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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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96/135

96:幕間:灰爪、その後

本日もよろしくお願いします。

数日後。


リスベル近郊の森。

レオンのサポート加入期間が終わり、灰爪は4人で森での討伐任務を行っていた。



「右、二!!」


ラグの声が飛ぶ。

ほぼ同時に、フィオが槍を横薙ぎに払った。


飛び掛かってきた狼型が地面を転がる。


そこへ。


「切り裂け!!」


ミレスの風刃が狼型の首元を裂く。


血飛沫。

一体撃破。


だがもう一体が木陰から回り込む。


以前なら。


ここで誰かが慌てていた。


だが。


「ナナ、下がれ!!」


ラグが即座に位置を変える。


大剣を振り下ろし、狼型を弾き飛ばす。


追撃を行うフィオの槍が狼型の喉を貫いた。


戦闘終了。


静寂。


荒い息。


だが、誰も崩れていない。



「……終わったか」


ラグが息を吐く。


ナナが少しだけ安堵したように笑った。


「今回はちゃんと回せましたね」


フィオも頷く。


「危ない場面はありましたけどね」


ミレスが杖を肩へ担ぐ。


「でも前より遥かにマシだろ」


その言葉に、全員が少し黙った。


前までは、もっと酷かった。


誰かが突っ込み、誰かが無理をし、誰かが孤立していた。


だが今は。


全員が、互いの位置を見ている。


「……何か変な感じだな」


ラグが頭を掻く。


「前より戦いやすい」


フィオが苦笑する。


「それ、今までが酷かっただけですよ」


「うるせぇ」


だが、否定はしなかった。



その時、ミレスがふと周囲を見渡した。


「……でもよ」


「これ、レオンさん一人で見てたんだよな」


短い沈黙。


ナナが小さく息を呑む。


「……確かに」


死角。

位置。

誰が押されているか。

どこへ回復を飛ばすべきか。


全部。


レオンは、戦いながら見ていた。


妖精鳥での支援を維持しながら。


「今思うと、意味分かんねぇな……」


ミレスが遠い目をする。


フィオも頷いた。


「この前は、レオンさんの判断に全部任せていた気がします」


「索敵も、警戒も、指示も。

全部自然に飛んできてましたから」


ナナが、少し申し訳なさそうに笑う。


「私も……かなり頼ってました」


その時。


フィオがふとラグを見る。


「ラグなんて、最初かなり酷かったですよね」


「“妖精鳥しか使えねぇ癖に”とか」


ラグの顔が、一瞬で歪んだ。


「……っ、お前」


ミレスが吹き出す。


「あー言ってたな」


「細いだの、頼りねぇだの」


「やめろ馬鹿!!」


ラグが即座に怒鳴る。

耳まで赤い。

ナナまで、少し笑いを堪えていた。


「恥ずかしい事思い出させんな!!」


フィオが、くすりと笑う。


「でも今は?」


ラグが、数秒黙る。


腰の銀灰色の爪を見る。


そして、小さく息を吐いた。


「……尊敬してる」


静かな声だった。


「正直、最初は“変わった召喚士”くらいにしか思ってなかった」


「でも違ったわ」


ミレスも、苦笑しながら頷く。


「索敵、指示、戦況判断」


「あの精度で全部一人でやってんの、今思うと半端じゃねぇ」


「しかも、自分も狙われながらだろ?

俺だったら絶対無理だわ」


フィオも、静かに続ける。


「最後の撤退戦、私達だけなら途中で崩れてました」


「誰が押されてるかも、どこから来るかも、多分把握し切れなかった」


「ミレスかナナが捕まって、そこから一気に壊されてたと思います」


ミレスが、重く息を吐く。


「実際、レオンさんの指示一回遅れた時、空気変わったもんな……」


「あの時初めて分かったわ」


「“あの人一人抜けるだけで、こんなヤバくなるのか”って」


ナナも、

小さく頷いた。


「最後、レオンさん居なかったら、私達……間違いなく死んでました」


静かな声だった。


「逃げる方向も、下がる順番も、多分ぐちゃぐちゃになってたと思います」


「誰かを助けようとして、別の誰かが孤立して……」


「多分、全員戻って来られませんでした」


誰も、否定しなかった。


森での光景が、全員の脳裏に残っている。


銀灰色の老狼。

休ませない群れの動き。


そして。


それを捌き続けていた、レオンの指示。


ラグが、銀灰色の爪を見ながら笑う。


「……今の俺達じゃ、まだ並べねぇな」


悔しさ。


だが、それだけじゃない。


「でも、いつか追い付く」


銀灰色の爪を、強く握る。


「ソロで、しかもサポート専門でCランクっての、ちゃんと理由あったわ」


その言葉に、誰も否定しなかった。


まだ届かない。


だが、灰爪は、もう前だけを見て戦うパーティじゃない。


互いを見て。

支え合って。

前へ進もうとしている。



リスベル冒険者ギルド。


受付嬢が、資料を整理している。


その前へ、一人の職員がやって来た。


「灰爪、無事帰還しました」


「……どうでした?」


受付嬢が顔を上げる。


職員が少し笑う。


「かなり安定してたみたいですよ」


「前みたいな無茶も減ってます」


受付嬢が、小さく安堵の息を吐いた。


やはり、レオンへ任せたのは正解だった。


その時。


別の職員が、慌てた様子で入ってくる。


「魔境側の報告書です!」


空気が変わる。


受付嬢が、真剣な顔になる。


「内容は?」


「周辺魔物の流入増加」


「それと――」


職員が、

一枚の報告書を差し出した。


「銀灰色の大型狼型と思われる目撃情報」


受付嬢の目が細まる。


「……やはりいましたか」


「はい」


職員が頷く。


「それと、王都側からの派遣要請の話が」


王都。


その言葉に、

ギルド内の空気が少し張り詰める。


受付嬢は、

静かに窓の外を見る。


夕暮れ。


赤く染まるリスベル。


そして。


森の奥。


何かが、

少しずつ動き始めていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


これにて灰爪編は終了となります。

今回の章ではレオン個人の成長だけでなく、周りへの影響も上手く書けたのではないかなと思います。


登場人物がだいぶ増えて来ましたの、登場人物整理を挟んで、新章に突入します。


続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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