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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:四つ腕

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61/143

61:食堂の賑わい/二属性の魔術/葛藤

本日もよろしくお願いします。

何故か修正前の文章がそのまま上がってしまっていたので、訂正致しました。


今回、少し話が長いですが、3エピソード分くらいを一個にまとめています。

ここでまとめておかないと進行上いけないと思いました。

食堂の空気は、

すっかり賑やかになっていた。


様々な魔猪料理を囲み、

兵士たちも冒険者たちも騒いでいる。


「マジでその斧振れるんですか?」


カイルが、ゼインの戦斧を見ながら目を輝かせていた。


近くで見ると、余計に重そうに見える。

どう考えても、人が扱う重量ではない。


ゼインは笑いながら肉を頬張る。


「振れるぞ。というか、振れなきゃ持ち歩かねぇよこんなもん」


「いやそりゃそうなんですけど!」


カイルが興奮気味に返す。


「雷鉄鉱って、普通もっと細い武器に使うやつですよね!?」


「重すぎるからな」


ゼインが頷く。


「俺は雷属性で身体強化できるから、相性がいいんだ。普通こんなデカブツ持てるやついねぇだろうし」


「相性が良かったで済ませる話じゃないでしょ」


セスが呆れたように呟いた。

ゼインはそこで、ふとカイルを見た。


「お前、身体強化使えるな」


「え?ああ。まぁ一応は」


ゼインは少し笑った。


「きっかけありゃ、お前は化けるぞ」


カイルが目を丸くする。


「……マジですか?」


「魔力の流れが素直だし、変に崩れてねぇ」


「伸びる奴の流れしてる」


理論ではなく、感覚で言っている。


だが。


妙な説得力があった。


カイルは、少しだけ照れ臭そうに頭を掻く。


「いやぁ……」


その横では。


「へぇ……」


ミナが、シエラの双剣を興味深そうに見ていた。


「思ったより普通の剣なんだね」


「軽い方が使いやすいから」


シエラは淡々と答える。


「速さ重視?」


「それもある」


シエラは肉を一口食べてから続けた。


「でも、一番は位置取り」


「位置?」


「敵が反撃できない場所へ入る」


短い説明。


だが。


ミナは真剣に聞いていた。


「避けるんじゃなくて、最初から、当たらない場所に置くんだ」


その言葉へ、ミナが小さく目を見開く。

今まで考えたことのない視点だった。


その横では、ドルガが無言で肉を食べ続けている。


山盛りである。


「……めちゃくちゃ食うな」


セスが思わず引いた。


ドルガは静かに顔を上げる。


「食わんと動けん」


それだけ言ってまた食べ始めた。


「説得力すご……」


ミナが小声で呟く。


その時。


ゼインの視線が、

奥でマークと話をしているレオンへ向いた。


少しだけ眉を寄せる。


「……あいつは、よく分からんな」


「え?」


レオンがきょとんとする。


「魔力の流れが妙だが、決して弱い訳じゃねぇ」


「でも、強いやつの流れとも違う」


ゼインは腕を組む。


「なんつーか……普通の後衛っぽくねぇな」


「本人も、よく分かってないんじゃないですかね」


横からセスが言った。


「だろうな」


ゼインは妙に納得した顔で頷く。


そして。


不意に、カイルの肩をバンと叩いた。


「まあお前は伸びる」


「もっと食え」


「はい!?」


「基礎は出来てんだから、後は身体作りだろ。

とにかく食って鍛えろ。話はそれからだ」


「雑!!」


セスが思わずツッコむ。

ミナが吹き出した。


ゼインは豪快に笑う。


「細けぇこと気にして強くなれるなら、誰も苦労しねぇよ!」


そして。


山盛りの肉皿を、

カイル達の前へ押し付けた。


「ほら食え!!」


「うおっ!?」



その頃、食堂の奥で、

レオンはマークの治療を受けていた。


包帯を外し、

傷口を確認する。


マークは静かに頷いた。


「傷自体の状態は悪くないですね」


淡い水色の魔力が広がる。


そこへ、土色の光が混ざる。


じわりと、傷が締まっていく感覚。


「……二属性魔術って、

こういう感じなんですね」


レオンが小さく呟く。

かなり高度な制御だった。


マークは少し表情を引き締めてレオンに言った。


「後方支援程度なら、恐らく問題ないと思います」


「ですが、傷が開けば意味がありませんから、無理は厳禁ですよ」


レオンは苦笑する。


「……気を付けます」


「ええ。明日はまず、うちの動きを見ていてください」


その堂々とした言葉は、自信の表れだった。


その後。


マークが貼り付けたような笑みを浮かべて、

机の上へ、小瓶を置く。


黒っぽい液体。

嫌な予感しかしない。


「私の作った活性化ポーションです」


「飲んでください」


レオンが顔をしかめた。


「……これ、絶対まずいですよね」


「効きますよ」


「味の否定はしてくれないんですね」


「早く飲んでください」


逃げ道が無い。


レオンは覚悟を決め、一気に飲み干した。


次の瞬間。


「っ!?!?」


甘いのか苦いのか辛いのか、

というか痛い。

舌が痺れる。

喉が熱い。


「な、なんですかこれ……!」


「良薬口に苦しです」


マークが爽やかに返す。


「苦いで済むレベルじゃないですよ!?」


そのやり取りを見て、

近くの兵士たちが笑っていた。



夜。


食堂の賑やかさから少し離れた、

防壁近く。


食事を終えたセスは一人、

森を眺めていた。


暗くて静かだ。


だが。


あの森の奥には、異常個体が居る。


そう思うだけで、喉が少し乾く。


「悩んでる顔だな」


低い声。


振り向くと、

そこにはバルクが立っていた。


書類の束を片手に持っている。


「……まあ」


セスは苦笑した。


「普通に危険なんで」


「そりゃそうだ」


バルクは隣へ並ぶ。


「怖くない方が異常だ」


風が吹く。

森が揺れる。

セスは少し黙ってから言った。


「...バルクさんなら、どうします?」


すると。


バルクは少しだけ考えた。


「俺なら行く」


即答だった。


「ただし、それを他人に強要はしねぇ」


「行かない選択も、間違いじゃねぇからな」


セスは静かに聞いていた。


「命が惜しいと思えるうちは、まだまともだ。

怖くなくなった奴から死ぬ。

そういう奴は山ほど見てきたよ」


重みのある言葉だった。


長年、現場を見てきた人間の声。


短い沈黙。


その後。


セスは小さく息を吐いた。


「……あの人、頭おかしいですよね」


ぽつりと漏れる。


「支援撒いて、戦線見て

本来の仕事じゃない索敵に指揮までやって」


「しかも自分でも戦ってた」


乾いた笑い。


「普通、どっかで役割分担するでしょ」


「なのに全部抱えてた」


「……やっぱり頭おかしいだろ」


本音だった。


バルクは、静かに森を見たまま答える。


「だから疲弊した」


「便利すぎる奴には、周りが甘える」


セスは黙る。

その言葉の中に、

自分たちも含まれていると、分かってしまったからだ。


「だからこそ、今度は周りが支える番だ」


風が吹く。

森が揺れる。


セスはその暗闇を見つめたまま、

小さく笑った。


「……借りを作りっぱなしって、嫌いなんですよね」


その呟きを聞いて。


バルクは、小さく笑った。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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