表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドロード・sin again  作者: オメガ
序章・ Jacta alea est
23/28

Clothes・Terror

 『前回のあらすじ』

 エックスの意図を理解し、託されたベーゼレブル。翌朝、夜の間に戻って来た海賊と話した後。

 ユイの部屋へ来訪する同じ孤児の二人。されど姫の対応と言葉は冷たく、藍色の娘を突き放す。

 朝食を持って来たベーゼレブルの言葉に思う事があったのか。宿屋を飛び出した孤児二人を追う姫。

 人類が無意識に受け継ぎ、次世代や同世代へ行う洗脳を嫌い、神父として最低最悪の言葉を吐く。



 ディクテイター専用の、何処にあるかも不明な真っ白い部屋に、大きな円卓を囲む銀のモノリスが五つ。

 赤い茨の冠、重なる♂♀と黒い髑髏、桃色の雫と浴槽、別方向を向く複数の紫眼球、青い達磨達の内。

 赤い茨の冠と黒い髑髏、桃色の雫と浴槽に天井から照明が、モノリスの前に座る三名を照らす。

 赤いライト側には、白いスーツを身に纏うゼノ・クライム。黒いライトに照されるは──

 フード付き灰色長袖、濃い黒色のズボンを着用し目の下に隈がある緑の短髪、長身で細身のテラー。

 桃色ライトは赤い短髪、美形の顔には紅い瞳。白ジャケットの内側に藍色シャツ、白長ズボンの謙信。


「テラー!!貴様、俺まで消し飛ばそうとしやがったな!?」


「えぇ~?下手な言い掛りは止めてくださいッスよぉ~」


 円卓に両手を叩き付け、テラーへと怒鳴る謙信の声が部屋中に響く。対する相手もすっとぼける対応。

 ゼノは沈黙を続け、双方の言い分を聴いている様子。とは言え、謙信側の言い分やテラーの行動も。

 トップとしては見逃せない問題。恐弾の件や違法裏取り引きの件等、追及しなくてはならない。

 のだが……以前として二人は静まる事を知らず、責めても有耶無耶にしようとのらりくらりを繰り返す。


「双方の言い分は分かった。故に、私からも二人へ聞かせて貰おう。先ず、用心棒の水無月謙信から」


「了解した。何から話せば良い?」


「裏取り引きの件だね」


「……」


 無駄な時間の浪費を避けるべく。二人の会話へ割り込み、遠回しながら双方を順番に尋問すると言い。

 爆発の被害に巻き込まれる所だった。と言う水無月謙信に問うは、秘密裏の情報たる裏取り引きの件。

 アレは本来、幹部クラスから担当商人へのみ伝えられ、重要度こそ低いなれど極秘情報の一つ。

 当然の追及だが、海賊二人に話した身としては言い難く、今バレる訳には行かない理由でもあるのか。

 話題に取り上げられた途端、やはり追及して来たか……と内心思うも表情は変えず、続く言葉を待つ。


「君には極秘裏に護衛を頼んでいたが、君の眼にはどう映ったかな?」


「……失礼を承知で言うが、内容が具体的ではないぞ」


「おっと。これは失礼」


 開かれた口から出たのは、前半こそ具体的だったのに対し、後半は曖昧で『何が』──が抜け落ち。

 相手の想像や受け止め方に頼った発言を、具体的ではないと椅子の背凭れに体重を預け。

