台風の学校は危険だらけ
雨が激しく降り地面には池のように水が溜まり、風が嵐のように吹き荒れ木が踊り狂ったように揺れている。
窓はガタガタと揺れ、お店の看板や旗が空を舞っている。
それに人っ子一人外には出ておらず、町はゴーストタウンと化していた。これはつまり、台風って訳だ。
そしてここは──
「今日はやけに雨風が強いな」
「そうだな。学校来る途中に傘一本壊しちゃったぜ」
「僕も途中で吹き飛ばされそうになったよ」
学校である。
金城を含め、龍尾と蓮が廊下の窓から外を眺めていた。
だが、おかしな点がある。三人以外誰も学校におらず、電気すら付いていない状況であった。
「んしても、何で誰も学校にいないんだ?」
「確かに、正面玄関開いてなかったもんな」
「まっ、この学校はザルだからトイレの窓から侵入出来ちゃうから楽だ」
金城らは正面玄関が開いていなかった為、一階トイレの鍵を開けて学校に入ったのだ。
誰もいない学校に蓮が気になった事を言う。
「まさか連絡網、僕らだけ届いてないって事は……」
「そんな事ないだろ」
「でも、ピンポイントで僕らのクラスの僕ら以外いないっておかしい話でしょ?」
その事に龍尾は冷や汗を流し始めた。
「……蓮の前は誰だ?」
「龍尾君のはずだよ?龍尾君こそ、前は誰なの?」
「俺か?俺は金城──あ」
龍尾の言葉が止まり、二人察して金城を見つめた。
「お前、連絡来たか?」
「あぁ〜。来てないかなぁ」
そのしらばっくれてる顔に龍尾は怒りを表した。
「ぜってぇ連絡網俺らに伝えてねぇだろてめぇ!てか、連絡網お前の前誰だよ!」
「修吾だったかな〜」
「修吾が伝え忘れる訳ないだろ!!絶対お前が伝えてねぇだけだら!!てかなんで、連絡受けたはずのお前がここにいんだよ!!」
「確かあの時──」
*
昨日の夜──外は雨風が強くなり始め、金城の部屋の窓はガタガタと軽く揺れていた。
そして半分寝ている状態で漫画を読んでいる金城。目も虚で寝ているのか起きてる境目を彷徨っている状態であった。
そんな時に修吾からスマホに電話がかかって来た。
「は〜い」
『金城、俺だ』
「俺俺詐欺か?切るぞ」
『違う違う!俺だよ、修吾だ!声が眠そうだけど大丈夫か?」
「大丈夫」
『明日は台風が黒腹市に一番接近するらしいから学校休みになったから、次の龍尾に連絡しておけよ』
「へぇ〜い……」
そのまま金城は力なくして電話を切って眠りに着いた……
*
その事を思い出した金城は気まずそうに二人に言う。
「まぁ、来てしまったもんはしょうがねぇ。台風去るまで、ここで時間潰すか」
「本当ならお前をぶっ飛ばしたい所だが、ここでキレてもしょうがない。静かに待つしかないな」
「そうと決まれば、職員室行くぞ」
「職員室?」
言われるがまま二人は金城について行き、職員室へと行った。
「確か教頭の机の後ろの棚だったかな」
そう言って到着するなら、真っ直ぐと教頭先生の机の後ろにある棚を調べ始めた。
棚には書類がびっしり入っているように見えるのだが、金城は気にせずに調べた。
「お、これだこれだ」
本を何冊か退かすと奥に何個かのお菓子があり、そのお菓子を勝手に取って袋を破り食べ始めた。
「教頭先生の棚にはいっぱいお菓子があるし、用務員のおっちゃんの机の中にもある。先生らの冷蔵庫にもいっぱい色んなもんが入ってるから、台風が去るまで洒落込もうや」
「その方がいいかもな。こうゆう時しか出来ない事もあるだろうし。どうせ、俺達がここにいる事なんて、誰も知らないだろうしから」
「そうそう前向きに考えるのが一番だ」
三人は適当な椅子に座って、お菓子を食べてコーヒーを飲みながら職員室にあるテレビを見ていた。
