼狽える。その時──


「俺達の敵とは、世界を終焉に誘い導く行き過ぎた存在や概念。ただそれだけだ」


 エックスがトリックの前に出て、自身らが戦うべき敵。それが如何なる者か、ゼノを前に堂々と宣言。

 自身の眼を、瞳を終始真っ直ぐに見詰めて言う姿にゼノは微笑み、その場で手を叩き称賛する。

 敵とは何ぞや?そう問われれば、大抵は自身の脅威や不利益を指す。勿論、それも間違いではない。

 然れど真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方。又は自他の弱さを受け入れられぬ己自身。

 だからこそ称賛する。数多の多種多様な戦を乗り越え、泥に塗れて尚立ち上がる……エックスを。


Bravissimo(ブラビッシモ)!!その強き心さえあれば、例の樹も伐採出来よう」


「例の樹?待て!貴様は何を、何処まで知っている?!」


「此方の余は恐怖の制御を見逃し、此方の破壊者に全てを任せ組織を壊滅させた。誠、真に強き者よ」


 イタリア語でとても素晴らしい!!と拍手だけに終わらず、言葉でも称賛し、七転八倒の心有れば。

 例の樹も伐採出来ると、曖昧な表現を口にする。故にジャッジは例の樹が何であるのか?

 ゼノは何を何処まで知るのか。説明を求めれば、此方の世界で組織・ディクテイターを纏める総帥は。

 些細な見逃しから恐怖の制御に失敗。後に伝説として語られる組織の原因諸々、並行世界の破壊者。

 彼に全てをお任せ、壊滅させる手伝いをした。西洋風に礼儀正しく頭を下げ、彼を強き者と呼ぶ。


「本当に強いのは仲間達で……自分は一人じゃ何も出来ない、ただの落ちこぼれだ」


「ほう。そう言う割りには、幾度も世界を救った様だが?」


 が……言われたエックスは仲間達こそ真に強いと反論し、自身は恩恵が無いと何も出来ぬ落ちこぼれ。

 成績が悪い者だと卑下する。されど成し遂げた功績を言えば、彼は申し訳無さそうに俯き。

 「みんなが、力を貸してくれたから」と弱々しく呟き、勇気を振り絞る様に握り拳を作ると顔を上げ。

 「それを自分の手柄とは思わないし、言う気もない」──そう断言し、虹の輪を描く瞳の色彩が鮮やかに。

 己の弱さと向き合い、恐怖を乗り越え告白するその顔、目からは頬を伝う一筋の涙が溢れ出す。


amazing(アメイジング)……あぁ、申し訳ない。彼女は貴方に献上しよう」


「献上品扱いだと?!貴様、最愛の友がそう言う言い方を嫌うと知って──」


「繁殖・出産も可能。勿論、相棒(バディ)としても。さあ、元の時間軸へ戻りたまえ」


 唖然とし硬直するゼノ。自然と口が動き、驚く程の・凄い・素晴らしい。三つの意味を持つ言葉を呟き。

 我に返った直後。相手が発言の意味を理解出来ていないと察してか、紳士的な謝罪行動と共に彼女──

 未だ目覚めぬ少女へ左手を向け、貴方(エックス)にと献上発言。当然物扱いを嫌うと知るジャッジは食い付くも。

 言われている彼本人が首を横に振り、反論を止める。子作りや戦力としても使えるから、元の時間軸。

 十年前へ戻る事を促した直後──「不安定な基礎・基盤の三姉妹が顕現する前に」等と述べて消える。


「再起動完了。sin歴161年への帰還を開始。マスター、どうぞアイエフの背に乗ってください」


「え……二人とも?」


 治療台で寝ていた少女が突然機械的な発言を始め、上半身を起こすと地面に足を着けて立ち上がるが。

 体こそ救出前と変わらないが、黒髪ポニテは白髪ストレートに。服装もレオタードスーツから変更。

 黒と赤を基準にした制服の上に、焦げ茶色で丈が足首に届くロングコートを着た姿へ。

 今より十年前のsin歴161年へ戻るから、自身より身長が十五センチ高いエックスへ背に乗る様促す。

 言われた当人はトリックやジャッジに助けを求め、視線を向けるも……少女改めアイエフは真剣な顔。

 助けを求められた二人も、どう言って良いか迷う。正直に言えば絵面は最悪だし、乗れば潰れそう。

 彼女の腕は細く、お世辞にも筋骨隆々には程遠く体重五十八キロのエックスを背負って走るのは無理。


Start your(スタートユア) engines(エンジン)!!Are you(アーユー) ready(レディ)?』


「「「専用ベルト!?」」」


 両手でロングコートの左右両方の丈を後ろへと払えば、隠れていた衣服や腰に装備したベルトが見える。

 左右両腰に備える、手で掴めるサイズに小型化したエンジン、中央にはバイクのメーター付きハンドル。

 アイエフがハンドルを自ら両手で取り外せば、起動音と思わしき渋い男性ボイスが鳴り響く。

 これまで専用ベルトを持つのはエックスや心情ゆかり、又はライブ機能を備えたアイアンメイデン位。

 故に、四人目の登場に驚く三人。しかも、これまでとは全く形状も違い変身出来る様には見えない。


「──擬装!」



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