56: 森の奥から来るもの
本日もよろしくお願いします。
戦闘終了後。
防壁周辺には、
魔物の死骸が並んでいた。
兵士たちが回収作業を進め、
負傷者の確認も行われている。
「肩、縫いますよ」
「お願いします……」
レオンは防壁脇へ座り、
治療兵から応急処置を受けていた。
傷自体は浅くはないが、行動できなくなるほどの深さではない。
問題は別にある。
頭が重い。
四羽目を長時間かつ高頻度で酷使した反動が、
まだ残っていた。
「かなり疲労が見られますよ」
包帯を巻きながら、
治療兵が心配そうに言う。
レオンは苦笑した。
「レオンさん」
エリスだった。
「先ほどの件、詳しく聞かせてください」
真剣な表情。
レオンも、すぐに空気を察した。
「あれ、ですよね」
「はい」
防壁上で見た、四つ腕の猿型。
レオンは小さく息を吐く。
「魔物を回収していました」
「回収……?」
エリスが眉を寄せる。
「狼型たちも、あれに従ってるみたいだったんです」
普通ではない。
魔物同士の連携自体は、
珍しくない。
群れを作る種もいる。
だが。
“統率”しているように見えた。
それが異常だった。
「しかも……」
そこで、
レオンは少し言葉を止めた。
⸻
脳裏へ蘇る。
灰色の巨狼。
異常な魔力。
本能的な恐怖。
以前、リオたちと遭遇した、
あの狼型の異常個体。
姿形は違う。
だが。
「雰囲気が異質なんです」
「雰囲気?」
「……説明しづらいんですけど」
レオンは眉を寄せる。
「普通の魔物じゃない感じというか」
「見た瞬間、嫌な感じがしたんです」
「前に遭遇した、異常個体と同じような……」
エリスの表情が険しくなる。
レオンへの指名依頼の際の事前情報として、
過去にどのような任務をこなしてきたのか、
彼女も確認させてもらっていた。
巨大な狼型。
異常な身体能力。
そして。
通常個体とは明らかに異なる魔力反応。
もし。
今回の猿型も同系統なら。
この森で起きている異変は、
想像以上に危険かもしれない。
その時だった。
⸻
見張りの兵士が声を上げる。
「何か近寄ってきています!」
「人影です!」
⸻
数分後。
防壁前へ現れたのは、四人組だった。
全員、使い込まれた装備。
長距離移動の汚れ。
そして、
明らかに、直近で戦闘を行ったであろう、
返り血。
⸻
纏う空気が違う。
前へ出た大柄な男が、
防壁を見上げた。
背には巨大な戦斧。
「……ようやく着いたか」
低い声。
その隣。
短く切った赤髪の女性が、
周囲の森を睨んでいた。
腰には二振りの細剣を携えている。
「中々苦労したね」
「あの森抜けるだけで三回襲撃だ、そりゃあ疲れる」
二人とも、
多少の疲れはある様子だが、
いつでも戦いに移れる状態のようだ。
後ろにいる残りの2人も、かなりの場数を踏んできている様子で、防衛拠点の前にいるにもかかわらず、油断した様子は一切ない。
⸻
バルクが防壁上へ現れる。
「王都からの派遣か!」
⸻
「ああ!」
大斧の男が頷いた。
「Bランクパーティ《黒狼の牙》だ!」
周囲の兵士たちが、
小さくざわつく。
Bランク。
地方では滅多に見ない、
一流級冒険者。
男――ゼインは、
森の方を振り返った。
その表情は険しい。
「……嫌な森だな」
「まるで魔境だ」
その一言で。
防壁上の空気が、静かに冷えた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
前話ですが、予約投稿設定を忘れていてそのまま公開してしまいました。
ここで新たな登場人物の登場です。
夕方の本編投稿とは別に、
こちらのお話を公開したすぐ後に、
ここまでの登場人物の一覧を載せておきます。
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