テレビでは台風情報が報じられていた。
『台風は依然として黒腹市内に留まっている模様です。雨風は更に強まり、専門家によると今日一日この状況が続くと言われております。外は瓦やガラス片など危険物などが飛来している可能性もあるこで絶対に出ないで下さい。付近の住民の方はもし避難命令が出た場合、情報をよく確認しながら冷静に判断して行動して下さい』
「マジかよ」
呑気にコーヒーの飲み干しテレビを消す金城と戦々恐々として身体を震わせる蓮。ため息を大きく吐き、愚痴をこぼす。
「やっぱり来るんじゃ無かったよ……」
「そんな事言うなって、オセロ盤があったろ。時間潰しにやろうぜ」
「う、うん……」
金城らに連れられて渡り廊下から階段を下に降った。その最中、川を見ると、川の水が溜まっておりいづれは氾濫しそうな状態になっていた。
だが、三人ともそんなに気にする事なく体育館へと移動して、体育館一階の事務室へと行き、場所が分かっている金城はすぐに見つけて三人で交代交代で始めた。
二人はやる気ない中、金城だけは素で笑いながらゲームを楽しんでいた。でん、なんやかんや言って時間が経つに連れて二人も夢中になって楽しみ始めた。
そしてオセロだけで二時間くらいが経った。雨は更に強くなって行き、川が氾濫寸前になり、一部の地域では避難警報が鳴るほどになった。
そんな事も知らずに三人はオセロを楽しみ続けた。
「蓮弱すぎだぞ」
「あんまりこうゆうの苦手で──ん?」
照れている蓮のお尻がひんやりと水の感触を感じた。
ふと、後ろを振り向くと大量の泥水が体育館に押し寄せていたのだ。
「うわっ!?」
「泥水!?」
全員飛び起きて体育館入り口へと駆けた。
そこには大量の泥水がドアの前に溜まっており、ドアの隙間から入った水が体育館まで流れ込んでたのだ。
「これって……」
「ヤバイぞ!これ……」
金城がドアを開けると靴が全部水につくほどの量の水が流れ込んで来た。
「こんなに水が!?何で?」
「学校自体は高い場所にあって山みたいなもんで、この体育館は谷にようなもんだ。もし川が氾濫したとするなら、その水を吸い寄せるようにここへと集まって来るんだ。すぐそこの川だからな」
「だからって、水来すぎだろ!」
「つまり、川が氾濫したって訳だ。ここから脱出して校舎に戻るぞ」
全員急ぎ足で体育館から出て、風が強い中校舎へと戻っていった。階段を登っている最中、川を見ると大量の泥水が溢れかえっていた。その水は吸い寄せられるように体育館へと流れ込んでいく。
「やはり川が氾濫したようだな」
「ひぃ!」
「学校は高い位置にあるから水は来る事がないだろうが、風がさっきより強くなっているようだから、早く戻ろうぜ」
「なんでそんな冷静なの……」
その時、蓮の頬を何か掠って背後から鈍い音が鳴った。
「え?」
ゆっくりと確認すると、瓦が階段のコンクリートに深く突き刺さっていたのだ。背筋が凍る思いになる蓮はその場に腰を抜かしてしまった。
「ひ、ひぃ……」
「おい!まだ飛んで来るぞ!!立て!」
龍尾に引っ張られ階段を駆け上がる三人。更に飛んでくる瓦がコンクリートの階段に突き刺さり、三人は逃げるように校舎へと飛び込んだ。
ドアを閉めて三人は咄嗟にしゃがむと、飛んで来た瓦が窓ガラスを突き破り反対側の窓ガラスを突き破り、何処かへと飛んでいった。
「まるで獲物を狙う鷹のようだ……」
「命の危機に関わるぞ……」
「安全な場所に行くぞ。死ぬ危険性が増してきたぞ」
移動しようと立ち上がった瞬間、隣の窓ガラスから木が突き破り、教室の中へと転がり椅子や机を薙ぎ倒していった。
