72:C級昇格試験再び
本日もよろしくお願いします。
「――セスも受けるんだね」
試験受付前。
レオンは、少し驚いた顔で隣を見る。
そこには鉱山村で共に戦ったセスが居た。
「いや、そろそろいいかなって」
軽い口調ではあるが、どこか以前より迷いが少ない。
「C級になっとかないと、受けられない依頼も増えてきたし、あとはまぁ、」
セスは、少しだけ肩を竦めた。
「この前ので、自分で思ってたよりやれる気がしたんだよな」
鉱山村。
四つ腕。
あの死線。
以前のセスなら、
そんな言葉は言わなかった気がした。
「……なんですかそれ」
レオンが苦笑する。
すると。
「おーい!!」
後ろからの大きな声に振り返ると、
ミナが、ぶんぶんと手を振っていた。
その横にはカイルも居る。
まだ完治はしていないらしく、
腕には軽く固定具が巻かれていた。
カイルは先日の任務から帰ってきた時にCランクに昇級している。
「お前らが試験を受けるって聞いて冷やかしに来たぜ」
「レオンは2回目でしょ?今度は落ちんなよ〜!」
カイルとミナが茶化すように言った。
「あはは……頑張ります」
レオンが苦笑いしながら返す。
カイルは苦笑しながら。
「まぁ、お前が落ちるなら、誰が受かるんだって話だろ」
「……いや、そんなことないですって」
「ある」
即答だった。
「少なくとも、俺はそう思ってる」
真っ直ぐな言葉。
レオンは、少しだけ言葉に詰まる。
すると。
セスが、小さく鼻を鳴らした。
「お前、未だに自覚ないよな」
「え?」
「少なくとも、鉱山村で見た限り、Dで燻ってる動きじゃねぇよ」
レオンは、少し困ったように眉を下げた。
「いや、でも俺……」
「まぁ、単独で前出ろって言われたら普通に危なっかしいけど」
セスは淡々と言う。
「戦場での支援と視野は、もうDの範囲超えてるだろ」
それは。
飾らない、セスなりの評価だった。
レオンは、何も返せなかった。
すると、試験官の声が響く。
「C級昇格試験、受験者は前へ!」
⸻
空気が切り替わる。
⸻
レオンは、
小さく息を吐いた。
半年前、ここで、
リオと共に試験を受けた。
結果は不合格。
あの時は、必死だった。
周りを見る余裕も無く、ただ、食らいつくだけだった。
だが、今回は違う。
そう思いたかった。
⸻
試験場には、
十数名の受験者が集まっていた。
前回より少し多い人数。
その中には。
いかにも腕自慢そうな前衛。
緊張した顔の魔術師。
盾役らしい大柄な男。
様々な冒険者が居る。
その視線の一部が、レオンへ向いていた。
「……あいつか?」
「異常個体と戦ったって噂の?」
「黒狼の牙と一緒に居たって聞いたぞ」
小さなざわめき。
レオンは、少し居心地悪そうに視線を逸らす。
セスが呆れた顔をした。
「もうちょい慣れろよ」
「無理だって……」
すると、試験官が前へ出る。
「今回の試験内容を説明する」
全員の空気が締まった。
「今回は、複合模擬任務形式だ」
ざわつく受験者達。
試験官は続ける。
「森林地帯での探索、模擬負傷者の救助、魔獣討伐、及び、制限時間内での帰還」
「総合評価で判断する」
単純な戦闘試験ではない。
より実戦に近い。
その説明を聞きながら。
レオンは小さく周囲を見る。
前衛型が多い。
突出気味になりそうだ。
後衛同士の連携も、まだ薄い。
半年前なら、ここまで見えていなかった。
その時、試験官が最後に言った。
「実際の任務では連携も非常に重要となる。
そのため今回は“協調性”の面での評価も大きくなる」
その瞬間。
前列に居た槍使いの男が、露骨に顔をしかめた。
「……はっ」
「結局強ぇ奴が勝つだろ」
周囲へ聞こえるように言う。
いかにも、自信家だった。
レオンは何も言わない。
以前なら萎縮してしまっていたかもしれない。
だが、これまでの経験が自分を支えているように感じた。
⸻
「それでは、班分けを行う!」
受験者達が動き始める。
その空気の中で。
セスだけがちらりとレオンを見た。
そして、小さく笑う。
「……まぁ」
「今回は、お前がちゃんと動けば大丈夫だろ」
「え?」
「鉱山村ん時みたいに、全体見て使ってくれりゃいい」
「寄せ集めの即席パーティだ。少なくとも、俺はそっちの方がやりやすい」
その言葉へ。
レオンは、
少しだけ目を見開いた。
試験開始まであと僅か。
レオンは改めて気を引き締めるのだった。
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