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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
再:C級昇格試験 

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73/138

73:即席パーティ

本日もよろしくお願いします。

「それでは、班分けを発表する!」


試験官の声が試験場へ響く。

受験者達の空気が僅かに張り詰めた。


C級昇格試験。


今回は四人一組での複合模擬任務。


「第3班」


「レオン・アルバーン」

「セス・ハウル」

「ノア・ヴェイン」

「アイリス・フォルテ」


名前を呼ばれた四人が前に出る。

自然と視線を向け合う。


最初に動いたのは細身の青年だった。


黒髪。

鋭い目。

軽さに重きを置いた最低限の革鎧。

手袋の甲の部分は金属で補強されている。

腰には片手で扱える大きさの曲剣を下げており、その柄に自然と手が触れている。


「俺はノア、ノア・ヴェインだ」


その表情は露骨に後衛職を見下しているようだった。


「……へぇ、魔術師に弓師に、召喚士?後衛3人って、随分な班分けだな」


その言葉にレオンは特に反応しない。


一方。


赤茶髪の少女が、礼儀正しく頭を下げる。


「アイリス・フォルテといいます。よろしくお願いします。炎魔法と剣を使います」


勝ち気そうな目。

軽装の革鎧。

だが、急所部分には追加で金属板が取り付けられ、実戦を意識した補強がされていた。

そして、左腕には小型の盾。

受け止めるためではなく受け流すための形状。

腰には、柄頭に赤い宝石が埋め込まれた細剣が下げられている。宝石は恐らく魔法の触媒だろう。



「レオン・アルバーンです。召喚士をしています。よろしくお願いします」


「セス・ハウルだ。基本弓師だが多少近接もできる」


短いやり取り。


その横で、ノアだけが露骨につまらなそうな顔で呟いた。


「……まぁいいや、足引っ張んなよ」


セスが、呆れたように鼻を鳴らす。


「ククッ、若いなぁ」


「うるせぇよ弓野郎」


空気はあまり良いとは言えない状態だった。


全班の編成が終わると、試験官が再び前へ出る。



「これより、試験内容を説明する」


全員の空気が締まった。



「今回の試験は、森林地帯での模擬任務だ」


「森の奥に設置された“救護者人形”を回収し、制限時間内に帰還してもらう」


ざわめきが広がるが、それを無視して試験官は続けた。


「当然、森には魔獣も放ってある」


「戦闘能力、探索能力、連携、状況判断、負傷者対応、そして帰還まで含め、全て評価対象とする」


つまり、“実戦で動けるか”を見る試験。


単純な個人戦ではない。


その説明を聞きながら、

レオンは自然と周囲を見ていた。


D級の面々だ。

緊張で強張っている者や落ち着きのない者、浮ついている者もいる。


また、経験不足故に、連携には不慣れな者が多いことが推測される。



半年前なら、ここまで見えていなかった。


試験官が、最後に言った。


「なお、試験中の行動は監視している」


「単純に敵を倒せば良い訳ではない」


「仲間を危険に晒す行為、独断専行も減点対象だ」


その瞬間。


前列に居たノアが、露骨に顔をしかめた。


「……はっ」


「何が連携だ。結局強ぇ奴が勝つだろ」


周囲へ聞こえるように言う。



いかにもな自信家だった。


レオンは、

思うことはあれど何も言わない。


以前なら、萎縮していたかもしれない。


だが今は違う。



「それでは各班、順次出発しろ!」



試験開始。



レオン達第3班は、

森林地帯へ足を踏み入れた。


森へ入ってすぐ。


レオンは自然と周囲へ視線を巡らせる。


地形。

足場。

風向き。

視界。

射線。



以前なら見えていなかった情報が、自然と頭へ入ってくる。


「……右側、少し開けてますね」


「奇襲が来るとすれば、あっちから来そうです」


レオンが呟く。


アイリスが、少し感心した顔をした。


「よく見てますね」


「癖みたいなものです」


その会話を、ノアは鼻で笑った。


「んな慎重にやってたら、時間足りなくなるだろ」


そのまま先行する。


「ノア!」


アイリスが声を上げる。


だが、ノアは止まらない。


軽い。

森の中を滑るように進む。


確かに速い。

足運びも鋭い。


戦闘センス自体は、かなり高ようだ。


レオンは、軽く深呼吸をして意識を切り替える。


「……セス」


「あー、分かってるよ。間隔詰めるわ」


セスが即答する。


「アイリスさん」


「はい?」


「ノアさんの左側、援護お願いできますか」


「え?」


「俺とセスで右を見ます」


即座の役割整理。


アイリスは少し驚いた顔をしたが。


すぐ頷く。


「……分かりました」


その直後。


ガサッ!!


茂みが揺れた。


飛び出してきたのは狼型魔獣が二体。


「っ!」


ノアが即座に踏み込む。


速い。


低姿勢。


一体目の前足を曲剣が切り裂く。


鋭い。


だが。


二体目への意識が僅かに遅れた。


「右!!」


レオンが叫ぶ。


同時に風を裂く音。


セスの矢が、

狼型の眼球を貫いた。


魔獣が体勢を崩す。


その隙にアイリスの炎弾が炸裂。


轟音。


小さな炎弾が狼型の首を吹き飛ばした。


戦闘終了。


だが、ノアは露骨に顔をしかめていた。


「……チッ」


「今の、俺一人で十分だっただろ」


セスが呆れた顔をする。


「いや無理だろ。二匹目、反応遅れてたぞ」


「遅れてねぇ!!」


「いいや遅れてた」


即答だった。


空気が少し荒れる。


その時、レオンが静かに口を開いた。


「ノアさん」


「次、三歩以上前へ出るなら言ってください」


「は?」


「援護位置、合わせます」


怒るでもなく。


否定するでもなく。


自然な声だった。


ノアが、少しだけ眉をひそめる。


「……なんでお前に合わせなきゃ」


「合わせなくても大丈夫です」


レオンは、静かに続けた。


「ただ、ノアさん、突っ込む時に左側の確認が薄くなるようなので」


「そこだけ見ます」


ノアが、一瞬黙る。


図星だった。


アイリスも、

少し目を見開いている。


そして。


セスだけが、

小さく笑った。


「……流石だねぇ」


鉱山村で、何度も見た流れだった。



レオンは、

人を抑えつけない。

無理に従わせない。


その代わり。


“動きやすい形”を作る。


そしていつの間にか。


戦場全体を、掌握していく。


森の奥から、

再び魔獣の気配が近付いていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

レオンのCランク再試験編になります。

成長を上手く描けるよう頑張ります。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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