sin歴161年
『前回のあらすじ』
真珠貝のX物を容易く倒したエックス。途中、謎の現象が起き阻止すると腕輪と懐中時計を入手。
鏡を通り彼の前に元融合四天王・トリック、ジャッジが現れ、再び力になってくれる模様。
次にやって来たナイアは元融合四天王の二人に成長を促すも聞かず、エックスに今は手伝えないと謝罪。
脱出の手掛かりを求め、倉庫内探索と外の警戒・探索の二手に分かれ、エックスは手帳と資料を発見。
並行世界のsin歴171年から、ベーゼレブル達が居るsin歴161年の港町トワイライトへ視点は戻る。
本日はエックスが到着後より三日目、四月二十一日の午前九時五分。酒場兼宿屋の出入り口前。
青空を見上げていたベーゼレブルは無言のまま、目を閉じながら垂直壁型の防波堤へ歩み寄ると。
背中から凭れ掛かり、現在は自身も仮拠点として使っている酒場兼宿屋を視界一杯に捉え、眺め。
「どうする、我が友よ。終わらない人類の罪と脅威に──どう立ち向かう気だ?」
この場・時代・世界に居ない唯一無二の友へ向け、呟く。歴史が繰り返される様に、脅威もまた同じく。
姿形を変え、手を変え品を変えて人類を苦しめる。終わり等無い。もし仮にあるとすれば、それは……
人類が霊長類と言う知識の冠を自らが放棄し、野生動物か原始時代の生活へと戻る他無い。
否。人類は感情で生きる生物故、一時的な感情から戦争へ繋がる可能性を考慮すれば、人類抹消が妥当。
だからこそ──彼は此処には居ない友へ、人類の終わり無き三拍子をどうするのか?そう問い呟くは。
「罪なるかな、咎なるかな、悪なるかな」と続け、西エリア港へ停泊する海賊船へ歩く。
「船長!此方に迫る存在、一名!!」
「神父ぅ?くはっ……くはははは!!俺達は偉大なる御方に融合獣として改造──」
無論、停泊港故に隠れられる箇所等限られる上、索敵は帆より上の位置から行われている為無意味。
監視員から大声で接近を船長や船員達伝えると、一度眉をしかめて聞き返した後、船員達と大笑いし。
自身らは御方からの改造により常識を逸脱し、食物連鎖の上位に立つ存在へ至ったのだと話す途中。
ベーゼレブルは気付かぬ間に高く跳躍し、海賊船へ乗り込み。髑髏マークの三角帽子を被る船長に対し。
開いた右手を伸ばし素早く握り拳を作れば──船長とその後方百八十度に居た船員達の大半が消滅。
残ったのは膝から下と噴き出す青い血液だけ。船長を殺られ、連鎖的に焦り逃げ惑う海賊船の船員達。
「夢よ。我々は──汝が目覚める事を永久に拒む。例え、それが時の運命だとしても」
炎上する中、許しを乞う者や一矢報い様と襲い掛かる者等々、各々行動を行えど一切の慈悲も無く捕食。
sin化前の融合獣や変身前なら十分倒せる。改めてこの結果を噛み締めつつ、夢の目覚めを永遠に拒む。
何故ならエックスは魔皇アザトースと契約した夢の護り手。夢が覚めれば、彼は泡となり消えてしまう。
その事実を思い出す度、無力感が沸き上がり強く握り拳を作ると青空を睨み、何処に居るかも不明な。
黒幕に対し、復讐心を燃やす。一方、孤児達は……何故か中央エリアの第六倉庫内へと集まっていた。
「……vanitas_vanitatum_et_omnia_vanitas」
「例え全てが虚しくとも、それが努力をしない理由にはならない」
孤児の彼女達以外、誰も居ない倉庫内を照らす太陽の下。藍色髪の少女は突然流暢な言葉を口にし。
追い付いた姫こと、ナズナ・イクス・ユイが何の繋がりがあるのかも分からぬ言葉を少女の背中へ返す。
それを聞き、振り向く藍色髪の少女はユイの方へと歩み寄るや否や、突然深々と頭を下げる。
謝罪と言うには言葉が無いが、年頃の子供なら怒られる事を恐れ、言葉に出来ないのもよくある事。
「すまない……私が遅れたばかりに、最悪の結末が早まってしまった」
「仕方ないよ。ルーちゃんだって、それは承知の上だったでしょ?」
「それはそうだが……まさか、此処まで誤差が酷いのは想定外だ。何か条件が?」
と思いきや、謝罪の言葉を口にした。までは普通、もしくはよく言えましたと褒める部分だが──
続く言葉が繋がらない。遅れた、最悪の結末が早まったと、頭を下げて言う姿にユイは首を横に振り。
仕方ないと許し、藍色髪の少女をルーちゃん呼びにし、双方承知の上で致し方ない結果だと言う。
ルーちゃんは下げていた頭を上げ、握った右手を口に当て、想定外の誤差に何か条件があったのでは?
