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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
再:C級昇格試験 

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75/135

75:折り返し

本日もよろしくお願いします。

森を進み始めてから、既に数時間。


木々の隙間から差し込む光も少し傾き始めていた。


「……随分奥まで来ましたね」


アイリスが小さく息を吐く。


その額には薄く汗が浮かんでいる。


戦闘回数自体はそこまで多くない。


だがこの班は、

一瞬たりとも止まれない。


タンク不在という大きな穴。


受ければ崩れる。


だから。


常に動き続ける必要があった。


「ノア、右から二体」


セスが声を飛ばす。


「分かってる!」


ノアが即座に前へ出る。


以前より明確に声が増えた。


完全ではない。


だが、最低限、援護を受ける前提で動き始めている。


曲剣が閃く。


狼型の爪を紙一重で躱す。

そのまま身体を流すように回転。


刃が首筋を裂いた。


返す刃。


二体目の前脚を切り裂き体勢を崩す。


そこへ。


セスの矢。


喉を貫通。


「……ははっ」


ノアが、少し口元を吊り上げる。


「今のは悪くねぇ」


「ようやく援護を受ける気になったか」


「勘違いすんな」


「使えるもんを使ってるだけだ」


軽口。

だが、少しだけ空気が柔らかくなっていた。


その後方。


「アイリスさん、左後ろ」


「っ!」


レオンの声にアイリスが反応する。


だが。


やはり、一瞬確認する。


視線を動かし、位置を把握し、そこから動く。


その一瞬の遅れ。


アイリスは対応が遅れる。


その遅れを取り戻すためにレオンが妖精鳥を飛ばす。


狼型の視界を塞ぎ、遅れを取り戻す。


そこへ、アイリスの炎弾。


轟音。


炎が、狼型を吹き飛ばした。


「……すみません。また遅れました」


悔しそうな声。


レオンは小さく首を振る。


「でも、今のでちゃんと対応できてます」


「焦って崩れるよりはずっといいです」


アイリスは少し驚いた顔をした。

怒られると思っていた。


だが、レオンは責めない。


その代わり。


自然に、足りない部分を埋める。


「……不思議な人ですね」


「え?」


「いえ」


アイリスは少しだけ苦笑した。



さらに進み、やがて、森の開けた場所へ出る。


中央には、木箱に寄りかかるように、

人型の人形が置かれていた。


布で包まれた、模擬負傷者。


「……あれか」


セスが目を細める。


「救護者人形ですね」


レオンが頷く。


「警戒は解かないで下さい」


ここまで来れば、あとは回収して帰還するだけ。


ノアが、大きく息を吐いた。


「はぁー……ようやくかよ」


そのまま人形へ近付く。


ノアとアイリスは、

折り返し地点まで到達した事に安堵し、

警戒が薄れているようだった。


「思ったより、ちゃんとした試験でしたね」


「まぁ、C級だしな」


緩む緊張感のなか、レオンとセスは周囲の警戒を続けていた。


そして、

何か違和感を覚えていた。


静かすぎる。


風の音だけが、森を揺らしている。


その瞬間、レオンの表情が変わった。


「……警戒を続け――下がって!!」


咆哮。


木の影から、

途轍もない速さで巨大な影が飛び出してくる。


大型狼型。


その後ろから、さらに四体。


合計五頭。


「っ!?」


ノアが反応する。


だが遅い。


大型狼型が突っ込んできた。


「ノア!!」


セスの矢。


大型狼型の眼前を掠め、

僅かに軌道を逸らす。


それでも、完全には止まらない。


ノアは、咄嗟に曲剣を構える。


だが、

受けた。


受け流すのではなく。


受け止めてしまった。


衝撃。


「がっ……!?」


咄嗟のことであったため、踏ん張りが効かず身体が浮く。


曲剣が軋み、肩口を牙が裂いた。


その横。


アイリスも、

反応が遅れた。


大型の横から突っ込んできた狼型を小盾で流そうとする。


しかし。


盾で流しきれず、狼型の爪が太腿を切り裂く。


「っぁ……!」


鮮血。


二人が同時に崩れる。


レオンが、

即座に叫んだ。


「セス!!右の二体を!!」


「了解!!」


風を裂く矢。


セスだけが。


完全にレオンの指示へ即応していた。


鉱山村。

あの死線で培われた、実戦経験。


それが、

露骨に差として現れていた。



大型狼型が、

低く唸る。


鋭く睨む瞳。


異常個体程ではないにしろ、通常の個体とは格が違う。


そして。


この班には、

“受ける役”が居ない。


最悪の状況だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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