50:重なる視界
本日もよろしくお願いします。
七日目の夜。
防衛基地は静かだった。
四日目の大規模襲撃以降、
現れる魔物は小規模な群ればかり。
対応にも余裕が戻り始めている。
食堂の方から笑い声も聞こえていた。
その一方で。
「……はぁ」
レオンは自室の簡素な椅子へ腰掛け、
深く息を吐いていた。
妖精鳥たちが、
部屋の中を静かに飛び回っている。
その内の一羽。
四羽目が、
レオンの膝へ止まった。
「大丈夫だよ」
そう声をかけながら、自分でも苦笑する。
全然大丈夫そうな顔じゃない。
頭が重い。
視界共有を解除してから、
もうかなり時間が経っている。
それでも。
時折、
視界の端へ別の景色がちらつく。
森。
夜空。
上空から見下ろした防壁。
四羽目の残滓。
最初は、数秒使うだけで吐き気がしていた。
酷い時は立っていられなかった。
だが今は違う。
必要な情報だけを拾える。
視界全部を見ようとしない。
敵位置。
数。
動き。
重要なものだけを選別する。
それが、少しずつ出来るようになっていた。
「……慣れてきてはいるんだよな」
実際、
以前ほど酷くはない。
一回ごとの負担は減っている。
だが。
「……回数が多すぎる」
小さく呟く。
今日は何回使った。
十回。
いや、もっとかもしれない。
短時間でも、繰り返せば疲労は積み重なる。
特に厄介なのは、視界共有中ではない。
終わった後だ。
頭の奥に、熱が残る。
思考が鈍くなる。
集中が切れる。
時々、自分の視界と四羽目の視界の境界が曖昧になる。
酷い船酔いに近い。
それでも。
「まだ使える」
そう思えてしまう。
それが一番危なかった。
被害は減っている。
実際、役に立っている。
皆も、自分を頼るようになってきた。
それ自体は、悪い気分じゃない。
少なくとも。
五年前。
冒険者登録したばかりの頃には、
想像も出来なかった。
“必要とされる”。
その実感。
レオンは目を閉じる。
妖精鳥が、
静かに肩へ止まった。
「……あと少しだけだからな」
二週間の任務期間。
折り返しは過ぎた。
ここで倒れるわけにはいかない。
そう思ってしまう時点で、
もうかなり、
無理をしていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回はレオン視点で自分の状況確認を行う回にしました。
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