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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

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88/143

88:綱渡りの戦線

本日もよろしくお願いします。

翌日。


灰爪との二度目の任務。


集合場所へ向かいながら、

レオンは小さく息を吐いた。


「……重いな」


空気が。


昨日の戦闘後、

表面上は収まった。


だが、根本的には何も解決していない。


ラグとミレスは互いに不満を抱えたまま。

フィオは疲弊。

ナナは委縮。


完全に悪循環へ入っている。


しかし、そういうパーティが少なくないことを、

レオンは知っていた。


⸻


ギルド前。


既に灰爪の面々は集まっていた。


「おはようございます」


レオンが声を掛ける。


返ってきたのは、

バラバラな反応だった。


ラグは軽く手を上げるだけ。


ミレスは露骨に不機嫌。


フィオだけが、

疲れた笑みを返した。


ナナは小さく会釈。


「今日の依頼は?」


レオンが聞く。


フィオが資料を開いた。


「洞窟付近に住み着いた猿型の群れの討伐です」


猿型。


狼型ほど統率は無い。


だが。


知能が高く、連携も取る。


そして何より、死角を狙う。


レオンは少しだけ考える。


今の灰爪とはかなり相性が悪い。


森へ入ってしばらく。


レオンは、

既に四羽目を飛ばしていた。


索敵。


周囲確認。


その時。


妖精鳥が、

違和感を伝えてくる。


「……右前方、木の上に居ます」


「は?」


ラグが顔を上げた瞬間、猿型が飛び降りてきた。


「チッ!!」


大剣一閃。


猿型を叩き落とす。


だが、それと同時に左と後方の木々が揺れる。


「囲まれてます!!」


レオンが声を飛ばした。


その瞬間、ラグが前へ出る。


「まとめて来い!!」


悪手だ。


猿型は正面から来ない。


木を使う。

跳ぶ。

散る。


フィオが慌てて動く。


「ラグ!!前出過ぎ!!」


その横でミレスは既に詠唱へ入っていた。


風刃の魔術。

それも広範囲型。


だが、位置が悪い。


「ミレスさん!!まだ撃たないで下さい!!」


「っ……またそれかよ」


露骨に苛立つ声。


だが、次の瞬間。

フィオの背後。


木の上から猿型が迫っている。


「フィオさん!!上!!」


妖精鳥が飛ぶ。


猿型の顔面へ突っ込む。


一瞬怯む。


フィオが反射的に槍を振るった。


「っ!!」


猿型が吹き飛ぶ。


だがその隙に今度はラグが孤立。


三体に囲まれる。


「ラグさん!!左下がって下さい!!」


「押し切る!!」


聞かない。


その直後、横から別個体。


「っぐ!?」


ラグの脇腹を爪が掠めた。


浅い。


だが、反応が遅れる。


そこへさらに追撃。


「危なっ――」


フィオが無理に割り込む。


槍で軌道を逸らす。


そのせいで。


今度はフィオが包囲へ近付く。


完全に悪循環だった。


「ナナさん!!フィオさん回復!!」


「は、はい!!」


治癒術。


その間にミレスが痺れを切らす。


「もう撃つぞ!!」


「待っ――」


風刃が放たれる。


猿型を数体切り裂く。


だが。


フィオの髪が僅かに切れた。


「っ!?」


「だから危ないって言ってんだろ!!」


ラグが怒鳴る。


「お前が前出るからだろ!!」


ミレスも怒鳴り返す。


戦闘中にも関わらず、互いへ苛立っている。


レオンは小さく息を吐いた。


見えている戦場が違い過ぎる。


ラグは、自分が押し切る戦いしか知らない。


ミレスは、火力を通す事しか見ていない。


フィオだけが、パーティの崩壊を防ごうとしている。


ナナは、その空気に飲まれて動けない。


だから誰も、“今崩れかけている場所”を見ていない。


その時、さらに後方で四羽目が新たな気配を捉えた。


「まだ来ます!!後方三!!」


「はぁ!?」


ラグが顔を歪める。


その瞬間、レオンが初めて少し強めの声を出した。


⸻


「一回下がって下さい!!」


⸻


全員が、

一瞬だけ止まる。


「ラグさんは中央!!」


「フィオさん左!!」


「ナナさんはその後ろから動かないで下さい!!」


「ミレスさん、撃つなら正面だけです!!」


矢継ぎ早の指示。


ラグが僅かに眉をひそめた。


だが従った。


その瞬間。


戦線が、

初めて形になる。


フィオが左を止める。

ラグが正面を受ける。

ナナが回復を通せる。


ミレスの風刃が、

正面から来た猿型だけを切り裂いた。


「……通った?」


ミレスが目を見開く。


初めて。


まともに火力が通った。


さらに、活性化。

妖精鳥の光がラグとフィオへ重なる。


「軽っ……!?」


ラグが猿型を弾き返す。


そこへ。


フィオの槍。


連携。


初めて、

噛み合った。


数分後。


最後の猿型を倒した頃には全員息を切らしていた。


だが。


昨日とは違った。


沈黙。


その中で。


ミレスがぽつりと呟く。


「……今の、何で上手くいったんだ?」


誰もすぐには答えなかった。


ただ。


全員、

薄々理解し始めていた。


レオン・アルバーンが居る時だけ。


このパーティは、

戦場として成立している事に。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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