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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:四つ腕

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67/135

67:持ち帰るもの

本日もよろしくお願いします。

帰還準備は静かに進んでいた。

誰もが疲弊している。


それでも、

森へ背を向ける前に、

最低限の整理は必要だった。


ドルガが無言で荷物を纏めていく。


シエラは折れた剣を回収し、

鞘へ収めていた。


ゼインは倒木へ腰掛けたまま、

脇腹を押さえている。


マークは簡易治療を続けていた。


レオンは、皆から少し離れた場所へ立っていた。


視線の先には、地面へ転がる、

四つ腕の切断された腕。


銀色の体毛。

歪な、長すぎる指。


そして。


断面から、

未だに蠢き続ける黒い繊維。


見ているだけで、嫌な感じがする。

普通なら、近付きたくもない。


だが、レオンは、

妙に目を離せなかった。


「……レオン?」


ミナが少し不安そうに声を掛ける。


その時、ゼインもそちらへ視線を向けた。


「……お前、それ気になるのか」


レオンは少し迷ってから、

小さく頷く。


「嫌な感じはするんですけど……」


「なんというか」


「妙に、引っかかる感じがして」


その返答へ。


ゼインとマークが、

一瞬だけ視線を交わした。


短い沈黙。


先に口を開いたのはマークだった。


「……持ち帰りましょう」


全員の視線が向く。


「異常個体の肉体組織は、

研究材料として非常に価値があります」


「特に今回は、再生反応らしき挙動まで確認できた」


マークは、腕の断面を見る。


黒い繊維は、未だに微かに蠢いていた。


まるで。

まだ生きているかの様に。



「何があるか分かりませんから、正直、かなり危険です。ですが、王都へ情報を送る価値はあります」


ゼインが鼻を鳴らす。


「俺も同感だ。放っとく方が気持ち悪ぃ」


その時、ドルガが無言で近付いてきた。


そして。


腕を見下ろす。


数秒。


「……包めば運ぶ」


短い。


だが、頼もしい。


「助かります」


マークが頷く。


そして荷物の中から、

厚手の魔封布を取り出した。


「本当は研究施設用なんですが……。

まぁ、無いよりはマシでしょう」


マークとドルガが慎重に腕へ近付く。


その瞬間。


ぴくり。


黒い繊維が、

反応した。


「…うひゃー…気持ち悪ぅ」


ミナが思わず呟く。


断面から伸びた黒い繊維が、

何かを探すように蠢いている。


「マジで生きてんのかよこれ……」


セスが顔を引き攣らせた。


マークの表情も、流石に硬い。


「完全には、死んでいないのかもしれません」


「あるいは、魔力だけが活動しているのか……」


断定は出来ない。


だが、普通ではない。


それだけは全員が理解していた。


ドルガが、素早く魔封布で包む。


そのまま、布で腕を縛り上げた。


だが、包まれた布の内側が、

時折ぴくりと動く。


まだ、中で何かが脈打っている。


「……気味悪ぃ」


セスが小さく漏らす。


レオンは、その布を見つめていた。


嫌悪感はある。


だが。


それだけじゃない。


どこか、

妙な既視感に近い感覚。


上手く言葉に出来ない。


その時、ゼインが、

そんなレオンをちらりと見る。


「お前、やっぱ変だな」


「え?」


「いや」


ゼインは小さく笑う。


「悪い意味じゃねぇ」


そう言いながら立ち上がろうとして。


脇腹に激痛が走ったのか、

顔をしかめた。


「っぐ……」


「無理しないでください」


マークが即座に肩を支える。

ゼインは苦笑した。


「帰ったら流石に寝る」


そして一行は。


未だ微かに脈動する、

異形の腕を抱えたまま。


防衛拠点への帰路についた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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