 膝と黒い靴の爪先で円卓の裏側に引っ掛け、背後のモノリスを支えに胸元で両腕を組み指摘する謙信。

 指摘する態度や発言の仕方にテラーの表情は苛立ちを見せ、右肘を机に、手に顎を乗せる頬杖をし。

 机へ置かれた左腕は気だるげで、左人差し指が不服や苛立ちを表すかの如く、何度も繰り返し机を叩く。

 組織のトップたるゼノ・クライムは自身のミスをすんなり受け入れ、淡々と謝罪の言葉を返す。


「では改めて……水無月謙信。君の眼から見た『この世界の破壊者』は、どの様に映ったかな?」


「──条件を満たした時に限り馬鹿が付く程のお人好しで、昼行灯を装う食えない奴だ」


 言い方を具体的に改め、再度訊ねるゼノ。問われた謙信は凭れ掛かる座り方を直し、普通に座った上。

 胸元で組んでいた両腕を解き、机の上へ乗せて左手を右手で包み、ゼノの顔を真っ直ぐ見て答える。

 『条件を満たした時に限り』と限定的で、第三者視点だと自己犠牲の塊とも言える馬鹿さ加減。

 それは太陽が照らす真っ只中に、提灯等の明かりを灯す様な……と言った侮辱にも等しい発言なのだが。

 故に──敵味方が明確に分かれ易い。その明るさや馬鹿さ加減に惹かれる者、逆に嫌気が差し嫌う者。

 だからこそ……謙信はエックスを、煮ても焼いても食えない奴。との評価を下し、更に警戒心を強める。

 本当にあの爆発に飲まれ死んだのか?それとも逆に利用し、此方の動きや何かを狙っているのか?と。


(奴は道化だ。馬鹿を演じ、周囲からの評価・認識を意図的に下げ、此方の予測の斜めな行動を取る)


 謙信は打倒エックスを掲げる為、彼が港町トワイライトへ来訪時からの行動を陰ながら観察していた。

 黒竜の娘・ユウキによる堤防への激突、酒場以降に見せた竜娘と魔王へ対する反応と対応。

 自ら好意を向ける相手には付かず離れず、引き寄せたかと思えば、お誘い等をのらりくらりと回避。

 更にその言動は素か演技か計算尽くか。全く本心が読めない上、一般的に見える部分が平々凡々な為。

 周囲の評価は低くなりガチ故、予測を簡単に上回られ、優位性や状況が覆され易いと睨んでいる。


「確かに、君の評価は最もだ」


「まぁ……悔しいけど、同感ッス。オイラの作ったClothes(クロウズ)Terror(テラー)が一蹴されたし…」


「だが──あの爆発に飲まれ、消えた。それで良しとしよう」


 口にした謙信の全うに評価され、君の観察眼に間違いはないとゼノは深く頷き、肯定的な返答。

 テラーは眼を反らし、本当は反発したいものの事実かつ、上司のゼノが居る為に納得せざるを得ない。

 Clothes(クロウズ)Terror(テラー)──恐怖の衣服と言う名を与えられし、幹部・テラーが発明した傑作。

 そう。エックスが一蹴したゴキブリの能力を有した仲介役。アレこそがClothes(クロウズ)Terror(テラー)であり。

 何者かが『日常的に着用する衣服』でもある。その事実と、日常に潜む非日常が恐怖の意味を持つ。

 しかし南区を消し飛ばす威力の爆発で彼は消え、脅威と障害は無くなった──的な曖昧な言い方。


(……奴が狐なら、コイツはさしずめ狸と言ったところか)


