60:魔獣の肉
本日もよろしくお願いします。
会議が終わる頃には、
外はすっかり暗くなっていた。
防衛基地の食堂には、
いつもより少しだけ人が多い。
⸻
「おーい」
食堂入口から、ゼインの声が響く。
振り向いた兵士たちが、一斉に目を丸くした。
「……でっかぁ」
ミナが思わず呟く。
黒狼の牙の面々が、
巨大な猪型魔獣を運び込んできていた。
牙だけで、人の腕ほどある。
ドルガが片手で担いでいる。
余計におかしい。
「道中で狩った魔猪だ」
ゼインが笑う。
「どうせなら食おうと思ってな」
調理担当の男が、慌てて駆け寄った。
「こりゃまたデカいな……」
「血抜きは済ませてある。バラしてくれるか?」
マークが補足する。
「魔力濃度もそこまで高くありません。
普通に食べられると思いますよ」
調理人が感心したように頷く。
「助かる。この人数だと食料消費も激しくてな」
「任せろ。こういうのは得意だ」
そう言って、
料理人たちは慣れた手つきで解体を始めた。
その様子を見ながらカイルが目を輝かせる。
「魔猪ってうまいんだよな!」
「個体による」
セスが即座に返す。
「臭みが強いやつは香辛料が効かないんだ」
「あー、分かる」
マークが苦笑した。
「高濃度個体は特に、しっかり魔素を抜かないと。
魔食害が起きるので人には食べられませんよ」
ミナが顔をしかめる。
「魔食害って何……」
「痺れたり、舌がピリピリしたり、魔力の流れが乱れたり、色々ですね」
「うわぁ怖ぁ...」
「強い個体ほど、
ちゃんと下処理しないと食えねぇんだよ」
ゼインが椅子へ座りながら言う。
「逆に処理上手い奴がやると、めちゃくちゃ美味いぞ」
「へぇ……」
ミナが素直に感心する。
その横で、レオンは静かに食堂を見回していた。
兵士たちの表情が、少し柔らかい。
Bランク冒険者が来た。
原因調査も始まる。
終わりが見え始めた。
それだけで、空気は変わる。
⸻
「レオンさん」
振り向くと、マークだった。
「肩、少し見せてもらっても?」
「あ、はい」
レオンが包帯を外す。
マークは傷を確認し、静かに手をかざした。
淡い水色の魔力。
そこへ、土色の光が混ざる。
じわりと、熱が広がった。
「……すごい」
思わずレオンが呟く。
「二属性ですか?」
「ええ」
マークが微笑む。
「水だけだと治癒は得意なんですが、傷の固定力が弱くて。土を混ぜると安定するんですよ」
かなり高度な制御だった。
「食事が終わったらもう一回状態を見させてください」
「ありがとうございます」
その時。
「おおおお!!」
カイルの声に振り向くと、
大量の様々な肉料理が運ばれてきていた。
香ばしい匂い。
肉汁。
湯気。
一瞬で食堂の空気が変わる。
「うまそぉ……」
ミナが本気の顔で呟く。
ゼインが笑った。
「さぁ、食える時に食っとけ!」
「戦士は、腹減ってる時が一番弱ぇ!」
その言葉に何人かの兵士が笑う。
食堂に、賑やかな声が広がっていく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
出発までの話は後1話あります。
本日17時更新分はこちらともう1話になります。
明日からは任務のために森に出発する話になります。
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