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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:四つ腕

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59/135

59:出発前夜

本日もよろしくお願いします。

会議が終わり、

冒険者たちはそのまま別室へ移動していた。


小さな作戦室。

簡素な机と椅子。


そこへ、バルクが腕を組んだまま入ってくる。



「明日から、森内部への調査を開始する」


単刀直入だった。


「《黒狼の牙》を中心に、原因となっている異常個体を探る」


「お前ら冒険者組も同行対象だ」


静かな空気。


だが。


バルクは続ける。


「……とはいえ、元々お前らは防衛任務で来てる」


「森へ入るかは自由だ」


カイルたちが顔を上げる。


「断っても査定には響かねぇ」


「危険度が違うからな」


防衛任務、それと、

異常個体の討伐調査。


全く別物だ。

特に今回は、既に複数の異常兆候が出ている。


危険なのは、誰の目にも明らかだった。


その空気をぶち壊したのは、カイルだった。


「行くに決まってるだろ」


即答。


「B級パーティの戦い見れるんだぞ?」


「こんな機会、二度とねぇかもしれねえ」


真っ直ぐな目。

打算も迷いもない。

すると。


「あたしも行く!」


ミナが勢いよく手を上げた。


「絶対強いじゃん!見たいし!」


「いや、遊びじゃないんだぞ……」


セスが呆れた顔をする。


「分かってるって!

でも実戦で見るのが一番勉強になるじゃん!」


それは確かだった。


才能ある若手ほど、上位者の実戦から学ぼうとする。


ミナはまさにそのタイプだ。


そこで、バルクの視線がレオンへ向く。


「お前はどうする」


レオンは少し考え、静かに口を開いた。


「……正直、今の状態で戦闘は厳しいと思います」


肩の傷。


そして、

四羽目酷使による疲労。


まだ完全には戻っていない。


「今日までやっていたような索敵や指揮の補助は、しばらくは厳しいと思います」


レオンは静かに言った。


「森の中で戦いながらだと、集中するのが難しいです」


「ですが」


そこで、

レオンは顔を上げた。


「後方支援なら出来ます」


「役に立てるなら、同行したいです」



その言葉へ。


「何言ってるんですか」


エリスが即座に反応した。


「怪我人ですよ!?」


珍しく強い声だった。


「肩だってまだ……」


言葉を止める。


だが。


その表情には、

はっきりと心配が出ていた。



レオンは少し困ったように笑う。


「無理はしません」


「足を引っ張るようなら、

無理について行くつもりもありません」


その返答へ。


「いや、居てくれた方が安心だろ」


カイルが即座に言った。


「レオンの補助はかなり有用だし」


「うんうん!」


ミナも激しく頷く。


「あたし、レオンさん居る時の方が絶対動きやすいし!」


「それはちょっと反省しろ」


セスが即座にツッコむ。


「えー」


ミナが不満そうな顔をした。


その横で、

マークが静かに口を開く。


「傷自体は、

今日中にある程度回復できると思います」


全員がそちらを見る。


「完全治癒は無理ですが、

戦闘補助程度なら問題ないレベルまでは」


穏やかな声。


「状態を見て、最終判断でいいんじゃないですか?」


かなり現実的な提案だった。


そこで、バルクの視線が、最後にセスへ向く。


「お前は」


少しの沈黙。


セスは椅子へ深く座ったまま、天井を見る。


「……正直、悩んでます」


静かな声だった。


「B級パーティの皆さんが居ても、異常個体戦は普通に危険だ」


誰も否定しない。


「俺、そこまで楽観できるタイプじゃないんで」


皮肉気味に笑う。


「明日の出発までには決めます」


保留。


だが。



それが一番自然だった。



命がかかった話なのだ。

簡単に答えを出せるものではない。


重くなりかけた空気。


そこで。


「――よし」


ゼインが立ち上がった。


「難しい話はここまでだ」


大きく肩を鳴らす。


「何はともあれ、まずは飯食おうぜ」


その場の空気が、少しだけ緩む。


ゼインはニヤリと笑った。


「腹減ってる時の判断なんざ、

大体ロクなもんにならねぇ」


「まず食って寝る」


「話はそれからだ」



その言葉に、カイルが吹き出した。


「確かに!」


「お前は単純すぎるだろ」


セスが呆れたように返す。


だが。


その空気は、決して悪くなかった。


張り詰め続けていた現場の雰囲気が、

いい方向に弛緩した気がした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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