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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
再:C級昇格試験 

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79/85

79:幕間:監督者達

本日もよろしくお願いします。

森の外周。


試験場全体を見渡せる高台で、

数人の監督者達が受験者を監視していた。


「第五班、接敵」


「数は?」


「狼型二。問題無し」


淡々とした報告。


監督者達は、各班へ持たせた簡易探知具と監視用魔術を用いて戦況を確認している。


危険と判断すれば、即座に救護班を向かわせる。


今回のC級昇格試験。


求められているのは、

単純な戦闘能力ではない。


むしろ重要なのは、

不完全な状況で、どれだけ戦場を成立させられるか。


それだった。


「第三班は……」


一人の監督者が、資料へ視線を落とす。


「盾役無しか」


「ええ、意図的です」


別の監督者が答えた。


「前衛一枚、しかも軽戦士タイプ。それと後衛寄り三枚」


「典型的な崩れやすい構成ですね」


だが、それこそが試験。


現場では、常に理想的な編成を組めるわけではない。

固定のパーティを組んでいたとしても、綻びは生じる。


不足した役割。

噛み合わない連携。

経験差。


そういった歪な状況をどう扱うか。


そこにこそ、冒険者としての地力が出る。


監督者は資料を見る。


「後衛のセスというのは歴が長い。安定している。任務達成率も高い」


「前衛の軽戦士は、討伐依頼ばかり受けているようだ。しかも歴が浅い」


「炎魔術師、普段のパーティ編成を見るに、典型的な前衛で固めて後ろから打つタイプだな。威力は高いようだが」


「この召喚士は?」


「レオン・アルバーン」


資料を捲る。


その履歴に、監督者が僅かに眉をひそめた。


護衛任務。

採取。

輸送。

討伐。

緊急支援。

防衛任務。


統一感が無い。


まるで、

焦って片っ端から経験を積んだような経歴だった。


「……任務達成数が妙に多いな」


その時。


後方から小さく笑う声がした。


「まぁ、色々やってましたからね、あいつ」


振り返る。


そこに居たのは、C級冒険者。


リオ・ヴァレット。


今回、救護班として招集されていた冒険者の一人だった。


「知り合いか?」


「ええ」


リオが高台の先へ視線を向ける。


「レオンが受けるって聞いたんで、

リハビリ後の慣らしついでに来ました」


肩を軽く回す。


以前負った怪我は既に完治している。


だが、実戦勘を戻すには、丁度良かった。


「第三班は厳しいぞ」


監督者が言う。


「盾役無し。前衛も独断型だ」


「普通なら崩れる」


リオは、少しだけ笑った。


「まぁ、普通ならそうですね」


その返答に、監督者が眉を上げる。


まるで、


“普通じゃない”


と言いたげだった。



監視用魔術越しに、

第三班の戦闘が映る。


前へ出るのは、

曲剣使いの少年。


ノア・ヴェイン。


速い。

戦闘勘も鋭い。


だが。


「……視野が狭いな」


監督者が呟く。


「突っ込み過ぎだ」


その直後。

狼型の牙が、ノアの肩口を裂く。


「……崩れるか?」


だが。

そこで。


召喚士が、声を荒げた。



「ノアさん!!」



監督者達が、

僅かに目を見開く。


召喚士。

目立たない後衛が、前衛へ怒鳴った。


だが。


その内容は、ただの焦りではない。


「今の、なんで正面で受けたんですか!!」


「ノアさんの動きなら、流せたでしょう!!」


何故危険だったのか。

何故被弾したのか。

それを理解した上での叱責。


監督者の一人が目を細めた。


「……戦場理解度が高いな」


その横で。


リオが小さく笑う。


「前は、そこまで見えてなかったんですけどね」


少し前のレオンなら。

自分が生き残るだけで精一杯だっただろう。


だが今は違う。


他人の動きを見て、理解している。


しかも。


修正しようとしている。


それは、単純な支援役ではない。


戦場そのものを見ている目だった。



さらに時間が経つ。


大型の狼型魔獣。


その出現に、高台の空気が変わる。


「……大型か」


「第三班、かなり危ないな」


監督者の一人が、救護班へ視線を向ける。


「準備しろ」


だが、リオだけは、

前を見たままだった。


「……いや、まだ大丈夫です」


「何?」


リオは、

戦場を見ていた。


レオンが、

まだ崩れていない。


視線。

立ち位置。

指示。


全部が、まだ生きている。


だから。


まだ終わってない。


大型が、

レオンへ迫る。


監督者が眉をひそめた。


「召喚士が前へ出たぞ」


普通なら悪手。


だが、レオンは真正面では受けない。


小剣で流し、逸らす。

時間を作る。


そして。


妖精鳥。


四羽目。


「……あれは」


監督者が、僅かに息を呑む。


資料にあった視界共有。


しかも、戦闘中に使っている。


リオが、

静かに笑った。


「上手くなったな……」


以前なら、立っているだけで、

負荷に苦しんでいた。


それが今。


近接戦闘をしながら、運用している。


成長速度が異常だった。


さらに。


レオンが、炎魔術師へ叫ぶ。



「視界を塞げる魔術はありますか!?」



監督者達が、僅かに眉を動かす。


火力ではなく、視界妨害。


一瞬を作るための選択。


しかも。


炎魔術師が即答する。



「できます!!」



リオが、小さく息を吐いた。


「噛み合ってきたな」



ノア。

セス。

アイリス。


最初は、

バラバラだった。


だが今、レオンを中心に、

一つの戦場として繋がり始めている。



五秒。



たったそれだけの時間。


だが、その五秒を、

第三班は全員で繋いだ。


そして。


大型の首が、地面へ落ちる。


静まり返る森。


荒く息を吐く第三班を見ながら、

リオ・ヴァレットは小さく笑った。


「……もう、助けに入る必要も無さそうだな」


少し前までは、

守られる側だった青年。


その背中を見ながら、

リオは、口元を吊り上げる。



「……次、一緒に組む時が楽しみだ」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は幕間です。

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