表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/135

90:誰も隣を見ていない

本日もよろしくお願いします。

数日後。


灰爪は再び討伐任務へ出ていた。


以前よりは、

多少マシになっている。


少なくとも。


ラグは、

以前ほど無茶な突撃をしなくなった。


ミレスも、

レオンの制止を完全には無視しない。


だが、まだ危うい。


少し噛み合い始めた程度。


油断すればすぐ崩れる。

レオンはそう感じていた。



森を進む。


今日は狼型討伐。


数は多いが、

猿型ほど厄介ではない。


本来なら。


灰爪の火力なら、

十分押し切れる相手だった。


本来なら。



「前方四」


レオンが声を掛ける。


ラグが頷いた。


「行くぞ」


以前より、

突撃が少し遅い。


フィオと位置を合わせている。


それだけでも、

かなり違った。


狼型接敵。


ラグが剣を振るう。


フィオが横を支える。


そこへ。


「今です!!」


レオンの声。


ミレスの風刃。


狼型を切り裂く。


以前より、

明らかに連携が成立していた。


だが。


レオンは、

まだ気を抜かない。


四羽目を索敵に、三羽を支援に。


全部回す。


常時ではない。


必要な時だけ全て使う。


それでも、余裕は少なかった。



その時。


右側。


妖精鳥が違和感を伝える。


レオンは、

一瞬だけ視界を重ねた。


木陰に狼型が潜んでいる。


一体。


回り込む体勢だ。


「右から一体来ます!!」


フィオが反応する。


槍。


狼型を止める。


そこへラグが振りかぶり、叩き潰す。


問題無い。


だがレオンは、少しだけ眉を寄せた。


今のは。


本来、

フィオが気付ける位置だった。


フィオは上手いし視野も狭くない。


なのに、周囲を見る余裕が無い。


理由は簡単。


ラグの補佐へ、

意識を割き過ぎている。


つまり、“ラグが崩れる前提”で動いている。



その直後。


今度は後方。


ナナが小さく悲鳴を上げた。


「っ……!」


死角から狼型が飛び出してきた。


妖精鳥を飛ばし、牽制。


レオンが即座に声を飛ばす。


「ナナさん!!後ろ下がって下さい!!」


「は、はい!!」


間に合う。


だが。


危ない。


レオンが小さく息を吐く。


今のも、

本来ならナナ自身が気付くべきだった。


だが、周囲の空気に飲まれ、余裕が無い。


つまり、このパーティは、“自分の役割だけ”に集中できていない。



戦闘終了後。


ラグが剣を肩へ担ぐ。


「今日は楽だったな」


その言葉に。


レオンは少しだけ考え込む。

確かに、以前より形になっている。


だがそれは、“レオンが居る前提”の形だった。


その時、不意にフィオが口を開く。


「……レオンさんって、普段どんなパーティで戦ってたんですか?」


「え?」


「いや……」


フィオが、

少し言い淀む。


「何ていうか、崩れそうな場所を見て指示を出すまでが早過ぎません?」


ラグも頷いた。


「確かに」


「俺ですら危ねぇって思う前に言われる」


ミレスも、不機嫌そうにしながら口を開く。


「撃てる位置作るのも、妙に上手いしな」


レオンは少し困ったように笑った。


「……基本的にソロですし、パーティに入る時も野良ばかりなので」


「いや、でも普通そこまでならねぇだろ」


ラグが呆れたように言う。


だが、レオン自身は、

あまり自覚が無かった。


前衛が孤立する。

後衛が巻き込む。

治癒が遅れる。

索敵が足りない。


そんな戦場は珍しくない。


よく見て先に動かなければ死ぬ。


それだけだった。



その時。


フィオがぽつりと呟く。


「……レオンさん居なくなったら、多分私達また崩れますよね」


沈黙。


ラグも、ミレスも、否定しなかった。


ナナは、

不安そうに俯いている。


レオンは、少しだけ考える。


そして静かに口を開いた。


「……多分、足りないのは連携じゃないんです」


全員が、レオンを見る。


「皆さん、強いんですよ」


「ラグさんは前へ出る力があるし、

フィオさんは支えるのが上手いです」


「ミレスさんの火力も高いですし、

ナナさんの治癒も遅くない」


「だから、ここまで来れてるんだと思います」


D級。


決して低くない。


適当な実力では、

まず上がれない。


灰爪は、個々の能力だけなら十分戦えていた。


だが。


「皆、“自分が一番動きやすい形”で戦ってるんです」


「だから、少しずつズレる」


静かな声。


ラグ達は黙って聞いていた。


「多分、必要なのは」


レオンが、

少し言葉を探す。


「……他の人が、動きやすい位置を見る事、なんだと思います」


風が吹く。


しばらく。


誰も何も言わなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