83:異端召喚士
本日もよろしくお願いします。
熊型の咆哮が森へ響く。
爆炎。
熱風。
焦げた毛皮の臭いが広がった。
爆炎の発生に反応し、二体目の熊型は木の影に下がった。
炎を受けた一体目はまだ倒れない。
「チッ、硬ぇ……!」
バルトが地面を蹴る。
魔力を纏った拳を熊型の脇腹へ叩き込む。
鈍い衝撃。
だが、熊型はそのまま腕を振るった。
「っ!」
バルトが咄嗟に躱わす。
直後、隣にあった巨木が、横薙ぎに吹き飛んだ。
「まともに食らったら終わりだな……!」
ガレスが低く呟く。
中盾を斜めに構え直す。
その時、レオンが即座に声を飛ばした。
「ガレスさん!右脚、少し引きずってます!」
ガレスの目が細まる。
見れば、先程の炎で、
右脚の毛皮が焼けていた。
「バルト!!右側へ寄せるぞ!!」
「了解!!」
二人が動く。
ガレスが正面から圧を掛ける。
受け切らない。
押し返す。
そこへ、バルトが横から踏み込んだ。
魔力強化をした拳撃。
熊型の重心が、僅かに崩れる。
その瞬間。
「サラマンダー!!」
セレナの炎。
赤熱した火炎弾が、傷付いた脚へ直撃した。
爆ぜる。
熊型が咆哮する。
「今です!!」
レオンの声に反応してガレスが踏み込む。
片手剣。
狙うのは首じゃない。
脚。
腱を断つ。
熊型の身体が、大きく傾いた。
「おらぁぁ!!」
バルトの拳が、側頭部へ叩き込まれる。
衝撃。
熊型が地面へ倒れ込んだ。
「セレナ!!」
「分かってます!!」
炎。
今度は、
巨大な火柱だった。
サラマンダーの口から放たれた炎が、熊型を呑み込む。
絶叫。
数秒後。
熊型は動かなくなった。
「……一体目撃破!」
ガレスが息を吐く。
だが、レオンはまだ周囲を見ていた。
その視線は、時折上空へ向く。
四羽目。
森を俯瞰する妖精鳥。
その動きが、僅かに変わった。
「さっき下がった一体ともう一体が来ます!!」
「右前方と左奥!!」
「早ぇな!?」
バルトが顔を歪める。
まだ、
奥の一頭は気配すら見えない。
だが直後、木々が揺れた。
右前方の影から一体、
さらにその奥から一体が現れる。
「マジかよ……」
ガレスが盾を斜めに構える。
同時に、セレナが、思わずレオンを見る。
おかしい。
索敵精度が異常だ。
しかも、
見えているタイミングが早すぎる。
普通、シーフであっても、森ではここまで正確に索敵できない。
まして妖精鳥は、本来小規模な補助を行う召喚獣だ。
索敵向きの召喚じゃない。
なのに、レオンだけが、
戦場全体を把握している。
「ガレスさん!!左は木の間隔が狭いです!」
「右を押さえてください!!」
「オーケーだ!!」
ガレスが即座に動く。
左奥の熊型。
木々が邪魔をして、突進しづらい。
そこへ。
バルト。
「こっち来いデカブツ!!」
魔力を纏った拳を叩き込む。
熊型が怒り狂ったようにバルトへ向きを変えた。
その間に。
ガレスがもう一体を押さえる。
中盾。
剣。
位置取り。
だが、徐々に押されていた。
「っぐ……!」
重い。
熊型は、狼型とは違う。
純粋な質量と力で、押し潰してくる。
その瞬間。
レオンの妖精鳥がガレスの肩付近を旋回した。
淡い光。
活性化。
「……軽い!?」
ガレスが目を見開く。
身体が動く。
踏ん張れる。
押し返せる。
そこへ、レオンの声。
「セレナさん!!右から来ます!!」
「っ!!」
直後。
茂みから小型の熊型が飛び出した。
まだ若い個体。
だが、人間を押し倒すには十分なサイズ。
セレナが、
咄嗟に後方へ飛び退く。
「サラマンダー!!」
炎弾。
爆炎。
小型熊型が吹き飛ぶ。
「今です!!」
ガレスが、活性化で増した膂力を振るい、
熊型を受け流し、巨木へ激突させた。
脳震盪だろう、勢いよく激突したせいで動きが止まっている。
一体の動きが止まっている間に、
ガレスがもう一体の腕を切り上げた。
その一瞬の隙に、
バルトが拳に魔力を集中させ、振り抜く。
熊型の脳天に叩き込まれる。
轟音。
大きく体勢を崩した。
そして、そこへサラマンダーの炎が降り注ぐ。
爆炎。
熱風。
熊型が、
地面へ崩れ落ちた。
残るは一体。
窮地に陥りかけながらも、
前線は遂に崩れなかった。
レオンの索敵。
ガレスとバルトの足止め。
そこへ、セレナの炎が叩き込まれる。
噛み合い始めた連携が、熊型を押し返していく。
数分後。
最後の熊型が、炎の中で倒れ伏した。
静寂。
荒い呼吸だけが、
森へ残った。
「……終わったか」
ガレスが、剣を下ろす。
バルトは膝に手をついて息を整えている。
「疲れた……」
セレナも、荒く息を吐いている。
だが、その視線だけは、レオンへ向いていた。
妖精鳥による支援、活性化はまだいい。
的確な指示は経験によるものだろう。
しかし、“見えていないはずの位置”まで把握する索敵能力。
セレナは、
召喚士として理解していた。
あれは普通じゃない。
そして、レオン本人だけが、それを理解していない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の熊型の位置関係補足です。
1:最初に接敵した個体。
サラマンダーの炎で右脚を負傷し、最後は集中攻撃で撃破。
2:前話で突っ込んできた個体。
サラマンダーの炎を見て一度木の後ろへ退避。その後、バルトが引き付けた個体。
3:一体目撃破後、奥から現れた個体。
ガレスが受け流し、巨木へ激突させた個体。
4:小型個体。
セレナの死角から接近するも、事前にレオンの索敵へ引っかかり、サラマンダーの炎で迎撃された個体。
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