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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


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47/52

47:見えていなかったもの

本日もよろしくお願いします。

■バルク


報告書を閉じる。


机上に並ぶ、

ここ数日の防衛記録。


負傷者数。

巡回状況。

迎撃回数。


そして。


四日目の大規模襲撃。


「……軽すぎる」


バルクは小さく呟いた。


本来なら、

死者が出てもおかしくない規模だった。


だが実際は違う。


重傷者はいた。


それでも。


防衛線は崩壊せず、

死者も出ていない。


若手たちは喜んでいる。


兵士も冒険者も、

“上手くいっている”と思っている。


実際、

それ自体は間違いじゃない。


だが。


「上手く回りすぎてる」


経験上、

そういう現場は危ない。


誰かが。


無理をしている。


バルクは椅子へ深く座り、

短く息を吐いた。


「エリスを呼べ」



■エリス


呼び出された理由が分からなかった。


夜。


防衛責任者室の扉を叩く。


「失礼します」


「入れ」


中ではバルクが報告書を見ていた。


「座れ」


「はい」


少し緊張する。

叱責だろうか。


四日目の防衛戦。


損耗自体は抑えられた。

だが完璧ではない。

何か問題があったのかもしれない。


「防衛線の維持自体は悪くなかった」


バルクが先に口を開いた。


「よく持たせた方だ」


「ありがとうございます」


エリスは少し安堵する。


だが。


次の言葉で止まった。


「……で、レオンはどうだ」


「え?」


思わず聞き返した。


「召喚士の方ですか?」


「ああ」


なぜそこで、

彼の名前が出るのか。


エリスは少し考えた後、

素直に答える。


「非常に優秀です。索敵能力も高いですし、

現場判断も的確で――」


「違う」


バルクが遮った


「そういう話じゃねえ」


空気が変わる。


「お前、あいつの疲弊見てたか?」


「……疲弊?」


頭が真っ白になる。


疲弊。


そんな視点で、

考えたことがなかった。


「四羽目の視界共有」

「あれ、相当脳へ負荷かかってるはずだ」


バルクは報告書へ視線を落とす。


「なのにお前ら、

小規模戦闘でも毎回あいつに聞いてる」


エリスの呼吸が止まる。


思い返す。


『レオン、右見える?』

『次どう動く?』

『敵数は?』


当たり前みたいに。


皆、

レオンへ確認していた。


自分も。


「……ですが、彼が居た方が損耗が減ります」


気づけば、

そんな言葉が出ていた。


すると。


バルクは静かに頷く。


「だから危ねえんだ」


低い声だった。


「優秀な支援役ってのはな、気付いた時には、全員そいつ前提で動き始める」


エリスは何も言えなかった。


「お前らが弱いんじゃねえ、むしろよくやってる」


「だが、あいつ一人へ判断集まり始めてるぞ」


その言葉で。


初めて。


エリスは思い出す。



戦闘後。


レオンは壁へ手をついていた。

顔色も少し青かった。


それでも。


「大丈夫です」


と笑っていたことを。



「……私は」


声が掠れる。


「気づいていませんでした」


バルクは短く息を吐く。


「経験だ」


責める声ではなかった。


「現場が回ってる時ほど、誰が無理してるか見ろ」


その言葉が、

エリスの胸へ深く残った。


部屋を出た後、冷たい夜風が頬を撫でる。


防壁上。

巡回灯の向こう。



一人、

壁にもたれて座る影が見えた。



銀髪の召喚士。


レオン・アルバーン。



彼は静かに目を閉じたまま、

妖精鳥たちに囲まれていた。



エリスは少し迷い。


そして。


ゆっくりと、

その方へ歩き出した。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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