↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:四つ腕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/143

64:四つ腕

本日もよろしくお願いします。

結界が震えた直後。


「北側だよ」


シエラの声に、

全員が即座に立ち上がる。


森奥から、低い唸り声。


「来たな...…!」


カイルが槍を構えた。


飛び出してきたのは、

狼型の群れ。


中型二。

小型四。


ゼインが前へ出る。


「片付けるぞ」


雷光が小さく走り、

戦斧が唸る。


そのまま前線を押し潰した。


⸻


問題なく戦いを終えた。


だが。


「……また?」


ミナが顔をしかめた。


およそ一時間後、再び群れが現れた。


今度は別方向。


さらにその次も。


またおよそ一時間後。


「頻度が多すぎる」


セスが短く吐き捨てる。


普通じゃない。


開けた場所。

火を焚いている。

人数も多い。


本来、野生の魔獣は避ける条件だ。


なのに。


群れが途切れない。


毎回、絶妙に休めないタイミングで。


処理はできる。


だが、休息時間を削られる。


特に前衛が、確実に疲弊していく。


「……消耗狙いかよ」


セスの呟きへ。


ゼインは、険しい顔で森を睨んでいた。


「誰かが回していやがるな」


その言葉で、空気が冷える。


偶然ではない。

そういうことだった。


⸻


明け方、日が登り始め、空が僅かに白み始める頃。


6度目の群れが現れた。


「チッ……!」


カイルが前へ出る。

疲労は隠せていない。


それでも、槍を振るう。


だがその瞬間。


横から飛び込んできた狼型への反応が、僅かに遅れた。


「っ!」


牙が肩を掠める。


浅い。


だが、負傷した。


「カイル!」


ミナが叫ぶ。

レオンが反射的に前へ出ようとした。


だが。


「前出んな!」


セスが即座に制止する。


「傷開くだろ!」


「でも――」


「後ろから見える範囲でいい!」


ミナも叫ぶ。


「あたしたち動きやすくして!」


その言葉で、レオンは止まった。


そして。


妖精鳥を飛ばす。


身体能力強化。

集中補助。


今できる範囲だけ。


無理はしない。


その支援を受け、カイルが踏み直す。


「...まだ、いける!」


槍が狼型を貫いた。


さらに。


ミナが死角へ潜り込み、喉を裂く。


セスの矢が、最後の一体の目を射抜いた。


ようやく。


群れが沈黙する。

重い呼吸。

疲労。


誰もが、夜通し戦わされていた。


「……最悪だな」


セスが額を押さえる。


ゼインも、険しい顔のまま森を見ていた。


「完全に遊ばれてる」


その時だった。


森奥から。


何かが飛んできた。


「――伏せろ!!」


ドルガが叫ぶ。


直後。


轟音。


地面へ、

巨大な何かが叩きつけられる。


土煙。


ミナが目を見開いた。


「……え?」


⸻


転がっていたのは。


魔獣だった。


死骸。


しかも、身体が、無理やり引き裂かれている。


静寂。


そして。


⸻


森の奥が朝日に照らされ、

浮かび上がるように見えた。


木々が不自然に薙ぎ倒されていた。


まるで。


巨大な何かが、

力任せに踏み潰して進んだように。


その木々が積み上げられた山。

明らかに不自然に積まれたその山の上に。


朝日に照らされながら。


それは、

腰掛けていた。


巨大な四本腕の猿。


普通ではない。


巨大な体は体長4〜5メートルはあるだろうか。

全身は銀色の体毛に覆われている。


だが。


肩裏。


本来あり得ない位置から生えた、

追加の二本だけ。


そこだけ、黒かった。

妙に若々しく、艶がある。


異様に長い腕。


一本一本が、

二メートル以上ある。


指も長く、歪んでいる。


何本かは、

明らかに折れた後、

無理やり治癒した形だった。


全身にも、無数の傷痕。


噛み傷。

裂傷。

古い爪痕。


歴戦。


そう呼ぶしかない、

生々しい傷跡だった。


だが、何より異様だったのは、

目だった。


赤黒い瞳。


その視線が、

ゆっくりとこちらを舐めるように、

見定めるように動く。


前衛。

後衛。

負傷したカイル。


そして、レオン。


まるで、

戦力を確認しているみたいに。


その片腕には、

まだ生きている狼型の魔獣が握られていた。


狼型は暴れている。


だが。


逃げられない。


まるで、

玩具みたいに。


異形は、

口元を、

ゆっくりと歪めた。


笑っている。


そのまま。


握っていた狼型の魔獣を、ゆっくり振りかぶる。


静寂。

誰も動かない、動けない。


そして、四つ腕が、その手の中のものを投げ飛ばした。

瞬間、野営地のすぐ隣に狼型が着弾した。

次は当てると言わんばかりに、

ニヤニヤと、こちらを見ている。


ゼインが低く呟いた。


「……四つ腕、か」


その瞬間。


四つ腕の不気味な笑みが、

さらに深くなった気がした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。