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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


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51/52

51:当たり前になった声

本日もよろしくお願いします。

■八日目


四日目の大規模襲撃以降、

現れる魔物は小規模群れが中心。


現状維持の状況ではあるが、

現場は明らかに余裕のある状況であった。


「西側、群れ!規模小!」


朝の警鐘。


兵士たちが配置へ向かう。


その動きにも、

もう慌てた様子は無い。


「第二班は右翼維持!」


エリスが指示を飛ばす。

兵士たちが動く。


だが。


森側の視界が悪い。


木々の影で、群れの全貌が見えない。


一瞬。


エリスの判断が止まった。


その瞬間、レオンは反射的に四羽目を飛ばしていた。


視界共有。


上空から森の隙間に走る影を捉えた。


位置。

距離。

速度。


必要情報だけを拾う。


以前より、ずっと上手く扱える。


「後方に二体隠れてます!」


「……右翼警戒!」


エリスが即座に指示修正。

兵士たちが動く。


迎撃成功。


負傷者なし。


「今日も問題なーし!」


ミナが息を吐く。


「やっぱ先に位置分かると全然違うな」


カイルも頷いた。


レオンは曖昧に笑い返す。


だが、4羽目との共有を解除した瞬間。


「っ……」


視界が揺れた。

以前ほど酷くはない。

吐き気も少ない。


だが。


頭の奥へ、鈍い熱が残る。


蓄積。


少しずつ、確実に。


それでも。



次の警鐘が鳴る。


「南側接敵!」


兵士たちが動き出す。


エリスは一瞬だけ、

レオンを見た。



“休ませるべき”。



その考えがよぎる。


だが。


「三方向です!」


レオンの方が先に動いていた。


視界共有。


また頭の奥が軋む。


それでも。


被害が減る。

皆が動きやすくなる。


それが分かるから、止まれない。



夜。


簡素な机へ突っ伏したまま、

レオンは動けなくなっていた。


頭痛。


視界の残像。


目を閉じても、

上空からの景色がちらつく。


「……疲れてるな」


小さく呟く。

以前より扱える。

一回ごとの負担も減った。


だが。


使う回数が増えすぎている。


少しずつ、確実に、


疲労だけが積み上がっていた。


それでも。


“明日休もう”。


そこまでは、

まだ思えなかった。



■九日目


朝。


「……顔色が悪いな」


セスが眉を寄せた。


集合したレオンの顔は、

明らかに青い。


「少し頭痛がするだけです」


「それを普通は不調って言うんだよ」


珍しく、ミナまで真顔だった。


エリスも黙ってレオンを見る。


そして。


「今日は待機してください」


静かに告げた。


レオンが何か言いかける。


だが。


「これは命令です」


現場を指揮する者としての声だった。


数秒の沈黙。


やがてレオンは、小さく頷く。


「……分かりました」


そして、

久しぶりに。


“レオン抜き”の迎撃が始まる。



「前衛維持!」


エリスが指示を飛ばす。

兵士たちが動く。

連携自体は崩れない。

実力も足りている。


だが。


「……見づらいな」


カイルが小さく呟いた。


死角確認。

敵数把握。

接近予測。


今まで、レオンから的確に共有されていた情報が無い。


「右二――いや三!?」


判断が遅れ、その瞬間。


「っ!?」


ミナが一歩避け損ねた。


魔物の爪が腕を裂く。


「ミナ!」


セスが即座に援護へ入る。


致命傷ではない。

だが、今までなら、

避けられていた負傷だった。



迎撃終了後、誰もが少し疲れた顔をしていた。


「……なんか、今日やりづらくなかった?」


ミナが包帯を巻きながら言う。


「まあ、レオンが居なかったしな」


カイルが返す。

そこで。

セスが小さく息を吐いた。



「違う」



全員がそちらを見る。


「俺たち、あいつに頼りすぎていた」


静かな声だった。


「敵見つけるのも、位置判断も、危険察知も」


「全部、あいつが先にやっていた」


誰も反論できない。


「……でも、指揮に従うのは普通じゃない?」


ミナが言う。

それも正しい。


防衛戦で、勝手な行動は危険だ。


だが、セスは首を振る。


「指示を聞くのはいい」


「でも俺たち、考える前にあいつを見ていただろう」


その言葉で、全員が思い出す。


『レオン、どう動く?』

『敵数は?』

『見えるか?』


いつの間にか、自己判断すら預け始めていた。


沈黙が落ちる。

その中で。


セスが静かに呟いた。


「索敵だけじゃない、……あいつ、俺たちの判断負荷そのものを減らしていたのか」


誰も、すぐには言葉を返せなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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