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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
召喚士とは

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84/135

84:本来の召喚士

本日もよろしくお願いします。

熊型の討伐を終えた後も、

レオン達はすぐには帰還しなかった。


「近くに巣があるかもしれないな」


ガレスが周囲を警戒しながら言う。


「小型も居たからな」


バルトが解体用ナイフで熊型の掌を切り取る。

熊型を討伐した証明部位だ。


「まだ残ってたら洒落にならねぇ」


その言葉に、レオンも頷いた。


熊型は、狼型ほど広範囲を動き回らない。


だからこそ。


小型が居たなら近くに巣がある可能性が高い。


「レオン、索敵頼めるか」


「はい」


レオンが上空を見上げる。


四羽目。


高く飛んでいた妖精鳥が、静かに旋回した。


そのままレオンは歩き始める。


普通に。

何事もないように。


「……」


セレナがその横顔を見る。


おかしい。

戦闘中だけじゃない。

索敵をしながら。

召喚獣を使役しながら。

普通に会話している。


歩いている。

周囲を警戒している。


普通の召喚士なら、召喚獣の制御にもっと集中する。


それが低位の妖精鳥であったとしてもだ。


なのに、レオンにはそういう様子が無い。


「……何か分かりますか?」


セレナが探るように聞いた。


レオンは、

少しだけ上を見て答える。


「この先、少し開けてます。あと、左側に倒木がありますね」


「……」


セレナが言葉を失う。


見えているのか。


完全に。


それも、妖精鳥越しに。


普通、そこまで細かく情報を拾えない。


まして、長時間の使役。


「……疲れないんですか?」


「え?」


「妖精鳥の制御です」


レオンが少しだけ考える。


「慣れました」


「慣れた……?」


セレナが、思わず額を押さえる。


「妖精鳥って、本来は小規模な補助向けなんです」


「索敵用の召喚獣じゃありません」


レオンが少し首を傾げた。


「でも、飛ばせますし」


「魔力で繋がってるので、何を伝えたいかくらいは、何となく分かりますよ?」


セレナが固まる。


それ自体は間違っていない。


長く契約した召喚獣なら。

•この敵は苦手

•この属性は嫌がる

•危険を感じている


その程度の感覚共有は、確かに存在する。


だが、

見えている景色。

位置情報。

周囲の地形。


そこまで詳細に把握する事は、普通はできない。


まして。


召喚獣は、

常時出し続ける存在じゃない。


高位召喚なら尚更、魔力消費が重い。

必要な瞬間だけ呼び出し、戦場を破壊する。


それが、

本来の召喚士だ。


なのにレオンは、妖精鳥を常時展開している。


しかも、四羽同時に。


「……いや、それ“何となく”ってレベルの話では……」


セレナが頭を抱える。


その横でガレスとバルトは、

揃ってぽかんとしていた。


「……つまり?」


「セレナは火力担当で、

レオンは索敵とか支援するタイプってだけじゃねぇのか?」


バルトの言葉にセレナが勢いよく振り返る。


「そんなタイプ聞いた事ありません!!」


「召喚士は、基本的に火力職なんです!」


「サラマンダーとか、イフリートとか、高位召喚獣で戦場を焼くのが本来の形で――」


そこでセレナが言葉を止める。


レオンが、本気で不思議そうな顔をしていたからだ。


「……え、じゃあ妖精鳥って何に使うんですか?」


「補助です!!主役じゃありません!!

魔力が切れかけている時とかに使うくらいのものなんです!!」


レオン本人だけが、

本気で分かっていない顔だった。



その後、森の追加探索は驚くほど安全に進んだ。


レオンが、事前に危険を察知する。


死角。

獣道。

倒木の裏。


全部、先回りするように共有される。


何度か狼型の群れは索敵に引っかかったものの、

初めの会敵以降、熊型とは遭遇しなかった。


巣らしき場所も無い。


恐らく今回の群れは、

森の奥から流れてきた個体だろう。


「……妙だな」


ガレスが呟く。


「やっぱり、この辺で熊型が群れるのは変だ」


レオンも、少しだけ眉を寄せた。


だが今は、

原因を追う余裕は無い。


まずは帰還して、情報を持ち帰る。


それが今やるべき事だ。



夕方。


リスベルへ帰還し、ギルドで報告を終える。


討伐証明の確認。


素材提出。

現地で集めた情報の提出。


依頼完了。


受付嬢が、少し驚いたように目を丸くした。


「熊型四体……うち小型が一体ですか?」


「しかも、巣が見当たらない......?」


「周辺はかなり探し回った。他に居ないのは間違いない」


ガレスがレオンを見る。


レオンは少し困ったように笑った。


そうして報告を終えた。


「よし」


ガレスが軽く手を叩く。


「飯行くぞ」


「お、いいねぇ」


バルトが笑う。


「レオンも来い」


「今日は流石に助かったからな」


レオンは少し迷った後。



「……じゃあ、お言葉に甘えて」


頷いた。



酒場。


肉の焼ける匂い。

騒がしい声。

冒険者達の笑い声。


そんな中、セレナだけは妙に真剣な顔をしていた。


「……あの」


レオンが顔を上げる。


「はい?」


「本当に、妖精鳥だけなんですか?」


「え?」


「他の召喚獣は?」


レオンが、少しだけ視線を逸らす。


「昔、一応試しましたけど、契約できませんでしたね」


セレナが、完全に固まった。


召喚士。


それは、

魔力を対価として召喚獣へ力を振るわせる職だ。


本命となるのは、

高火力召喚。


セレナが契約しているのは、

サラマンダーと切札のイフリート。


どちらも高い攻撃力を持つ。

広域殲滅や一点突破など、

戦場を破壊する力を振るうこと。


それこそが、

本来の召喚士。


妖精鳥のような補助型は、

あくまで補佐。


魔力切れ後の支援。

最低限の補助。


主軸に据える存在ではない。


だからこそ、

妖精鳥だけで戦い続けるレオン・アルバーンは、

召喚士として異端だった。


「……変な召喚士」


ぽつりと、セレナが呟く。


レオンは少し困ったように笑った。


だが、その時点ではまだ。


セレナ自身も気付いていなかった。


レオンの異常性が、

単なる妖精鳥の使い方だけではない事に。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この世界の召喚士は、

基本的に火力を求められる職業です。

魔力を対価に、

人の身では振るうことのできない規模の魔術を行使する。

それが、本来の召喚士とされています。


また、召喚術を扱うには、

個々人の適性がかなり重視されます。

例えば、黒狼の牙のゼインは、

雷属性の魔力自体は持っています。

しかし、本人の気質的に、

召喚獣と契約することができません。


この“気質”というのは、

才能や資質のようなものだと思っていただければ分かりやすいかと思います。


続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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