そう考えると時間差やら品質、使用した物の違い等々ブツブツ独り言を呟き、答えを出そうと勤しむ。
「ルーちゃん、覚えてる?変な人の事」
「あぁ。私達を影で支え、見捨てなかった恩師を忘れる等、あってはならない」
話し掛けながら移動し、前夜の爆風を受け床に倒れた木箱へ腰を下ろして、覚えているかを訊ねれば。
恩師にして貰った内容を口にし、右手で握り拳を作ると左胸に押し当て、忘れてはならないと話す。
そう話している内に、全壊済みの窓を身軽に飛び越え、倉庫内へと侵入し着地するは──
薄墨色の短髪に正面を向いた猫耳、自然と垂れ下がる二股尻尾を持つ、同じ孤児の猫娘。
彼女は二人の間に立つと、何かを確かめる様に双方の顔や間合い、指と足の動きを注視した後……
「vantas_vanitatum_et_omnia_vanitas」
「「──!!……例え全てが虚しくとも、それが努力をしない理由にはならない」」
るーちゃんと同じく流暢な言葉遣いで、全く同じ言葉を吐けば、二人は一瞬驚き、続く言葉を言う。
恐らく、仲間内で使う合言葉なのだろう。お互いに確認が取れたと理解した三人は頷くと一点に集い。
人数的に少ないながらも円陣を組み、結束力を確認する様に手を重ね──無言で皆思う道は違えど。
共通点と最終的に行き着く終着点は、最悪な結末の回避ただ一つ。確認を終えた三人は各々手を離す。
「にしても、予定よりズレが大きくない?」
「確かに。姫が一番乗りだったな、改めて現状を説明してくれるか?」
「うん。私達の未来では既に壊滅してた伝説の犯罪組織・ディクテイターがこの時代では健在」
「ちょっと待って!!私がシスターになった後にはもう……壊滅してた組織じゃん!」
想定した予定よりも、大きくズレた現状を確認すべく、一番乗りのユイに説明を求めるルーちゃん。
求める声に短く頷き、未来では伝説になる程悪名高き組織・ディクテイターは既に壊滅しているらしく。
猫娘が成長し、修道女の道へ進んだ後。即ちsin歴162年から165年の間と言う事実に驚く猫娘。
少女達は再び頷き、各々が知る情報と現在との相違点がどれ程あるかを話し合い始める。
人身売買の日は同じ、だが助けに来たのは神父。あの人と出逢った場所、会話内容。一番の不明点は……
ディクテイターの戦力。彼女達が居た世界では知らぬ者は居らず、挑み生還した者は誰一人と居ない程。
「先生は、単独でディクテイターと戦っていたのか?」
「協力者は居たけど……旅先で命を落としたんだと思う」
「お姫様……うん、私も同意見。だとしても、壊滅したって言うのが信じられない」
しかし彼女達の言う人物がディクテイターと戦っていたとしても、ボロボロになりながら帰還し続けた。
単独で戦ったのか?と言うルーの疑問に、ユイは旅先で出逢い散った協力者が居たと予想。
猫娘もその意見に同意すれど、世界中に名を轟かせ、恐怖を振り撒いた組織の壊滅が信じられない。
その考えも当然と言えばそう。だからこそ三人は、理解に苦しむ。何故勝てた?どう壊滅させたのか?
悩む三人に混ざり、膝を曲げて微笑む灰色スーツを着る人物が一人。
「確かに。個人的にも、とても気になる話題ね」
「「「──!?」」」
突然発せられる女性の声、現れた姿に三人は思わず距離を取り、第六倉庫の割れた窓から逃げ出す。
東エリアの住宅街へ紛れ込めど、倉庫内に居た筈の女性がどう先回りしたのか、目の前で立って居る。
停泊港、酒場。何処へ行っても行く先々に先回りされる為、神父や魔王に助けを求めて西エリアへ戻る。
されど懸命に走る道中、所々で例の女性がお茶をしていたり、買い物をしていて気が休まらない。
そうして漸く西エリアの停泊港へ辿り着いた三人は、燃え盛り海へ沈む海賊船を眺める神父を見付ける。
「ほう。これはこれは──今は如月と呼べば良いのかな?」
「あら。誰かと思えば、厄介事を毎度持ち込む依頼人じゃない」
「最近は自発的に厄介事を解決しているのだがね。面倒事が多くて対処し切れないのだよ」
助かった。そう思う三人とは違い神父は懐かしい顔を見た反応をし、現在の呼び名を正しく言い当て。
いつの間にかミニスカメイド服へ着替えた女性──如月は神父を厄介な依頼を持ち込む人物と言えば。
反論する形で自身でも解決しているが、自身では対処出来ない厄介事が多くて困っていると言い返す。
双方顔は笑顔なのだが……仲は良くないと、三人は直感的に理解する。敢えて言うのであれば。
被害者と加害者的な関係。それもその筈。如月はベーゼレブルに過去改竄未遂を受けた経験がある為。
苦手意識から関わりたくない相手と認識しており、今も右手にナイフを持ち、斬り掛かれる状態で睨む。
「……はぁ。それで?貴方は何の用事で此処に居るのかしら?」
「我が友の頼みで、此処の留守を護っているだけだが?」
「成る程。それじゃあ、私達もそちら側の拠点で帰りを待たせて貰うわね」
「構わん。……あぁ、彼女は我が友の心強い仲間だ。心配は要らん」
暫し睨んでいたが……全く身構えない相手に溜め息を吐き、ナイフを右太股のホルダーへと直し。
元々敵対関係だったのもあり、此処に居る理由を訊ねれば、留守を任されたので護っていると返す。
その言葉を信じてか信じていないのか?拠点でエックスの帰還を待つと言い、許可を貰えば。
姿を消す如月。突然現れ、消える彼女に人差し指や腕、両手で目を擦り今のは現実なのかと疑う三人。
夢か幻でも見た様な三人に、エックスの仲間だから無用な心配は要らないと言い、一緒に拠点へ戻る。
『謎の設計図』
・小型エンジンとバイクの設計図が描かれている。が……バイクと言うには些か部品が少ない上。
人間改め──人型が装備するパワードスーツにも思える。これは誰が、何の為に作ったのだろうか?
想定済みのスペックとしては、適合者以外に装備させると人体への許容限界加重を余裕で上回る他。
真価を発揮する際には装備・装着者はGによって押し潰され致命傷を負い、制御を失って確実に死ぬ。
これを装着・装備出来る人類は居るのだろうか?そして、コレに乗る存在は加速で潰れないか心配だ。




