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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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88/135

88:綱渡りの戦線

本日もよろしくお願いします。

翌日。


灰爪との二度目の任務。


集合場所へ向かいながら、

レオンは小さく息を吐いた。


「……重いな」


空気が。


昨日の戦闘後、

表面上は収まった。


だが、根本的には何も解決していない。


ラグとミレスは互いに不満を抱えたまま。

フィオは疲弊。

ナナは委縮。


完全に悪循環へ入っている。


しかし、そういうパーティが少なくないことを、

レオンは知っていた。



ギルド前。


既に灰爪の面々は集まっていた。


「おはようございます」


レオンが声を掛ける。


返ってきたのは、

バラバラな反応だった。


ラグは軽く手を上げるだけ。


ミレスは露骨に不機嫌。


フィオだけが、

疲れた笑みを返した。


ナナは小さく会釈。


「今日の依頼は?」


レオンが聞く。


フィオが資料を開いた。


「洞窟付近に住み着いた猿型の群れの討伐です」


猿型。


狼型ほど統率は無い。


だが。


知能が高く、連携も取る。


そして何より、死角を狙う。


レオンは少しだけ考える。


今の灰爪とはかなり相性が悪い。


森へ入ってしばらく。


レオンは、

既に四羽目を飛ばしていた。


索敵。


周囲確認。


その時。


妖精鳥が、

違和感を伝えてくる。


「……右前方、木の上に居ます」


「は?」


ラグが顔を上げた瞬間、猿型が飛び降りてきた。


「チッ!!」


大剣一閃。


猿型を叩き落とす。


だが、それと同時に左と後方の木々が揺れる。


「囲まれてます!!」


レオンが声を飛ばした。


その瞬間、ラグが前へ出る。


「まとめて来い!!」


悪手だ。


猿型は正面から来ない。


木を使う。

跳ぶ。

散る。


フィオが慌てて動く。


「ラグ!!前出過ぎ!!」


その横でミレスは既に詠唱へ入っていた。


風刃の魔術。

それも広範囲型。


だが、位置が悪い。


「ミレスさん!!まだ撃たないで下さい!!」


「っ……またそれかよ」


露骨に苛立つ声。


だが、次の瞬間。

フィオの背後。


木の上から猿型が迫っている。


「フィオさん!!上!!」


妖精鳥が飛ぶ。


猿型の顔面へ突っ込む。


一瞬怯む。


フィオが反射的に槍を振るった。


「っ!!」


猿型が吹き飛ぶ。


だがその隙に今度はラグが孤立。


三体に囲まれる。


「ラグさん!!左下がって下さい!!」


「押し切る!!」


聞かない。


その直後、横から別個体。


「っぐ!?」


ラグの脇腹を爪が掠めた。


浅い。


だが、反応が遅れる。


そこへさらに追撃。


「危なっ――」


フィオが無理に割り込む。


槍で軌道を逸らす。


そのせいで。


今度はフィオが包囲へ近付く。


完全に悪循環だった。


「ナナさん!!フィオさん回復!!」


「は、はい!!」


治癒術。


その間にミレスが痺れを切らす。


「もう撃つぞ!!」


「待っ――」


風刃が放たれる。


猿型を数体切り裂く。


だが。


フィオの髪が僅かに切れた。


「っ!?」


「だから危ないって言ってんだろ!!」


ラグが怒鳴る。


「お前が前出るからだろ!!」


ミレスも怒鳴り返す。


戦闘中にも関わらず、互いへ苛立っている。


レオンは小さく息を吐いた。


見えている戦場が違い過ぎる。


ラグは、自分が押し切る戦いしか知らない。


ミレスは、火力を通す事しか見ていない。


フィオだけが、パーティの崩壊を防ごうとしている。


ナナは、その空気に飲まれて動けない。


だから誰も、“今崩れかけている場所”を見ていない。


その時、さらに後方で四羽目が新たな気配を捉えた。


「まだ来ます!!後方三!!」


「はぁ!?」


ラグが顔を歪める。


その瞬間、レオンが初めて少し強めの声を出した。



「一回下がって下さい!!」



全員が、

一瞬だけ止まる。


「ラグさんは中央!!」


「フィオさん左!!」


「ナナさんはその後ろから動かないで下さい!!」


「ミレスさん、撃つなら正面だけです!!」


矢継ぎ早の指示。


ラグが僅かに眉をひそめた。


だが従った。


その瞬間。


戦線が、

初めて形になる。


フィオが左を止める。

ラグが正面を受ける。

ナナが回復を通せる。


ミレスの風刃が、

正面から来た猿型だけを切り裂いた。


「……通った?」


ミレスが目を見開く。


初めて。


まともに火力が通った。


さらに、活性化。

妖精鳥の光がラグとフィオへ重なる。


「軽っ……!?」


ラグが猿型を弾き返す。


そこへ。


フィオの槍。


連携。


初めて、

噛み合った。


数分後。


最後の猿型を倒した頃には全員息を切らしていた。


だが。


昨日とは違った。


沈黙。


その中で。


ミレスがぽつりと呟く。


「……今の、何で上手くいったんだ?」


誰もすぐには答えなかった。


ただ。


全員、

薄々理解し始めていた。


レオン・アルバーンが居る時だけ。


このパーティは、

戦場として成立している事に。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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