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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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93/138

93:追われる側

本日もよろしくお願いします。

狼型達の狙いは、

完全に変わっていた。


木々の隙間の死角からの視線、

飛びかかってくる攻撃、

その全てが、レオンへ向いている。


「右後方!!」


レオンが叫ぶ。

妖精鳥が飛ぶ。

牽制。

だが次の瞬間には別方向から牙。


休ませない。

考える暇を与えない。


大型個体は、既に理解していた。


この場で最も厄介なのは、レオンだと。


それは、統率する者としての直感と経験だった。



森を駆ける。


枝を踏み。

泥を蹴り。

息を切らしながら。


灰爪はギリギリで撤退を続けていた。


「フィオさん左!!」


「っ!!」


槍を振るい飛び掛かった狼型を叩き落とす。


だが狼型は深追いしない。


一撃。

牽制。

それだけで、すぐ森へ引く。


そこへ、

別方向から別個体。


「チィッ!!」


ラグが大剣を振るう。


だが、まともには当たらない。


狼型は掠めるように距離を取り、再び木々の間へ消える。

嫌な戦い方だった。


一体が仕掛ける。

退く。

別方向からもう一体。

さらに少し遅れて別個体。


途切れない。

休ませない。

集中だけを削ってくる。



ざっと見ただけでも、通常個体は二十近い。


だがその多くは、やや小型だった。


本来、前衛を担う成熟した個体が少ない。


恐らく。


大型個体が負傷した戦いで、個体数がかなり減ったのだろう。


だからこそ、何とか凌げている。


もし、群れが本来の状態であったとしたら、とっくに押し潰されていただろう。



「ナナさん下がって!!」


レオンが叫ぶ。


妖精鳥。

牽制。

ナナが後退。


だが直後。


「ミレスさん右!!」


風刃を狼型が回避。

その隙に別方向から飛び込み。


「なっ――」


ミレスが反応し切れない。


そこへフィオが滑り込み、

槍で軌道を逸らす。


だが今度は、フィオ側へ別個体。


「休ませろよクソが!!」


ラグが踏み込む。


大剣で狼型を吹き飛ばす。


だが、また下がる。

深追いしない。


その繰り返し。


徐々に。

確実に。

集中が削られていく。



「……っ」


レオンが息を荒げる。


四羽目。

視界共有。

解除。

共有。

解除。

死角。

位置。

包囲。


全部を捌く。


狼型達は頻繁に陣形を変えてくる。

見なければ間に合わない。

だが見続ければ消耗する。


最悪だった。



その時、狼型が飛び込む。

レオンが位置を読む。


妖精鳥。

牽制。

回避。

避けた、そう思った瞬間。


別方向の木陰。

死角から牙。


「っ――」


反応が僅かに遅れた。


浅い。


だが、狼型の爪が、レオンの左腕を裂いた。


鮮血。


「レオンさん!!」


フィオの声。


レオンが即座に距離を取る。


深くはない。

動ける。


だが痛みで、集中が途切れる。


その瞬間、索敵のタイミングを逃した。


「右だ!!」


ラグが怒鳴る。


ミレスの横へ、狼型が飛び込む。


風刃。


ギリギリ間に合う。


だが空気が変わった。


今のは、レオンが、

初めて読み切れなかった攻撃だった。


「すみません……今少し遅れました……!」


レオンが息を荒げる。


だが。


ラグが即座に怒鳴った。


「んな事どうでもいい!!まず自分を守れ!!」


その瞬間。


フィオが、

レオンの前へ位置を変えた。


「レオンさん!!索敵だけに集中して下さい!!」


「でも――」


「俺達で止める!!」


ラグが踏み込む。


大剣。


狼型を弾き飛ばす。


ミレスも風刃を放った。


今までのような、

撃ちたい位置じゃない。


フィオが動きやすい位置。


狼型を下がらせる位置。


そこへ撃っている。


ナナも無闇に回復を飛ばさない。


「ラグさん優先!!次フィオさん!!」


回復順を固定している。


以前ならここまで保たなかっただろう。


誰か一人が対応へ回り、

別の誰かが孤立していた。


だが今は違う。


「左来るぞ!!」


「分かってる!!」


「ミレス、今だ!!」


風刃。


狼型が退く。


その隙に、再び撤退。


繋がっている。


灰爪が。


初めて。


“レオンを支える側”として動いていた。



その時。


レオンの肩の妖精鳥が、

不意に羽を震わせた。


嫌な予感。


四羽目。


上空。


視界共有。


そして、レオンの顔色が変わる。


「……前に出てきます」


低い声。


直後。


森奥で、

重い足音が響いた。


今まで後方に居た大型個体が。


ゆっくりと、前へ出てきた。


銀灰色の体毛。


深い裂傷。


手負いの状態だ。


だが。


その、黄金の瞳だけは、

全く死んでいない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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