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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


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38/52

38:指名依頼

本日もよろしくお願いします。

「……増えてるな」


掲示板前で、レオン・アルバーンは小さく呟いた。


依頼ではない。


視線だ。


ギルドへ入った瞬間から、妙に周囲がこちらを見ている。


「あれだろ」

「異常個体の……」

「リオと一緒にいた」


小声。

以前より露骨だった。

レオン自身は、あまり慣れていない。

なので普通に居心地が悪い。


「お、いたいた」


受付側から声。


見れば受付嬢がこちらへ手を振っていた。


「ギルド長から呼び出しです」


「……何かやりましたか?」


「その反応、心当たりある人のやつですよ」


「ないです」


少しだけ笑われた。



ギルド長室。


「座れ」


レオンは素直に椅子へ座る。

ギルド長は書類を見ながら言った。


「お前、“指名依頼”入ったぞ」


「……はい?」


予想外だった。


指名依頼。

特定の冒険者を名指しで要請する依頼。

普通はCランク以上にされることが多いもので、Dランク個人への指名は珍しい。


「町外れの鉱山村だ」


ギルド長が地図を広げる。


「最近、夜間の魔物襲撃が増えてる」


「防衛依頼ですか?」


「ああ。だが、少し違う。向こうの要望は、“支援役を含めた防衛指揮補助”」


レオンは少し黙った。


支援。


そして。


“指揮補助”。


異常個体戦。

町防衛。


そこでの動きを見た者がいたのだろう。


「……僕ですか?」


「お前だ」


ギルド長は腕を組む。


「正直、まだDランクに来る依頼じゃねえ」


「だが向こうが指名してる」


さらに。


「あと、お前以外にも寄せ集めだ」


資料が渡される。


•Eランク双剣使い

•Dランク槍士

•Dランク弓手


固定パーティではない。

レオンは少しだけ息を吐いた。

最近こういう形が増えている。


そして多分。


“だからこそ”呼ばれている。



訓練場。


リオは面白そうに笑った。


「へぇ、指名依頼か。出世したじゃん」


「そういう感じじゃないですよ」


「いや結構すごいぞ?」


リオは普通に評価している。


「支援役の指名って、上の連中ほど慎重だからな」


単純な火力職なら分かりやすい。

だが支援役は違う。


相性。

判断。

継続力。


“実際に組んだ評価”がかなり重要。


だからこそ。


「あー……」


リオがニヤニヤする。


「ちゃんと見られてたんだな」


レオンは少しだけ困った顔をした。



「で、視界共有は?」


「まだ十数秒です」


「いや、前数秒だっただろ。十分おかしい」


リオが笑う。


実際、かなり慣れてきていた。

もちろん酔うから長時間は無理。

だが以前ほど酷くない。


そして何より。


“必要な情報を選ぶ”という感覚が少し分かり始めていた。


例えば。


•人数

•配置

•死角

•動線


そういうものだけ抜き出す。

すると脳への負荷が減る。


まだ実戦投入には危険だが、確実に前へ進んでいた。



「ほーん」


後ろから声。

木盾を抱えたガドだった。


「指名依頼か」


「情報早いですね」


「ギルド内で噂になってる」


当然だった。

Dランク召喚士への指名依頼。

しかも防衛案件。

珍しい。


ガドは少し真面目な顔になる。


「で、受けるのか?」


「……はい」


迷いはなかった。


するとガドは頷く。


「なら一個だけ覚えとけ」


「?」


「“お前が全部やる必要はねえ”」


レオンは少し黙る。


「支援役ってのはな、時々、“全員支えなきゃ”って考えすぎる」


ガドは木盾を肩へ担ぐ。


「でも実際は違う。

 戦えるやつは、自分でも戦うんだよ。

 お前は“回す”こと考えろ」


その言葉は、

妙に今のレオンへ刺さった。


全部を見ようとして潰れかけた経験はいくつか思い当たる。


でも、


必要なものを選べば、戦場は整理できる。


多分それは、視界共有も同じだ。



夜。


宿部屋。

レオンは荷物を整理していた。


杖。

小剣。

魔導書。

保存食。


そして、四羽の妖精鳥。


ふわふわ漂う小さな光。

以前より賑やかだ。


淡銀の四羽目が、

机の上からこちらを見ている。


「……今度は実戦ですね」


少し不安はある。


だが。


不思議と、

以前ほど焦ってはいなかった。


積み重ねる。


少しずつ。


それでいい。

一気に飛び越えていくような才能は、

自分にはないのだから。


窓の外。


夜風が町を抜けていく。


その先。


魔境側の空は、

静かに黒く沈んでいた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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