 道化と評するエックスを狐、具体的で的確な発言を敢えて口に出しないゼノを狸だと認識を改め。

 彼がディクテイターにとって、一番厄介かつ脅威、障害足り得る理由は破壊者の力だけではなく。

 暗黒の星で作られ、邪神達からその身に埋め込まれし多面結晶体型の宝石──輝くトラペゾヘドロン。

 宝石自体が欲深い人族を魅了する為か。この宝石は『人間の心を支配』する力を持つ恐るべき物。

 仮にエックスを殺害した場合。無数の『混沌』が宝石より這い出して世界を嘲笑い、滅亡が確定する。

 体験済み故か。謙信は両手で腕を掴み、恐怖に震える体を止めようと顔を強張らせてしまう。


「……ふむ。では、テラーからも聞かせて貰おうか。準備は良いかい?」


「うッス。そんで、何を話せばいいんッスかね?」


「それは勿論──まだ使用許可の出していない恐弾と、Clothes(クロウズ)Terror(テラー)を無断使用した理由だ」


「──ッ!!」


 糸目の様に目を細めると謙信からの話を切り上げ、テラーからの話を聞く方向へと切り替え、問う。

 それに対し何の警戒も無く、褒めて欲しいと言わんばかりに立ち上がり、満面の笑みで親しげに訊ねる。

 だが……テラーは気付かない。謙信がゼノを狸と認識し、更には『敢えて』具体的な発言をしない点を。

 故に──直撃を受ける。うっすらと目を開け、低く冷たい発音で問われるは、無断使用の件。

 ベストは尽くせ。確かにそう言われたが、時が来るまで待てばいいと言う指示を無視した独断専行。

 報告・連絡・相談の報連相を軽視して行動した結果に心底焦り、恐怖が脈拍と心拍数を引き上げ。

 呼吸が荒く、短く、頭や体からは冷や汗が次々と流れ落ち言葉も出ず、自業自得と言う他無い。


「どうしたんだい?私はただ、理由を聞いているだけなんだがね」


「ッ……!!」


 声色は普段通りへ戻り、表情だって怒ってはいない。それでも……自己責任、ゼノからの評価が落ちる。

 そう言った恐怖心が、受け取り手の認識をネガティブなモノへと変換し、悪い方へと都合良く解釈。

 結果、危険や強いストレスを感じ分泌されるコルチゾールや、ノルアドレナリンの神経伝達物質。

 上がる心拍数と血圧、周囲の状況へ過敏になり、強まる警戒心。脳の記憶の形成や空間認識を司る。

 重要な部位の海馬へダメージが入り、ネガティブ思考の悪循環が起きる。……あくまでも、一般的には。


「ヤバいヤバいヤバいヤバい。来る来る来る来る来る、ヤバい位脳に響くぜぇ!この電気信号はよぉぉ!!」


 だが、このテラーは他とは違う。恐怖の名を冠する為か?それとも、元々こう言う性格の持ち主故か。

 ストレスと言う負荷の電気信号が神経伝達を通して、連続で脳に送り届けられ、募りに募る不安感。

 瞳が螺旋を描いて渦巻き、両手で頭を抱えれば、早口言葉で説明しつつ上半身を大きく仰け反らせ──

 勢いを付けて体を前へと押し出し、両手を前方へ振り払う。瞬間、左右の位置にて座る二人を。

 強烈な風圧が襲い、髪や衣服を乱し収まった後。円卓が左右中央に切断され、遅れて音を立て倒れる。


「……なあ、ゼノ・クライム。コイツは昔っからこんな感じなのか?」


「君こそ曖昧な発言をしているんじゃないのかね?」


「チッ……」


 性格が明るめの不良生徒感から一転。強烈な恐怖が狂人、麻薬中毒者の禁断症状に近い雰囲気を出す。

 それは灼熱の太陽が照らす昼間の砂漠で、漸く見付けたオアシスの透き通る冷たい水が渇いた喉を通り。

 生き返った!!と心から思う様な……または空腹故に鳴り続ける時、差し出される好物の数々を頬張る幸せ。

 それと同等、もしくはそれ以上の神経伝達物質が脳に届き、歓喜の叫びを上げるテラーを見て。

 ドン引きする謙信はゼノへ訊ねるも、言い返しとばかりに指摘され、強めに舌打ちをし不服感を出す。


「フフッ。私が彼と初遭遇しスカウトした理由が──二つの異常性癖と恐怖のSM思考」


 曰く、ゼノがテラーをスカウトして恐怖の名を与えたのも、初めて出逢った時に見た現場だと言う。

 第三者から見れば過剰防衛。しかしゼノには恐怖と言う脳内麻薬に酔い、死体を愛し食す狩猟者。

 自身が受ける、他者に与える恐怖が歪んだ愛を産んだ。それが──死性愛者タナトフィリア食人性愛(カニバリズム)

 ゼノ曰く「テラーは産まれた時から死の恐怖と共に生きる生態環境に居た」らしく、異常性癖もそう。

 彼の生き抜いた環境や狩猟者の脅威を称賛し、幹部として迎え入れ、恐怖(テラー)の冠を授けたと語る。


「自惚れた平和に堕落せし新旧の人類種に、恐怖と言う名の鉄槌を下すには丁度良い」


「駄目だ……ゼノ様。オイラ、まだ恐怖が足りない。足りないんだよぉぉぉ!!」


「フフッ、そうか。ではテラー。今回の無断行為を不問にしたいのであれば……分かるね?」


「理解理解理解理解理解ぃぃぃ!!絶対オイラの手で!全世界を恐怖の沼に沈めてやるッス!!!」


 刺激無き平和に溺れ、堕落する新旧を含む人類に恐怖の鉄槌を下す。ゼノの言葉を人類種で言えば……

 敵国のスパイが勝手に住み着き、自衛隊や軍隊の解体を唱える愚か者達(ストゥルティ)が侵略者として動き。

 防衛力の解体後を狙い襲うも同然の行為。するとテラーの天を見上げていた顔が下を向き、首を捻ると。

 ゼノに対し恐怖が足りないと、禁断症状が発現したかの如く突然苦しみ出し、両手で頭を抱え。

 激しく振り乱し、叫ぶ。ならばと提案された条件を曖昧ながら口にすれば、理解したと叫び。

 全ての世界を恐怖と言う底無し沼へ沈めてやると、自身に向けられ、与える恐怖に震えながら言い放つ。


(……ゼノ。貴様の本当の目的は──何だ?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