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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:四つ腕

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64/135

64:四つ腕

本日もよろしくお願いします。

結界が震えた直後。


「北側だよ」


シエラの声に、

全員が即座に立ち上がる。


森奥から、低い唸り声。


「来たな...…!」


カイルが槍を構えた。


飛び出してきたのは、

狼型の群れ。


中型二。

小型四。


ゼインが前へ出る。


「片付けるぞ」


雷光が小さく走り、

戦斧が唸る。


そのまま前線を押し潰した。



問題なく戦いを終えた。


だが。


「……また?」


ミナが顔をしかめた。


およそ一時間後、再び群れが現れた。


今度は別方向。


さらにその次も。


またおよそ一時間後。


「頻度が多すぎる」


セスが短く吐き捨てる。


普通じゃない。


開けた場所。

火を焚いている。

人数も多い。


本来、野生の魔獣は避ける条件だ。


なのに。


群れが途切れない。


毎回、絶妙に休めないタイミングで。


処理はできる。


だが、休息時間を削られる。


特に前衛が、確実に疲弊していく。


「……消耗狙いかよ」


セスの呟きへ。


ゼインは、険しい顔で森を睨んでいた。


「誰かが回していやがるな」


その言葉で、空気が冷える。


偶然ではない。

そういうことだった。



明け方、日が登り始め、空が僅かに白み始める頃。


6度目の群れが現れた。


「チッ……!」


カイルが前へ出る。

疲労は隠せていない。


それでも、槍を振るう。


だがその瞬間。


横から飛び込んできた狼型への反応が、僅かに遅れた。


「っ!」


牙が肩を掠める。


浅い。


だが、負傷した。


「カイル!」


ミナが叫ぶ。

レオンが反射的に前へ出ようとした。


だが。


「前出んな!」


セスが即座に制止する。


「傷開くだろ!」


「でも――」


「後ろから見える範囲でいい!」


ミナも叫ぶ。


「あたしたち動きやすくして!」


その言葉で、レオンは止まった。


そして。


妖精鳥を飛ばす。


身体能力強化。

集中補助。


今できる範囲だけ。


無理はしない。


その支援を受け、カイルが踏み直す。


「...まだ、いける!」


槍が狼型を貫いた。


さらに。


ミナが死角へ潜り込み、喉を裂く。


セスの矢が、最後の一体の目を射抜いた。


ようやく。


群れが沈黙する。

重い呼吸。

疲労。


誰もが、夜通し戦わされていた。


「……最悪だな」


セスが額を押さえる。


ゼインも、険しい顔のまま森を見ていた。


「完全に遊ばれてる」


その時だった。


森奥から。


何かが飛んできた。


「――伏せろ!!」


ドルガが叫ぶ。


直後。


轟音。


地面へ、

巨大な何かが叩きつけられる。


土煙。


ミナが目を見開いた。


「……え?」



転がっていたのは。


魔獣だった。


死骸。


しかも、身体が、無理やり引き裂かれている。


静寂。


そして。



森の奥が朝日に照らされ、

浮かび上がるように見えた。


木々が不自然に薙ぎ倒されていた。


まるで。


巨大な何かが、

力任せに踏み潰して進んだように。


その木々が積み上げられた山。

明らかに不自然に積まれたその山の上に。


朝日に照らされながら。


それは、

腰掛けていた。


巨大な四本腕の猿。


普通ではない。


巨大な体は体長4〜5メートルはあるだろうか。

全身は銀色の体毛に覆われている。


だが。


肩裏。


本来あり得ない位置から生えた、

追加の二本だけ。


そこだけ、黒かった。

妙に若々しく、艶がある。


異様に長い腕。


一本一本が、

二メートル以上ある。


指も長く、歪んでいる。


何本かは、

明らかに折れた後、

無理やり治癒した形だった。


全身にも、無数の傷痕。


噛み傷。

裂傷。

古い爪痕。


歴戦。


そう呼ぶしかない、

生々しい傷跡だった。


だが、何より異様だったのは、

目だった。


赤黒い瞳。


その視線が、

ゆっくりとこちらを舐めるように、

見定めるように動く。


前衛。

後衛。

負傷したカイル。


そして、レオン。


まるで、

戦力を確認しているみたいに。


その片腕には、

まだ生きている狼型の魔獣が握られていた。


狼型は暴れている。


だが。


逃げられない。


まるで、

玩具みたいに。


異形は、

口元を、

ゆっくりと歪めた。


笑っている。


そのまま。


握っていた狼型の魔獣を、ゆっくり振りかぶる。


静寂。

誰も動かない、動けない。


そして、四つ腕が、その手の中のものを投げ飛ばした。

瞬間、野営地のすぐ隣に狼型が着弾した。

次は当てると言わんばかりに、

ニヤニヤと、こちらを見ている。


ゼインが低く呟いた。


「……四つ腕、か」


その瞬間。


四つ腕の不気味な笑みが、

さらに深くなった気がした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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