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真約 メフィストフェレス  作者: 三文士
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No Fame No Mercy

またまた続けて投稿です。ここから少し間があきます。よければお付き合いください。感想お待ちしてます。

『ミカエルよ。』


よく通る威厳のある声。天上から雨のように振りそそぐそれはまさに天啓。しかも大天使長ミカエルを呼び捨てにする。


『あとガブリエルとラファエル。』


これはもう決まり。奴らをついで呼ばわり。神が降臨した(声だけ)。


『そろって皆いないじゃないか。一体何処へ行ってるんだ。僕、さみしんだけど。』


神は寂しがりらしい。


呼ばれた三大天使は揃ってすくみ上がった。


「主よ。お待ちください。もう少しで御傍へ戻ります。」


「御許しください。さぞ、御退屈でしょう。」


「もしあれでしたら戸棚にバームクーヘンが入っておりますよー。」


『えっ?ホントに?良いぞラファエル。良きに計らえ。』 


嘘だと思うだろ?これがホントなんだな。小学生かよ。


神だってバームクーヘンを食べる。


まあ、実際あたし等も驚いたけどね。


その刹那、僅かに歌で創られた光の檻に綻びが生じた。あたしはこの機会を逃すまいと、隙間から直ぐさま飛び出した。


「あっ!メス悪魔がっ!」


めざとい中間管理職が大声をあげたが時は既に遅い。


あたしは天使達にケツを向けて、ひとつ神との会話に挑戦してみる事にした。


「はろー。ご主人さま。」


あたしは声のする方に話しかける。


「無礼者!だれの許可をうけて主に話かけている!この狼藉者が!」

 

天使長は体から稲妻が発生するくらいブチ切れだがあたしは止めない。


「カタい事いうなよ。ご主人がわざわざお出ましになっている。普段から下にも気にかけてくださっているんだ。お礼くらい言わせろよ。」


『ミファエル。ふぁんだこの声ふぁ。ふぃいた事の無い声ふぁする。』


神はバームクーヘンをモグモグやりながらあたしに興味をもった。

 

