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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
再:C級昇格試験 

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71/135

71:半年

本日もよろしくお願いします。

新章突入です。

鉱山村グランディアを出た後の帰路は、

驚くほど穏やかだった。


定期便の馬車へ揺られ、途中の宿場町で休み、街道沿いを、ゆっくり戻っていく。


あれほど死線を潜った直後だというのに。


世界は、何事もなかったみたいに平和だった。


「……なんか変な感じだな」


馬車の窓から外を見ながらセスが呟く。


「数日前まで、あんな化け物と戦ってたんすよね俺ら」


「まぁ、生きて帰れたんだからいいじゃん」


ミナが笑う。


その顔には、以前より少しだけ落ち着きと自信があった。


カイルはまだ本調子ではない。


だが、以前よりも、身体へ魔力を流す感覚が掴め始めているらしく、最近は暇さえあれば真面目な顔で感覚を確かめていた。


そして数日後。


一行は、ようやく拠点都市リスベルへ帰還した。


見慣れた石畳。

聞き慣れた喧騒。

ギルド前の混雑。


それを見た瞬間。


「あー……帰ってきたって感じするー」


ミナが大きく伸びをした。


「まずは報告に行きますよ」


セスが言う。


「流石に今回は、早めに話通しといた方がいいでしょう」


全員異論は無かった。



冒険者ギルドの扉を開いた瞬間。


「……あっ!」


受付嬢が、固まった。


「レオンさん!?」


「カイルさん達も!?」


驚くのも無理はない。


本来、彼らの任務は、鉱山村の防衛支援。


それが異常個体との交戦報告付きで戻ってきたのだ。


しかも。


B級パーティ、

黒狼の牙との共同戦闘。



四つ腕の異常個体。

切断腕の回収。


話の規模が、完全に想定を超えていた。



「……ギルド長を呼びますので、奥の会議室でお待ち下さい。」


受付嬢が、真顔で奥へ消えていく。


数分後。



ギルド奥の会議室。


報告を聞き終えたギルド長が、深く椅子へ沈み込んだ。


「……はぁ」


重い溜息。


「なんでお前ら、防衛任務行って異常個体と戦ってんだ」


「いやまぁ……成り行きで……ハハハ...」


カイルが目を逸らしながら言う。

レオン達他3人も目を逸らす。


ギルド長は頭を押さえた。


「成り行きで済む内容じゃねぇんだよ...ったく...」


だが、怒っている訳ではない。


むしろ。


全員生還したことへ、安堵しているようにも見えた。


その後、レオン達は今回の詳細報告を提出。


四つ腕。

異常個体。

魔獣活性化。


そして。


黒狼の牙が持ち帰った、

四つ腕から切断した腕の件も含めて、

正式記録として残されることになった。



報告を終え、

部屋を出たところで。



カン。


カン。


訓練場の方から、金属音が聞こえてきた。


「……?」


レオンが視線を向ける。


どこか、聞き覚えのある音だった。


気になって足を向けると。


「――そこ、踏み込み浅い!」


「腰落とせ!そんなんじゃ吹き飛ばされるぞ!!」


「俺が吹き飛ばしてやろうか!!」


訓練場の中央で。



ガドが、新人冒険者達へ怒鳴っていた。


以前より、少し柔らかい顔をしている。


その少し離れた場所。


一人の青年が、

木剣を振っていた。


無駄のない踏み込み。

鋭い太刀筋。


「……リオ」


声を掛けるとリオが振り返った。


「あ」


自然と、笑みが浮かぶ。


「戻ったのか」


「はい。ついさっき」


リオは、軽く木剣を肩へ担ぐ。

以前より顔色がいい。


大狼戦で負った傷。


特に利き腕は、結構な損傷だったはずだ。


「……もう大丈夫なんですか?」


レオンが聞く。


リオは、右手を軽く握った。


「完全復活、って訳じゃないけど」


「まぁ、実戦は問題ない」


そう言って木剣を振る。


風切り音。

速い。


以前と変わらない。


いや。


むしろ、

以前よりも洗練されているようにも見えた。


「レオンが鉱山村行ってる間、ずっとガドさんに付き合わされてた」



「付き合わされてたは余計だ」


後ろからガドがツッコむ。


「リハビリついでに、新人共の面倒見させてたんだよ」


「まぁ、おかげで感覚は戻った」


リオは苦笑する。


「休んだおかげで変な力抜けた感じもするしな」


その言葉にガドが満足そうに鼻を鳴らした。


「怪我した後の方が伸びる奴も居る。お前はそっち側だ」


それから。


ガドは、ふとレオンを見る。


「そっちはどうだった」


レオンは、

少しだけ考えた。


四つ腕。

黒狼の牙。

死線。

支援。

指揮。


様々な光景が頭を過る。


「……めちゃくちゃでした」


その答えに。


リオが、楽しそうに笑った。


「そりゃ何よりだ」


レオンも、少しだけ笑う。


すると、ふと、鉱山村へ出発する前、

ガドに言われた言葉を思い出した。




『でも、“強くなる”ってのはな』


『別に、無茶することじゃねえからな』



あの時は、

あまり実感が無かった。


だが今は、少しだけ、

その意味が分かる気がした。


「……ガドさん」


「ん?」


「前に言ってたこと、ちょっと分かりました」


ガドは、少しだけ目を細める。


「そうか」


それだけ言って、小さく笑った。


すると、リオが、真っ直ぐレオンを見る。


「俺、そろそろ復帰する」


「だから」


木剣を肩へ担ぎ直しながら、

少し口角を上げた。


「またどっかの戦場で、一緒に戦おうぜ」


軽い口調。


だが、そこに迷いは無かった。


レオンも、自然と笑う。


「……はい」


以前なら、その言葉だけで気後れしていたかもしれない。


だが今は、少しだけ。


“また並んで戦えるかもしれない”


と、思えた。



訓練場へ、

夕陽が差し込む。


その光の中で。


木剣を振るリオの姿は、以前よりも、少しだけ遠く。


そして。


少しだけ近く見えた。



その日の夕方。


レオンがギルドの受付前を通ったとき。


「レオンさん!」


受付嬢に呼び止められた。


「ギルド長から伝言です」


「……?」


受付嬢は、少し苦笑しながら言う。


「“もう一回、C級昇格試験受けろ”だそうです」


レオンが固まる。


「……え?」


前回の試験。

リオと共に受けたあの日から、


既に半年が経っていた。



あの頃の自分は。

何もかも足りなかった。


経験も。

判断も。

実力も。


だが、今は違う。


少なくとも。


“戦場”を知った。


その実感だけは、確かにあった。



「わかりました」


レオンは力強くそう答えた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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