80:昇格祝い
本日もよろしくお願いします。
「――だからよぉ!!」
酒場の二階。
貸切状態の一室で大声が響く。
「レオンがC級とか、感慨深ぇって話だ!!」
「声が大きいですよガドさん……」
レオンが、困ったように肩を縮める。
机の上には空いた酒瓶。
料理の皿。
そして、完全に出来上がった大人達。
「まぁ実際、あのレオンがなぁ」
リオ・ヴァレットが酒を片手に笑う。
「依頼中ずっと自信なさそうにしてたもんなぁ」
「やめてくださいよ……」
「いやでも本当によ」
ガドが、豪快に笑った。
「周りに気ぃばっか使って一歩引いてた奴が今じゃC級だぞ?」
「そこまでじゃなかったですよ!?」
「いや、割とそんなイメージあるぞ」
カイルが、普通に追撃した。
「カイルまで!?」
笑い声。
普段より賑やかな空気。
C級昇格祝い。
名目はそうだった。
だが実際は、
“よくここまで来たな”
そんな空気が強い。
そして、その騒ぎの中心には、お調子者のミナが居た。
⸻
「はいレオン!飲め飲めー!」
「いや、もうかなり飲んで――」
「C級昇格祝いだよ!?」
「今日は主役なんだから!!」
既にだいぶ酔っている。
顔が赤く、テンションも高い。
そして。
距離が近い。
パーソナルスペースがバグっている。
「ちょっ、ミナさん近――」
「んー?」
濃い酒の匂いが香る。
レオンが、露骨に視線を逸らす。
その様子を見て、リオが吹き出した。
⸻
「お前、酒も女も耐性無さ過ぎだろ」
「うるさいです……」
「ははっ!!初心だなぁ坊主!」
ガドが机を叩いて笑う。
その横で、カイルは呆れたように呟く。
「元気だよなぁ」
「カイルももっと飲みなよー!」
「いや、俺ももう十分――」
「うりゃ!!」
ミナが勢い良く肩を組む。
「うおっ」
そのまま。
ぐいぐい酒を注ぐ。
「飲め飲めー!!」
「待て、お前酔いすぎだって――」
「今日はめでたい日なんだから!!」
「いやお前主役じゃねえからな!?」
完全に酔っ払いだった。
だが誰も強くは止めない。
むしろ全員、楽しそうだった。
⸻
そして数時間後。
「…………」
レオンは、机へ突っ伏していた。
完全撃沈。
「弱いなぁ...」
リオが笑う。
「本当に弱いなこいつ」
「……潰れるの早かったな」
カイルも少し呆れていた。
その横。
ミナも机へ突っ伏していた。
「んへへぇ……」
「お前も潰れてんじゃねぇか」
ガドが笑う。
静かに夜は更けていった。
⸻
翌朝。
「…………ぅ」
眩しい。
頭が痛い。
身体が重い。
ゆっくり目を開ける。
見慣れた天井。
宿の部屋だった。
「……あれ」
どうやって帰った?
記憶が曖昧だ。
身体を起こそうとして。
「うっ……」
頭痛。
レオンが顔をしかめる。
その時。
窓際から小さな羽音が聞こえた。
ふわり。
妖精鳥。
一羽がレオンの肩へ降りる。
「……おはよう」
小さく笑う。
妖精鳥が頬を軽く突いた。
まるで。
「飲み過ぎ」
とでも言いたげだった。
「反省してます……」
呟く。
すると、別の妖精鳥が、
机の上の紙を咥えて飛んできた。
「ん?」
受け取る。
そこには。
乱雑な字。
『先に帰る。
二日酔いなら水飲め』
カイルだった。
レオンが少し笑う。
その紙の端には、
『また飲もうね!!』
やたら文字が大きい。
ミナだ。
「……絶対また潰される」
苦笑。
窓の外では、街がいつも通り動き始めている。
冒険者達の声。
商人。
荷車。
いつもの朝。
だが。
少しだけ違った。
C級冒険者。
レオン・アルバーン。
昨日までは遠く感じていた肩書き。
だが今、それが、
自分のものになっていた。
レオンは、静かに息を吐く。
「……頑張らないとな」
まだ。
足りないものはある。
だが、確かに、
前へ進んでいる実感があった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ミナは騒ぎたいだけです。
すぐ潰れるけどすぐ回復するタイプの酒飲みです。
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