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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
召喚士とは

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82/143

82:熊型討伐依頼

本日もよろしくお願いします。

リスベルを出発してから、

数時間。


森の空気は少しずつ重くなっていた。


「……静かですね」


レオンが小さく呟く。


その肩には三羽の妖精鳥。


そして。


もう一羽だけは、既に高く上空へ飛ばしていた。


木々より遥か上。


森全体を見渡すように、静かに旋回している。


セレナが、その姿を見上げた。


「……あの子だけ、随分高く飛ばすんですね」


「え?」


レオンも空を見上げる。


「あぁ、あれは索敵役なので」


自然な返答。


だが、セレナは少しだけ違和感を覚えていた。


妖精鳥は、本来索敵向きじゃない。


ましてや、長時間あの高度を維持するなど。


普通は、魔力消費が重い。


だがレオンは、まるで当たり前のように扱っている。


⸻


ガレスが周囲を見渡した。


「村の連中も、かなり警戒してたらしい」


「畑仕事も止めてるって話だったな」


バルトが肩を鳴らす。


「熊型なんざ、村人じゃどうにもならねぇよ」


その言葉にレオンも頷いた。


熊型は、狼型や猿型とは違う。

群れの規模は小さい。

だが、一体一体が重い。


力。

耐久。

突進力。


まともに受ければ、

どれだけ鍛えている人間でも骨ごと持っていかれる。


しかも、この辺りの森は、そこまで魔境に近くない。


レオンが、

ふと周囲を見る。


「……この辺りって、熊型が出る場所なんですか?」


ガレスが眉を寄せた。


「いや、珍しいな」


「もっと奥なら分かるんだが」


バルトが鼻を鳴らす。


「餌でも減ったんじゃねぇの?」


その横で、セレナが、少し考えるように森を見る。


「……それにしても。浅すぎる気がしますが...」


短い沈黙。


だが、今は原因究明が目的じゃない。


まずは討伐。


ガレスが軽く手を叩いた。


「行くぞ」


「レオン、周囲の警戒を頼む」


「はい」


レオンの肩から、二羽目の妖精鳥が飛び立つ。


セレナが、その動きを目で追った。


「二羽……」


小さな呟き。


普通、妖精鳥は補助用。

長時間維持する召喚じゃない。


しかも。


二羽同時に飛ばす。


それだけでも、少し珍しい。


だが、レオンは、

当たり前のように扱っている。


⸻


さらに森を進む。


その途中で、レオンがふと足を止めた。


同時に。


上空を飛ぶ妖精鳥が、不自然に旋回する。


「……前方、木の裏に一体います」


全員の空気が変わる。


ガレスが即座に盾を構えた。


「距離は?」


「三十歩くらいです」


ガレスが頷く。


「バルト、右から回れるか」


「任せろ」


低く姿勢を落とす。


セレナも短杖を構えた。


「サラマンダー、呼びます」


赤い魔法陣。


そこから、炎を纏った蜥蜴型の召喚獣が現れる。


熱気。

空気が揺らぐ。


レオンが、少し目を細めた。


召喚獣。


しかも、高火力型。


自分とは、全く違う召喚。


その瞬間、木々を揺らしながら、巨大な影が飛び出した。


熊型。

黒い毛皮。

人間より遥かに大きい体。


咆哮。


地面が震える。


「来るぞ!!」


ガレスが前へ出る。


真正面からは受けない。

中盾を斜めに構える。


熊型の腕が振るわれる。


凄まじい衝撃。


だがガレスは、完全には止めない。


流す。

体勢を僅かに逸らす。


その瞬間、横からバルトが踏み込んだ。


「おらぁ!!」


魔力を纏った拳。

鈍い衝撃音。


熊型の身体が、僅かによろめく。


そこへサラマンダーが吐き出した炎弾が着弾。


熊型の肩を焼いた。


咆哮。


だが、止まらない。


「硬ぇな……!」


バルトが舌打ちする。


熊型は狼型より遥かに頑丈だ。


その時、レオンが声を上げた。


⸻


「左からもう一体!!」


セレナが目を見開く。


まだ見えていない。


だがその直後。


木を薙ぎ倒しながら、二体目が突っ込んできた。


「っ!?」


ガレスが即座に動く。


だが、二方向から同時に来ると、止められない。


その瞬間、レオンの妖精鳥が、二体目の顔面へ飛び込んだ。


羽ばたき、視界を塞ぐ。


熊型の動きが、僅かに鈍る。


「助かる!!」


ガレスが盾で軌道を逸らした。


そこへ、バルト。


「下がれぇ!!」


魔力強化した拳が、熊型の側頭部へ叩き込まれる。


さらに、セレナ。


「焼き払え!!」


サラマンダーの炎。


爆炎。

熱風。

森へ火が走る。


熊型が、苦悶の咆哮を上げた。


その間にも、レオンは周囲を見続けていた。


妖精鳥。

木々。

死角。

逃走経路。


そして上空。


四羽目の妖精鳥が、森全体を俯瞰している。


「右奥、もう一体います!!」


「まだ居んのかよ!?」


バルトが顔を歪める。


だが、レオンの警告がある。


だから、不意を打たれない。


ガレスが、小さく息を吐いた。


「……本当に便利だな」


レオンは少し困ったように笑う。


その横で、セレナだけが、レオンを見ていた。


おかしい。

索敵だけじゃない。


位置把握。

接敵予測。

警告速度。


全部が、異様に正確だった。


しかも。


妖精鳥は、ただ上空を飛んでいるだけに見える。


なのに、まるで、森全体を見ているように動く。


セレナが僅かに眉を寄せた。


「……何なんですか、あの人」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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