窓の外を見ると、今度は宙を舞っている普通自動車が勢いよく学校へと飛んで来た。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
全員二階へと階段を駆け上がり、車は一階階段に突き刺さって階段を破壊した。
「職員室へ行くぞ!!廊下を一気に走るぞ!!」
「「おう!!」」
全員先程の惨状を目の当たりにして多分安全な職員室へと向かう為にはこの廊下を渡らないといけない。
全員息を飲み、一斉に走り出した。
その瞬間、飛んでいる瓦がガラスを突き破って来た。金城らはそれらをギリギリに避けながら走り、更には看板やら棒などが飛んでくるがそれも避けて命からがら廊下を走りきり職員室へとたどり着いた。
「着いた……疲れた。台風情報を……」
全員マラソンを走り切ったように息を荒くして適当な椅子に座った。龍尾はリモコンでテレビをつけようとボタンを押した。だが、反応する事はなかった。それに蓮が部屋の電気を付けようとするも何も反応しなかった。
「ん?あれ?つかない?」
「まさか停電か?台風だから、電線がぶっちイカレたかもしんねぇな」
「マジかよ」
「これじゃあ暖かい飲み物が飲めないじゃないか」
「そう言う場合か……」
「やる事ないから俺寝るわ」
「あっそ」
そう言って金城は校長室へと行った。残った二人のテンションが下がり無言になってしまった。
金城は窓がガタガタと激しく揺れる中、校長室のソファーに寝転がって眠りにつこうとした。
そんな時──いきなり謎の爆発音と共に地面が激しく揺れた。
寝ていた金城もびっくりしてソファーから転げ落ちた。
「何だ!?今のは!?」
「やばいぞ!!給食室が燃えている!!」
「何!?」
全員が給食室前まで行くと、一階全体が黒い煙に包まれおり、給食室内は激しく炎に飲み込まれていた。
「ひぃ!何が起きたの!?」
「さっき原付が空を飛んでるのを見たから、それが多分突っ込んだんだと思う。それよりも早く消そうぜ!こんな状況じゃ消防車も来れん!」
そう言って蓮と龍尾はすぐにバケツを取って来て水を汲み、燃える給食室へと投げ入れる。何度も何度も繰り返すが火が消える様子は無かった。むしろどんどん火が強まって行く。
「火がぜんぜん消えねぇぞ!」
「ヤバイよ!ヤバイよ!」
慌てる二人に対して金城は呑気に見ているだけだった。
「お前も手伝えよ!!」
「今は雨降ってるんだぜ?そんなもんすぐに──」
と言った瞬間、更に強く爆発し全員吹き飛ばされた。
「更に爆発しやがった!」
「おい!2階からも煙が!?」
「はぁ!?」
二階からも煙がモクモクと上がっておりそれも見に行くと給食室の真上にある理科室であった。
「何で理科室が!?」
「変な薬物か何かに引火したんだろ」
「こんなもん雨でも鎮火不可能だろ!!」
「そんなもん分からんだろ!それよりも煙がある場所にいて、一酸化炭素中毒になって死んでしまうぞ。この場から離れるのが先決だ」
金城が言うと蓮は慌てて階段を上がろうとする。
「なら、四階に行こうよ!四階なら煙も来ないだろうし」
「バカ!煙は上がって行くんだぜ!上に煙が滞留するし、火事がより酷くなったら逃げ場が無くなってしまう。避難訓練で床に伏せて移動しろって言われてるだろ。台風で逃げれないなら、一階の端に逃げるんだ。今なら廊下の窓ガラスが破壊されて煙も外に出て行くし」
二人は金城に従い、給食室の反対側の端にある教室に逃げ込んだ。
蓮は教室の端に体育座りして身体を震わせていた。龍尾は窓から顔だけ出して外を覗き、雨や風の様子を確認していた。
「雨も風も弱まる気配がないな」
