表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/53

35:心配と安心と

本日もよろしくお願いします。

ガドは丸太椅子へ深く腰掛けたまま、ふっと笑った。


「まあ、俺な、昔から新人見るの好きなんだよ」


レオンは少し意外そうな顔をする。


「……そうなんですか?」


「ああ」


ガドは訓練場の方へ視線を向けた。


木剣を振る新人。

怒鳴る先輩冒険者。

ぎこちない足運び。


どこにでもある光景。


「年長者の趣味みてえなもんだ」


「誰が伸びるか、誰が潰れそうか、誰が変な死に方しそうか。なんとなく見てる」


軽い口調だった。

だが、その言葉には妙な重みがあった。


「……レオン、お前も割と昔から見てたぞ」


レオンは少し目を見開く。


「最初は、妙に気ぃ遣うガキだなって思ってた」


「……否定しづらいです」


「でも、ちゃんと周り見れてた」


ガドは続ける。


「支援役ってのはな、“自分以外を見る癖”がねえと務まらねえ。だからお前、多分長く生き残るタイプだと思ってた」


一拍置いて。


「……まあ、ちょっと生き急ぎ始めた時は心配したがな」


しばらく沈黙。


風が吹く。


訓練場の木剣の音が遠くで響いていた。


その後、ガドがぽつりと言う。


「……正直、少し気にしてたんだよ」


「?」


「お前のこと」


レオンは静かに視線を向ける。

ガドは頬を掻いた。


「あの昇格試験落ちた辺りからな」


「……」


「なんつーか、“生き急いでる”感じしてた」


その言葉に、

レオンは少しだけ目を伏せた。


否定できない。


依頼を詰め込み、

無理にでも前へ進もうとしていた。


焦っていた。


置いていかれたくなくて。


「若いやつって、時々いるんだよ」


ガドが言う。


「“立ち止まったら終わる”みたいな顔するやつ」


「……」


「でもな、そういうやつほど無茶して死ぬ。だから少し心配だった」


ガドはそう言って笑う。


「けど、最近はいい顔してる」


レオンは少し驚いた。


「町防衛の時からかな」


「あの辺りから、お前」


“前向いて戦えてる顔”になった。


以前みたいな、


焦燥だけの顔じゃない。


ちゃんと、積み重ねながら前へ進もうとしている。


「だからまあ」


ガドは肩を回す。


「安心して上がれるかなって」


“上がる”。


冒険者を辞めることを、この人はそう言った。


終わる、じゃなく。



次へ行く。


そういう響きだった。



ガドが立ち上がる。


傷んだ脚を庇うように。


それでも背中は大きい。


「お前、多分まだ強くなるぞ」


レオンは黙って聞く。


「でも、“強くなる”ってのはな」


ガドは笑った。


「別に、無茶することじゃねえからな」


夕陽が差す。

長い影。


レオンはその背中を見ながら思う。


冒険者には、色んな終わり方がある。


死ぬ者。

壊れる者。

消える者。


でもきっと。


こういう終わり方は、


悪くない。


「……今度、稽古つけてください」


するとガドは吹き出した。


「引退したオッサンを働かせる気か?」


「たまにでいいので」


「しゃーねえな」


笑い声が、静かな裏庭に響く。


その光景はどこか穏やかで。


少しだけ、


未来を感じさせる時間だった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

ガドはいいキャラクターになってくれたと思います。

引き際が美しいキャラは筆者の癖なので、この話結構気に入っています。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