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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
再:C級昇格試験 

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77/143

77:五秒

本日もよろしくお願いします。

大型の狼型魔獣が低く唸る。


包囲は崩れていない。


ノアが前へ出ている。

セスは後方から矢で牽制。


アイリスは、

荒く息を吐いていた。


「っ……はぁ……!」


炎魔術は高威力だが、

その代わり、消耗が激しい。


大型へ決定打を撃てる程の魔力は、

もう残っていなかった。


大型が再び踏み込む。


ノアが、

曲剣で牙を流す。


セスの矢。


大型の眼前を掠め、僅かに動きを逸らす。


だが、止まらない。


大型は、明らかに他の個体より強い。


力も、速さも。


そして、

群れを率いる知能も。


レオンは、

戦場を見渡した。


このまま削り合えば、

先に崩れるのはこちら。


必要なのは、一瞬の隙。


レオンが、

即座に叫ぶ。


「アイリスさん!!

視界を塞げる魔術はありますか!?」


以前のアイリスなら、

一瞬考えていた。


だが今回は違う。


「できます!!」


即答だった。


「大きいのは無理です!」


「でも、小さい爆発なら、目の前で起こせます!」


レオンが、小さく頷く。


反応が早い。

もう、戦場の速度へ、

置いていかれていない。


「何秒必要ですか!?」


「五秒!!」


その答えを聞き、

レオンが即座に声を飛ばす。


「ノアさん!!セス!!」


「五秒だけ、大型を止めて下さい!!」


ノアが大型を睨む。


「……五秒かよ」


セスが苦笑した。


「きついなぁ……!」


そう言いながら、弓を背へ回す。


代わりに腰から、

鉄製のメイスを抜いた。


大型が地面を蹴る。


速い。


ノアが前へ出る。


真正面では受けない。


曲剣を滑らせ牙を逸らす。


その横から。


セスのメイス。


鈍い衝撃音。


大型の頭が、僅かに揺れた。


だが止まらない。


重い。


「っぐ……!」


ノアが、

地面を滑る。


セスも、

片腕へ衝撃が走る。


それでも。


下がらない。


その間。


レオンは、

小型を捌いていた。


一体、飛び込んでくる。


小剣で爪を逸らす。


そのまま、

妖精鳥を突っ込ませ、視界を塞ぐ。


一瞬の硬直。


そこへ。


レオンの小剣。


深追いはしない。


倒す必要は無い。


“時間を稼ぐ”


それだけでいい。


アイリスは狙いを定めている。


大型がノアへ噛み付こうとする。


「させるかよ!!」


ノアが、

曲剣を滑らせる。


流す。

その横から。


セスのメイスが、

大型の鼻面を殴り飛ばした。


「――行きます!!」


アイリスの詠唱完了。


次の瞬間。


大型の眼前で、

小規模爆発が炸裂した。


閃光。


大型の視界が、

一瞬潰れる。


その瞬間。


ノアが消えた。


低く。

地を滑るように踏み込む。


大型の懐。


牙の下。

喉元。


曲剣が深く潜り込む。


そのまま。


斜めに切り上げた。


肉が裂ける。

血飛沫。


大型が絶叫した。


だが。


終わらない。


ノアは止まらなかった。


流れるように、

身体を回す。


曲剣で喉から首筋までを一気に裂く。


骨。

筋肉。

血。


全てを断ち切り。


大型の首が、

地面へ落ちた。


そして。


周囲の狼型魔獣達の統率が崩れる。


包囲が乱れた。


「逃がすな!!」


セスの矢。

ノアの曲剣。


そこから先は、

早かった。


数分後。


最後の狼型が、

地面へ崩れ落ちる。


静寂。


荒い呼吸だけが、

森へ残った。


ノアが曲剣を肩へ担ぐ。


「……はぁ、死ぬかと思った」


「実際かなり危なかったですよ」


敵影が無いことを確認したレオンが、

その場へ座り込んだ。

緊張が切れたのか、肩で息をしている。


セスが小さく笑う。


「でもまぁ、悪くねぇ戦いだったな」


アイリスが、

疲れた顔で頷いた。


そして。


ノアが、

少しだけ視線を逸らしながら言った。


「……その」


「指示、悪くなかった」


レオンが少しだけ目を丸くする。


その横で、セスが吹き出した。



「素直じゃねぇなぁお前」


「うるせぇ」


空気が少しだけ緩む。


噛み合わない歯車が、

ようやく噛み合った。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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