「まぁ、雨風が収まれば消防車が来るだろ。ユックリ待とうぜ」
呑気な金城だったが、外を見ていた龍尾がいきなり騒ぎ出した。
「見ろみんな!石像が!!」
窓の外を見ると、校門かれ入ってすぐ横にある初代校長の石像の足元がひび割れ始めた。
因みにこの髭面の校長の像は両手を挙げている。それは"この両手両足は皆を支える為にある"と言うよく分からないスローガンを持っていた初代校長の姿を像にしたらしいのだ。
全員が心配して見ているとその石像の足元が台座から離れ、空を勢いよく飛び始めた。
「石像が空を飛んでいる!」
「まるでスーパーヒーローのようだな」
初代校長は縦横無尽に空を飛び交い、本当にスーパーヒーローのように見えた。すると、初代校長が金城らの方へと飛んで来た。
「皆んな伏せろ!」
「うわっ!」
全員咄嗟に伏せた。
初代校長は廊下の窓ガラスを突き破り、教室を通過して窓ガラスが突き破ってまた空へと舞い戻っていった。
「ヒーローからヴィランに変わりやがったぞ」
「あんなもんに当たったら即死するぞ」
「また来るぞ!」
学校の周りを周回し、初代校長は何度も学校に突っ込んではまた外に戻るを繰り返した。
その度に学校は破壊されてボロボロになって行くが、破壊されたことによって学校内に溜まっている煙が突き破った穴から徐々に抜けて行き、校内滞留している煙は少なくなっていった。
「なるほど、その為に学校を破壊していったのか。やはりヒーローだったか」
「凄いぞ校長マン!!」
全員が歓喜に満ちて、校長マンに感謝していると、お礼はいらないと言わんばかりに校長マンは町の方へと飛んでいった。
「本当にヒーローの去り方だな」
「とにかく火事の心配は無くなったな」
安心して再び寝ようと教室の床に寝転ぶ金城だったが、外を見つめている蓮が口を震わせて二人に告げる。
「ガソリン積んだタンクローリーだ!!」
「はぁ!?」
こちらへと飛んでくる巨大なタンクローリー。
更にそのタンクローリーの下には、校長マンの姿が見えた。あの両手を挙げている手がタンクローリーを支えているように見え、それを持って来ているかのような感じになっている。
「校長マンが連れて来やがった!!」
「逃げろ!!死ぬぞぉぉぉ!!」
全員咄嗟に窓から飛び降りようとしたが、ガソリンを積んだタンクローリー掴んでいる校長の像は火事の中へと真っ直ぐと飛び込んだ。
その瞬間、学校全体を眩い光が覆い込み、雨も吹き飛ぶほどの衝撃を放つ大爆発を起こした──
*
次の日──修吾がスマホで学校全壊のニュースを見つめていた。
「"学校全壊。間違って登校した少年達の悲劇。大爆発からの奇跡の生還"……か」
「あぁ、良かったよ。本当にね」
「それに不慮の事故という事で学校全壊の責任はお前達にはないというのも良かったな」
「あぁ、良かったよ。本当にね」
ここは体育館。他の生徒らも全員おり、学年ごとに簡易な机と椅子が用意されて、全学年体育館でボードを黒板代わりな使って授業を行っていた。
学校は全壊し、今は残骸を撤去しているのだ。
「お爆発で吹き飛ばされた場所が水が溜まってた体育館側だから大丈夫だったのか。本当に奇跡の生還だな」
「良かったよ。うん。本当にね」
金城ら三人共頭に包帯を巻く程度で済んだ。だが、龍尾と蓮が金城を後ろから睨みつけていた。それも殺気めいたオーラが漂い、現に金城らが座っている周りには誰も座っていないのだった。
そんな重苦しい空気に修吾も気まずくなっていく。
「お前、相当恨まれてるようだな。連絡網を来たら、次からはちゃんと次のやつに連絡入れろよ」
「……絶対そうする」




