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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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93/143

93:追われる側

本日もよろしくお願いします。

狼型達の狙いは、

完全に変わっていた。


木々の隙間の死角からの視線、

飛びかかってくる攻撃、

その全てが、レオンへ向いている。


「右後方!!」


レオンが叫ぶ。

妖精鳥が飛ぶ。

牽制。

だが次の瞬間には別方向から牙。


休ませない。

考える暇を与えない。


大型個体は、既に理解していた。


この場で最も厄介なのは、レオンだと。


それは、統率する者としての直感と経験だった。


⸻


森を駆ける。


枝を踏み。

泥を蹴り。

息を切らしながら。


灰爪はギリギリで撤退を続けていた。


「フィオさん左!!」


「っ!!」


槍を振るい飛び掛かった狼型を叩き落とす。


だが狼型は深追いしない。


一撃。

牽制。

それだけで、すぐ森へ引く。


そこへ、

別方向から別個体。


「チィッ!!」


ラグが大剣を振るう。


だが、まともには当たらない。


狼型は掠めるように距離を取り、再び木々の間へ消える。

嫌な戦い方だった。


一体が仕掛ける。

退く。

別方向からもう一体。

さらに少し遅れて別個体。


途切れない。

休ませない。

集中だけを削ってくる。


⸻


ざっと見ただけでも、通常個体は二十近い。


だがその多くは、やや小型だった。


本来、前衛を担う成熟した個体が少ない。


恐らく。


大型個体が負傷した戦いで、個体数がかなり減ったのだろう。


だからこそ、何とか凌げている。


もし、群れが本来の状態であったとしたら、とっくに押し潰されていただろう。


⸻


「ナナさん下がって!!」


レオンが叫ぶ。


妖精鳥。

牽制。

ナナが後退。


だが直後。


「ミレスさん右!!」


風刃を狼型が回避。

その隙に別方向から飛び込み。


「なっ――」


ミレスが反応し切れない。


そこへフィオが滑り込み、

槍で軌道を逸らす。


だが今度は、フィオ側へ別個体。


「休ませろよクソが!!」


ラグが踏み込む。


大剣で狼型を吹き飛ばす。


だが、また下がる。

深追いしない。


その繰り返し。


徐々に。

確実に。

集中が削られていく。


⸻


「……っ」


レオンが息を荒げる。


四羽目。

視界共有。

解除。

共有。

解除。

死角。

位置。

包囲。


全部を捌く。


狼型達は頻繁に陣形を変えてくる。

見なければ間に合わない。

だが見続ければ消耗する。


最悪だった。


⸻


その時、狼型が飛び込む。

レオンが位置を読む。


妖精鳥。

牽制。

回避。

避けた、そう思った瞬間。


別方向の木陰。

死角から牙。


「っ――」


反応が僅かに遅れた。


浅い。


だが、狼型の爪が、レオンの左腕を裂いた。


鮮血。


「レオンさん!!」


フィオの声。


レオンが即座に距離を取る。


深くはない。

動ける。


だが痛みで、集中が途切れる。


その瞬間、索敵のタイミングを逃した。


「右だ!!」


ラグが怒鳴る。


ミレスの横へ、狼型が飛び込む。


風刃。


ギリギリ間に合う。


だが空気が変わった。


今のは、レオンが、

初めて読み切れなかった攻撃だった。


「すみません……今少し遅れました……!」


レオンが息を荒げる。


だが。


ラグが即座に怒鳴った。


「んな事どうでもいい!!まず自分を守れ!!」


その瞬間。


フィオが、

レオンの前へ位置を変えた。


「レオンさん!!索敵だけに集中して下さい!!」


「でも――」


「俺達で止める!!」


ラグが踏み込む。


大剣。


狼型を弾き飛ばす。


ミレスも風刃を放った。


今までのような、

撃ちたい位置じゃない。


フィオが動きやすい位置。


狼型を下がらせる位置。


そこへ撃っている。


ナナも無闇に回復を飛ばさない。


「ラグさん優先!!次フィオさん!!」


回復順を固定している。


以前ならここまで保たなかっただろう。


誰か一人が対応へ回り、

別の誰かが孤立していた。


だが今は違う。


「左来るぞ!!」


「分かってる!!」


「ミレス、今だ!!」


風刃。


狼型が退く。


その隙に、再び撤退。


繋がっている。


灰爪が。


初めて。


“レオンを支える側”として動いていた。


⸻


その時。


レオンの肩の妖精鳥が、

不意に羽を震わせた。


嫌な予感。


四羽目。


上空。


視界共有。


そして、レオンの顔色が変わる。


「……前に出てきます」


低い声。


直後。


森奥で、

重い足音が響いた。


今まで後方に居た大型個体が。


ゆっくりと、前へ出てきた。


銀灰色の体毛。


深い裂傷。


手負いの状態だ。


だが。


その、黄金の瞳だけは、

全く死んでいない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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