しめた。


「悪魔でございます!お耳を貸さぬよう!」


『ゴクンっ。悪魔?ふーん。懐かしいね。まだ残ってたんだ。』


ミカエルは喚いてるがこうなるともうあたしの場だ。


それにしても懐かしいとはね。なんだか複雑な気分だ。


「このたびは、ご主人さまの御使いに紛れてお話させていただきました。いやはや。上品な言葉が苦手でして、御使いの方々から凄い目で見られております。」


三大天使は今にもあたしを消し炭にしたそうな目で見ている。しかし神との対話中の者に手は出せない。いい気味だ。


『構わん。好きに喋れ。面白そうだ。』


「恐悦至極。」 


あたしはべーっと舌をだして、天使に中指をくれてやった。最高にスカッとした。


『それで?』


「はえ?」


『なに用だ悪魔よ。ミカエルを差し置いても、何か言いたい事があるんだろ?』


「はあ。言いたい事?」


しまった。なにも考えていなかった。


心なしか神がニヤけているように感じる。流石は神。何でもご承知だ。そして意地が悪い。


『まさか何も無いとは言わせまいぞ。さもなくばホレ、そこの天使たちに八つ裂きにされるぞ。』


「あーさいですなあ。」


世間話がしたかった、なんて通じる相手ではない。


まあ良い。やったろうじゃん。口先はあたしの一番の武器だ。


「いやなに。上のことは知りませんが、よおく知っている事があります。」


『ほう。』


神は楽しそうだ。ホント、いい性格してる。


「人間の苦悩でございます。それは天地創造以来、ちっとも変わらない。」


『というと?』


「貴方様が光を与えなければもちっとマシな生き方もできたでしょうに。奴らはそれを理性だと言い、実のところケダモノも顔を背ける事をしている。」


『なにが言いたい悪魔。』


だんだんご機嫌も怪しくなってきた。


「つまり、あれらの魂は産まれながらに悪の色なんでございますよ。」


『ぬかしおる。私と真逆の事を言うではないか。』


神曰く、人間の魂は産まれながらに善であり、どう生きてゆくかは導き次第。どこからでもやり直しがきくそうだ。


「はい。つまりはその為に我ら悪魔は日夜、魂の浄化作業に励んでいるのでございます。」


その時、同胞達から喝采がおきた。


「産まれながら悪ならばいくら御高説を授けたとて、無駄でございます。毒を持って毒を制す。それが一番かと。」


まあね。


このくらい楽勝。


『なるほど、そこに帰結するか。ふむ。確かに一理ある。』


「主よ!」


天使長が慌てふためく。まあ無理ないさ。神が悪魔を肯定してんだ。


あたしもオドロキ。


『だがな。生まれてから死ぬまで、善の魂の者もいる。それも確かであろう。』


神もどうして。めげないお人だ。


「それは、ご主人様並びに皆々様の現世での教育の賜物です。奴らはやはり、ただのケダモノで。」


『では根っから善なる魂の者はいないと?』


「魂が善に染まる事はあっても、根本が善である者なんていやしない。」


『なぜそう言いきれる?』


「奴らは生きているからでさ。」


『なに?』


神との対話もいよいよ終盤。緊張ってやつを生まれて初めてしたね。


「人は生きている限り、利己的にならざるを得ない。それは生き物皆同じです。だが奴らは、さもそうではないかのように自分達は誰かの犠牲になっていると吹いてやがる。」


『なかなか面白いことを言う。』


「奴らは嘘付きの見栄っ張りで、ご主人様のお創りになった世界を蝕む異物だ。」


『アレも私のものでありまた世界も私のものだ。どうなろうとお前のしったことではない。』


「そうですがね。だがあんまり哀れで見てられんのです。もしそうでない者がいると言うなら是非教えて欲しい。」


『悪魔よ。人の子、源田一げんだはじめを知っておるか。』


「失礼ながら、存じませんな。」


聞いた事も無い。まあもっとも、人なんぞに興味が無いのだが。


『私の下僕だ。見るが良い。』


その声と同時に、地獄の空にデカデカと映像が映し出される。そこにはどこぞの部屋の中で、しきりに偉ぶったデブのおっさんが神について唱えている。


「随分変わった下僕ですなあ。家畜かと思いました。」


神の冗談ってやつか。どうみても泥棒の方が汚れない魂を持ってそうだ。コイツは死んだら百パーこっちで会えるタイプだ。


『当人も往き迷っていてな。ついてはどうにかしてやりたかったんだが。あいにくと退屈に忙しい。まあいずれ必ず我が元に来る。』


こりゃあいい。良い事思いついた。


「ご主人様、ひとつ賭けませんか?」


『賭けだと?』


のってきた。話が分かるおひとだ。暇なだけかも。


「その下僕とやらを手懐け、誘惑してやって。魂の本性を暴いてみせますよ。」


『ほう。貴様にできると。地獄へ堕とすことができるとな。』


「造作もありません。」


『いいだろう。そうしたければするが良い。だがいつまでも迷い悩む、それが人間だ。』


「ありがたい。ヤツが地獄に堕ちたらあたしの勝ち。魂相手も悪くないが、生身の人間はもっといたぶりがいがありそうだ。」


『よし。あやつの心を引きずり回してみるがいい。だが言っておく。人が生まれながらに善なる魂を持っているなら、例え暗い衝動に駆られてもいつかは善に帰結するもんだ。吠えずらをかくでないぞ。』


「時間はかからない。賭けはいただきだ。まんまと勝ったその時は、今後ヒトの魂の所有権はあたしらのものというのは?」


『図に乗りおって。だが、まあいいだろう。ずいぶん自信があるようだな。』


「そんな!主よ!悪魔と取引だなんて。」

 

ミカエルは嘆いてる。いいざまだ。最高。


「身内の蛇はまんまとリンゴを食わせましたからね。今度はあたしが手柄をあげる。さて、そうと解ればさっそく地上へ行かなくちゃ。」


『身内の蛇?』


その瞬間神は何かを訝しんでいたが、既にあたしは地上への入り口に飛び込もうとしていた。


『待て悪魔の娘よ。』


「何か?今更無しとは言わないでしょうね。」


このチャンスを逃す手はない。


『そうではない。名は。名はなんという?』


そうだった。大勝負の際には名前を名乗らないと。あたしは見えない相手に恭しくお辞儀をして答えた。


「『暁の娘』メフィストフェレスで御座います。以後、御見知りおきを。」


そう言って、あたしは神が用意した地上への入り口に飛び込んだ。


あたしはとっても暢気に構えていた。


これからアイツとの長い長いお遊びが始まるだなんて、その時は想像もしていなかったから。


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