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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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90/143

90:誰も隣を見ていない

本日もよろしくお願いします。

数日後。


灰爪は再び討伐任務へ出ていた。


以前よりは、

多少マシになっている。


少なくとも。


ラグは、

以前ほど無茶な突撃をしなくなった。


ミレスも、

レオンの制止を完全には無視しない。


だが、まだ危うい。


少し噛み合い始めた程度。


油断すればすぐ崩れる。

レオンはそう感じていた。


⸻


森を進む。


今日は狼型討伐。


数は多いが、

猿型ほど厄介ではない。


本来なら。


灰爪の火力なら、

十分押し切れる相手だった。


本来なら。


⸻


「前方四」


レオンが声を掛ける。


ラグが頷いた。


「行くぞ」


以前より、

突撃が少し遅い。


フィオと位置を合わせている。


それだけでも、

かなり違った。


狼型接敵。


ラグが剣を振るう。


フィオが横を支える。


そこへ。


「今です!!」


レオンの声。


ミレスの風刃。


狼型を切り裂く。


以前より、

明らかに連携が成立していた。


だが。


レオンは、

まだ気を抜かない。


四羽目を索敵に、三羽を支援に。


全部回す。


常時ではない。


必要な時だけ全て使う。


それでも、余裕は少なかった。


⸻


その時。


右側。


妖精鳥が違和感を伝える。


レオンは、

一瞬だけ視界を重ねた。


木陰に狼型が潜んでいる。


一体。


回り込む体勢だ。


「右から一体来ます!!」


フィオが反応する。


槍。


狼型を止める。


そこへラグが振りかぶり、叩き潰す。


問題無い。


だがレオンは、少しだけ眉を寄せた。


今のは。


本来、

フィオが気付ける位置だった。


フィオは上手いし視野も狭くない。


なのに、周囲を見る余裕が無い。


理由は簡単。


ラグの補佐へ、

意識を割き過ぎている。


つまり、“ラグが崩れる前提”で動いている。


⸻


その直後。


今度は後方。


ナナが小さく悲鳴を上げた。


「っ……!」


死角から狼型が飛び出してきた。


妖精鳥を飛ばし、牽制。


レオンが即座に声を飛ばす。


「ナナさん!!後ろ下がって下さい!!」


「は、はい!!」


間に合う。


だが。


危ない。


レオンが小さく息を吐く。


今のも、

本来ならナナ自身が気付くべきだった。


だが、周囲の空気に飲まれ、余裕が無い。


つまり、このパーティは、“自分の役割だけ”に集中できていない。


⸻


戦闘終了後。


ラグが剣を肩へ担ぐ。


「今日は楽だったな」


その言葉に。


レオンは少しだけ考え込む。

確かに、以前より形になっている。


だがそれは、“レオンが居る前提”の形だった。


その時、不意にフィオが口を開く。


「……レオンさんって、普段どんなパーティで戦ってたんですか?」


「え?」


「いや……」


フィオが、

少し言い淀む。


「何ていうか、崩れそうな場所を見て指示を出すまでが早過ぎません?」


ラグも頷いた。


「確かに」


「俺ですら危ねぇって思う前に言われる」


ミレスも、不機嫌そうにしながら口を開く。


「撃てる位置作るのも、妙に上手いしな」


レオンは少し困ったように笑った。


「……基本的にソロですし、パーティに入る時も野良ばかりなので」


「いや、でも普通そこまでならねぇだろ」


ラグが呆れたように言う。


だが、レオン自身は、

あまり自覚が無かった。


前衛が孤立する。

後衛が巻き込む。

治癒が遅れる。

索敵が足りない。


そんな戦場は珍しくない。


よく見て先に動かなければ死ぬ。


それだけだった。


⸻


その時。


フィオがぽつりと呟く。


「……レオンさん居なくなったら、多分私達また崩れますよね」


沈黙。


ラグも、ミレスも、否定しなかった。


ナナは、

不安そうに俯いている。


レオンは、少しだけ考える。


そして静かに口を開いた。


「……多分、足りないのは連携じゃないんです」


全員が、レオンを見る。


「皆さん、強いんですよ」


「ラグさんは前へ出る力があるし、

フィオさんは支えるのが上手いです」


「ミレスさんの火力も高いですし、

ナナさんの治癒も遅くない」


「だから、ここまで来れてるんだと思います」


D級。


決して低くない。


適当な実力では、

まず上がれない。


灰爪は、個々の能力だけなら十分戦えていた。


だが。


「皆、“自分が一番動きやすい形”で戦ってるんです」


「だから、少しずつズレる」


静かな声。


ラグ達は黙って聞いていた。


「多分、必要なのは」


レオンが、

少し言葉を探す。


「……他の人が、動きやすい位置を見る事、なんだと思います」


風が吹く。


しばらく。


誰も何も言わなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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