46:任せる
本日もよろしくお願いします。
■五日目
四日目の大規模襲撃以降、魔物の数は減っていた。
「三体確認!」
防壁外。
小規模の狼型の群れを相手に、兵士たちは即座に配置へ着く。
本来なら、既に共有済みの対処手順で十分対応可能な規模だった。
「第一班牽制、第二班側面――」
エリスが指示を出しかける。
その時。
「レオン、右見えるか?」
兵士の一人が聞いた。
レオンは反射的に四羽目を飛ばす。
視界共有。
瞬間、
軽い吐き気。
「……二体、右から回ります」
「了解!」
兵士たちが即座に対応。
数分後、戦闘終了。
被害なし。
⸻
「やっぱレオンいると楽だなー」
ミナが笑う。
「助かる」
カイルも短く頷いた。
レオンは苦笑する。
だが、本来なら、
今のは聞かなくても処理できる戦闘だった。
⸻
■六日目
「東側小規模群れ!」
再び警鐘。
今度は猪型二体。
兵士たちは落ち着いていた。
昨日の戦闘を経て、
恐慌は薄れている。
「レオン、数は?」
「……二です」
「動きは?」
「左寄りです」
自然だった。
誰も違和感を持たない。
レオンが見て。
レオンが確認して。
そこから動く。
それが、
いつの間にか当たり前になっていた。
戦闘は問題なく終了した。
だが。
「……っ」
レオンは壁へ手をつく。
視界共有の時間自体は短い。
それでも、回数が増えていた。
脳へ負担が積み重なっていく。
妖精鳥が、
心配そうに肩へ止まった。
「大丈夫です」
そう返す。
誰に聞かせるでもなく。
⸻
その夜、食堂にて。
「最近かなり安定してるよな」
兵士たちが笑っている。
「あの召喚士来てから変わった」
「助かってる」
空気は悪くない。
むしろ良い。
だが。
「……」
バルクだけは黙っていた。
彼は知っている。
“楽な現場”ほど危ういことを。
「責任者殿?」
隣の兵士が声をかける。
「どうしました?」
バルクはしばらく黙った後。
「……あの召喚士はどこだ」
「レオンですか?」
兵士は周囲を見る。
だが居ない。
まただ。
戦闘後、いつも最初に消える。
騒ぎにも加わらない。
「……」
バルクは小さく息を吐く。
今日の戦闘。
本来なら、現場判断だけで十分回せた。
だが皆、先にレオンを見た。
確認し、判断を預けた。
本人たちは、
信頼のつもりなのだろう。
だが。
「寄りかかり始めてるな……」
誰にも聞こえない声だった。
⸻
その頃
レオンは部屋で、
椅子にもたれたまま目を閉じていた。
頭が重い。
視界共有の残滓が、
まだ脳裏へちらついている。
それでも。
明日も必要なら、使う。
その考えが、
もう当たり前になっていた。
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