61:食堂の賑わい/二属性の魔術/葛藤
本日もよろしくお願いします。
何故か修正前の文章がそのまま上がってしまっていたので、訂正致しました。
今回、少し話が長いですが、3エピソード分くらいを一個にまとめています。
ここでまとめておかないと進行上いけないと思いました。
食堂の空気は、
すっかり賑やかになっていた。
様々な魔猪料理を囲み、
兵士たちも冒険者たちも騒いでいる。
「マジでその斧振れるんですか?」
カイルが、ゼインの戦斧を見ながら目を輝かせていた。
近くで見ると、余計に重そうに見える。
どう考えても、人が扱う重量ではない。
ゼインは笑いながら肉を頬張る。
「振れるぞ。というか、振れなきゃ持ち歩かねぇよこんなもん」
「いやそりゃそうなんですけど!」
カイルが興奮気味に返す。
「雷鉄鉱って、普通もっと細い武器に使うやつですよね!?」
「重すぎるからな」
ゼインが頷く。
「俺は雷属性で身体強化できるから、相性がいいんだ。普通こんなデカブツ持てるやついねぇだろうし」
「相性が良かったで済ませる話じゃないでしょ」
セスが呆れたように呟いた。
ゼインはそこで、ふとカイルを見た。
「お前、身体強化使えるな」
「え?ああ。まぁ一応は」
ゼインは少し笑った。
「きっかけありゃ、お前は化けるぞ」
カイルが目を丸くする。
「……マジですか?」
「魔力の流れが素直だし、変に崩れてねぇ」
「伸びる奴の流れしてる」
理論ではなく、感覚で言っている。
だが。
妙な説得力があった。
カイルは、少しだけ照れ臭そうに頭を掻く。
「いやぁ……」
その横では。
「へぇ……」
ミナが、シエラの双剣を興味深そうに見ていた。
「思ったより普通の剣なんだね」
「軽い方が使いやすいから」
シエラは淡々と答える。
「速さ重視?」
「それもある」
シエラは肉を一口食べてから続けた。
「でも、一番は位置取り」
「位置?」
「敵が反撃できない場所へ入る」
短い説明。
だが。
ミナは真剣に聞いていた。
「避けるんじゃなくて、最初から、当たらない場所に置くんだ」
その言葉へ、ミナが小さく目を見開く。
今まで考えたことのない視点だった。
その横では、ドルガが無言で肉を食べ続けている。
山盛りである。
「……めちゃくちゃ食うな」
セスが思わず引いた。
ドルガは静かに顔を上げる。
「食わんと動けん」
それだけ言ってまた食べ始めた。
「説得力すご……」
ミナが小声で呟く。
その時。
ゼインの視線が、
奥でマークと話をしているレオンへ向いた。
少しだけ眉を寄せる。
「……あいつは、よく分からんな」
「え?」
レオンがきょとんとする。
「魔力の流れが妙だが、決して弱い訳じゃねぇ」
「でも、強いやつの流れとも違う」
ゼインは腕を組む。
「なんつーか……普通の後衛っぽくねぇな」
「本人も、よく分かってないんじゃないですかね」
横からセスが言った。
「だろうな」
ゼインは妙に納得した顔で頷く。
そして。
不意に、カイルの肩をバンと叩いた。
「まあお前は伸びる」
「もっと食え」
「はい!?」
「基礎は出来てんだから、後は身体作りだろ。
とにかく食って鍛えろ。話はそれからだ」
「雑!!」
セスが思わずツッコむ。
ミナが吹き出した。
ゼインは豪快に笑う。
「細けぇこと気にして強くなれるなら、誰も苦労しねぇよ!」
そして。
山盛りの肉皿を、
カイル達の前へ押し付けた。
「ほら食え!!」
「うおっ!?」
⸻
その頃、食堂の奥で、
レオンはマークの治療を受けていた。
包帯を外し、
傷口を確認する。
マークは静かに頷いた。
「傷自体の状態は悪くないですね」
淡い水色の魔力が広がる。
そこへ、土色の光が混ざる。
じわりと、傷が締まっていく感覚。
「……二属性魔術って、
こういう感じなんですね」
レオンが小さく呟く。
かなり高度な制御だった。
マークは少し表情を引き締めてレオンに言った。
「後方支援程度なら、恐らく問題ないと思います」
「ですが、傷が開けば意味がありませんから、無理は厳禁ですよ」
レオンは苦笑する。
「……気を付けます」
「ええ。明日はまず、うちの動きを見ていてください」
その堂々とした言葉は、自信の表れだった。
その後。
マークが貼り付けたような笑みを浮かべて、
机の上へ、小瓶を置く。
黒っぽい液体。
嫌な予感しかしない。
「私の作った活性化ポーションです」
「飲んでください」
レオンが顔をしかめた。
「……これ、絶対まずいですよね」
「効きますよ」
「味の否定はしてくれないんですね」
「早く飲んでください」
逃げ道が無い。
レオンは覚悟を決め、一気に飲み干した。
次の瞬間。
「っ!?!?」
甘いのか苦いのか辛いのか、
というか痛い。
舌が痺れる。
喉が熱い。
「な、なんですかこれ……!」
「良薬口に苦しです」
マークが爽やかに返す。
「苦いで済むレベルじゃないですよ!?」
そのやり取りを見て、
近くの兵士たちが笑っていた。
⸻
夜。
食堂の賑やかさから少し離れた、
防壁近く。
食事を終えたセスは一人、
森を眺めていた。
暗くて静かだ。
だが。
あの森の奥には、異常個体が居る。
そう思うだけで、喉が少し乾く。
「悩んでる顔だな」
低い声。
振り向くと、
そこにはバルクが立っていた。
書類の束を片手に持っている。
「……まあ」
セスは苦笑した。
「普通に危険なんで」
「そりゃそうだ」
バルクは隣へ並ぶ。
「怖くない方が異常だ」
風が吹く。
森が揺れる。
セスは少し黙ってから言った。
「...バルクさんなら、どうします?」
すると。
バルクは少しだけ考えた。
「俺なら行く」
即答だった。
「ただし、それを他人に強要はしねぇ」
「行かない選択も、間違いじゃねぇからな」
セスは静かに聞いていた。
「命が惜しいと思えるうちは、まだまともだ。
怖くなくなった奴から死ぬ。
そういう奴は山ほど見てきたよ」
重みのある言葉だった。
長年、現場を見てきた人間の声。
短い沈黙。
その後。
セスは小さく息を吐いた。
「……あの人、頭おかしいですよね」
ぽつりと漏れる。
「支援撒いて、戦線見て
本来の仕事じゃない索敵に指揮までやって」
「しかも自分でも戦ってた」
乾いた笑い。
「普通、どっかで役割分担するでしょ」
「なのに全部抱えてた」
「……やっぱり頭おかしいだろ」
本音だった。
バルクは、静かに森を見たまま答える。
「だから疲弊した」
「便利すぎる奴には、周りが甘える」
セスは黙る。
その言葉の中に、
自分たちも含まれていると、分かってしまったからだ。
「だからこそ、今度は周りが支える番だ」
風が吹く。
森が揺れる。
セスはその暗闇を見つめたまま、
小さく笑った。
「……借りを作りっぱなしって、嫌いなんですよね」
その呟きを聞いて。
バルクは、小さく笑った。
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