78:帰還
本日もよろしくお願いします。
大型の狼型魔獣の群れとの戦闘を終え。
森にはようやく静寂が戻っていた。
「……っつぅ」
ノアが肩口を押さえながら顔をしかめる。
アイリスも太腿へ布を巻いていた。
「傷、思ったより深いですね……」
「無茶したからな」
セスが苦笑混じりに返す。
「うるせぇ」
だが、言い返す声には、
先程までの刺々しさが無かった。
レオンは、妖精鳥を呼び寄せる。
淡い光。
小さな羽音。
妖精鳥達が、
それぞれの周囲を旋回した。
「傷を治すほどじゃないですけど」
「少しだけ、身体を動かしやすくします」
活性化。
肉体疲労を軽減し、
動きを補助するレオンの支援。
ノアが、少し目を見開く。
「……便利だなお前」
「無理は禁物です」
レオンは苦笑しながら答えた。
「だから、早めに戻りましょう」
セスとアイリスが、救護者人形を担ぎ上げる。
「ほらよっと」
「うわ、見た目より重っ……」
アイリスが少し顔をしかめた。
「試験だからなぁ」
セスが笑う。
その横でレオンは、
再び妖精鳥を空へ飛ばしていた。
四羽目の視界共有。
森の上空。
退路確認。
狼型の群れの位置。
気配。
進行方向。
危険地帯。
数秒で把握し、すぐ解除する。
以前より、
遥かに負荷が少ない。
「……右側は避けましょう」
「群れがいます」
「左から回れば、会敵減らせます」
ノアが少し感心したように呟く。
「本当に見えてんのかそれ」
「まぁ、全部は無理ですけど」
レオンが、小さく笑った。
⸻
帰路。
一度だけ狼型魔獣と会敵した。
だが、もう最初のような乱れは無い。
「ノアさん左!」
「分かってる!!」
曲剣が閃く。
セスの矢。
アイリスの炎。
レオンの支援。
短時間で狼型を制圧する。
戦闘終了。
ノアが息を吐いた。
「……なんか、普通に戦えてんな俺達」
「最初が酷すぎただけだろ」
セスが即座に返す。
「うるせぇ」
だが、誰も否定しなかった。
噛み合っている。
全員がそれを感じていた。
⸻
そして。
森を抜け、試験場。
待機していた試験官達がレオン達を見た。
「……早いな」
第3班帰還。
しかも全班の中で、
最初だった。
ノアが少し口元を吊り上げる。
「よっしゃ」
「まだ結果出てませんよ」
レオンが苦笑した。
そこから、さらに時間が経つ。
第2班帰還。
全員負傷。
第1班。
一人を背負っている。
さらに。
⸻
第5班。
ギルド側が待機させていた、
上位冒険者に肩を担がれながら戻ってきた。
空気が重くなる。
試験官が静かに告げた。
「第五班は失格」
「救援対象となった時点で試験終了だ」
悔しそうな顔。
唇を噛む受験者。
さらに。
第4班も同様だった。
こちらも、
上位冒険者による介入。
その場で不合格が告げられる。
五班中。
完遂できたのは、三班だけ。
静まり返る試験場。
その中で、試験官が合格発表を始めた。
「まず、第3班」
空気が張る。
「セス・ハウル......合格」
セスが軽く肩を竦めた。
「ま、そりゃそうか」
「レオン・アルバーン......合格」
レオンが僅かに目を見開く。
だが、静かに頭を下げた。
「……はい」
試験官はさらに続ける。
「ノア・ヴェイン......条件付き合格」
ノアが眉をひそめる。
「アイリス・フォルテ......同じく条件付き合格」
アイリスが、静かに息を吐いた。
試験官が説明する。
「実力自体は、既にC級相当だが、経験不足が目立つ」
「数回の指定任務達成後、正式昇格となる」
以前。
鉱山村の任務の時のカイルが受けていたものと同じ扱いだった。
ノアは舌打ちしかけ、そこで止めた。
文句は言えない。
自分でも理解していたからだ。
アイリスも静かに頷く。
悔しさはある。
だが、納得もあった。
その横で、セスがニヤニヤしながらレオンを見た。
「おめでとうございます、C級さん」
「やめてくださいよ……」
レオンが困ったように笑う。
だが、その表情には、確かな実感があった。
半年前。
何も出来なかった自分。
誰かの背中を追い続けていた自分。
そこから。
少しだけ。
前へ進めた気がした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
祝昇級!!
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