表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
不完全な戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/135

87:別々の戦場

本日もよろしくお願いします。

昼過ぎ。


リスベル冒険者ギルド。


依頼掲示板を眺めていたレオンへ、

受付嬢が少し困ったような顔で近付いてきた。


「レオンさん、少しいいですか?」


「はい?」


珍しい声音だった。


普段の依頼紹介ではない。


どちらかと言えば相談に近い。

受付嬢が小さく周囲を確認してから口を開く。


「短期加入依頼なんですが……」


「短期加入?」


「はい。D級パーティです」


レオンが少し首を傾げる。


野良参加自体は珍しくない。


だが、ギルド側から直接頼まれるのは少し珍しかった。


「何か問題でも?」


受付嬢が、

僅かに言葉を濁した。


「……失敗率が高いんです」


「討伐能力自体は低くありません。ただ、その……」


「連携が上手くいっていなくて」


レオンは静かに聞く。


「負傷も多いですし、最近は任務達成率もかなり悪化しています」


「このままだと、昇格推薦も中止になりそうで……」


そこで、

受付嬢が小さく頭を下げた。


「レオンさん、野良慣れしてますよね?」


「まぁ……はい」


「だから、一度だけでも入ってもらえないかと」


レオンは少し考える。


本来なら、

他所のパーティ問題へ深く踏み込みたくはない。


野良は、

あくまで一時的な関係だ。


だが。


「怪我人、多いんですか?」


「……はい」


その返答で、

レオンは小さく息を吐いた。


「分かりました」


受付嬢の表情が少し明るくなる。


「ありがとうございます!」



数分後。


ギルドの一角。


そこに居た四人組を見た瞬間、

レオンは何となく理解した。


空気が悪い。



「……で?」


大剣を背負った男が、

露骨に眉を寄せる。


「後衛増やしてどうすんだよ」


ラグ。


灰爪の前衛。


体格が良い。

威圧感もある。


だが、

言葉に棘があった。


「ラグ、そういう言い方やめて」


槍を持った女性が小さく制止する。


フィオ。


中衛寄りの槍士。


その疲れた顔だけで、

苦労人なのが分かった。


「索敵役だろ?」


今度はローブ姿の男。


風魔術師、

ミレス。


「でもシーフじゃないんだよな?」


疑うような視線。


その後ろで、

治癒術師らしい少女が肩を縮こませていた。


ナナ。


誰の顔色も窺っている。


レオンは、

四人を静かに見回した。


前衛。

中衛。

後衛。

治癒。


構成自体は悪くない。


だが。


“役割”が噛み合っていない。


そんな感覚が既にあった。


「レオン・アルバーンです」


軽く頭を下げる。


「今回はよろしくお願いします」


フィオだけが、

申し訳なさそうに頭を下げ返した。



今回の依頼は、

森周辺に出没した狼型討伐。


本来なら、

D級でも十分対処可能な任務だ。


だが。


森へ入って数分。


レオンは、

既に嫌な予感を覚えていた。


四羽目を上空へ飛ばす。


索敵。

視界確保。

その直後。


「前方二!!」


レオンが声を上げた瞬間。


ラグが飛び出した。


「俺が前抑える!!」


速い。


だが、前へ出過ぎだ。


「ラグさん!!」


フィオが慌てて追う。


その時点で陣形が崩れた。


さらに後方。


ミレスが既に詠唱を始めている。


風属性中級魔術。


だが。


「ミレスさん!!今撃つと巻き込みます!!」


「っ!?」


詠唱が止まる。


直後。


ラグの横を狼型が抜けた。


「チッ!!」


ラグが無理に剣を振るう。


体勢が崩れる。


その隙。


左側の茂み。


別個体。


「フィオさん!!左!!」


レオンの妖精鳥が飛ぶ。


羽ばたき。


狼型の顔面を掠めた。


一瞬の怯み。


フィオが槍で軌道を逸らす。


だが。


今度は後方。


ナナが完全に反応遅れていた。


「えっ、あ……!」


誰を回復するべきか。


判断が遅い。


ラグは前へ出過ぎている。


フィオは孤立気味。


ミレスは詠唱中断。


完全に噛み合っていなかった。


レオンが即座に声を飛ばす。


「ナナさん!!フィオさん優先!!」


「は、はい!!」


治癒術発動。


その間にレオンの妖精鳥がラグの周囲を旋回した。


活性化。


「っ!?」


ラグの身体が僅かに軽くなる。


そこへ。


「右から来ます!!」


ラグが咄嗟に剣を振るう。


狼型を弾いた。


さらに。


「ミレスさん!!今なら撃てます!!」


「……っ!」


風刃。


狼型の胴を切り裂く。


ようやく。


辛うじて。


戦線が繋がった。



数分後。


狼型を討伐し終えた頃には、

全員かなり消耗していた。


だが。


空気は悪いままだった。


「火力足りねぇな」


ラグが舌打ちする。


するとミレスが即座に反応した。


「前出過ぎなんですよ」


「あぁ?」


「巻き込みそうだったんです」


「撃ちゃよかっただろ」


「は?」


空気が険悪になる。


フィオが慌てて間へ入った。


「ちょ、ちょっと落ち着いて――」


ナナは完全に萎縮している。


その横で。


レオンだけが、

静かに戦場を思い返していた。


問題なのは、

実力不足じゃない。


全員戦えている。


だが。


見ている戦場が違う。


ラグは自分が押し切る事しか考えていない。


ミレスは火力を通す事しか考えていない。


フィオだけが崩れた場所を埋め続けている。


ナナは誰に合わせればいいか決め切れていない。


だから噛み合わない。


ただ、それだけだった。


そして。


レオンは、そういう戦場を知り過ぎていた。



帰還途中。


隣へ並んできたフィオが、

小さく頭を下げる。


「……助かりました」


レオンは少し困ったように笑った。


「いえ。野良だと、よくあるので」


フィオが、

ぴたりと足を止める。


“よくある”。


こんな滅茶苦茶な連携崩壊が。


レオン・アルバーンは、

一体どんな環境で戦ってきたのか。


そんな疑問が、

初めて浮かび始めていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