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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
療養と新しい力

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34/143

34:盾を置く日

本日もよろしくお願いします。

呼び出しがあった。


「ガドさんが?」


昼下がり。

ギルド受付でそう聞かされて、レオンは少し首を傾げた。


「はい。裏庭にいると思いますよ」


受付嬢が微笑む。


「……珍しいですね」


普段のガドは、ギルド酒場か依頼掲示板前にいることが多い。


裏庭。


そこは新人冒険者が訓練に使う場所だった。


⸻


レオンが向かうと――


「お、来たか」


木陰。

丸太椅子に腰掛けたガドが片手を上げた。


その隣には、大盾。

長年使い込まれた傷だらけの、

それでいて手入れの行き届いた、


彼の相棒。


「話って何ですか?」


レオンが近づく。

するとガドは少しだけ空を見上げた。


⸻


「……俺、引退するわ」


⸻


レオンは目を瞬かせた。


「……急ですね」


「まあな」


ガドが笑う。


「でも、前から考えてた」


ガド・バレイン。

四十五歳。


冒険者としては、かなり年長だ。


もちろんガドよりも年上の冒険者もいる。

だが、前線職として長く戦い続けられる人間は少ない。


特に大盾使い。


“受ける”役割は、身体への負担が大きすぎる。


「最近、分かるんだよ」


ガドは自分の左脚を軽く叩いた。


「反応が遅ぇ」


「……」


「若い頃なら間に合ってた一歩が、間に合わねえ」



軽く言っている。

だが、それがどれだけ重い話かはレオンにも分かった。


「この前の町防衛戦見ててもな」


ガドは苦笑する。


「昔の俺なら、もっと前で踏ん張れてたって思っちまった」


町へ押し寄せた魔物の群れ。

あの時、ガドも最前線の一角に立っていた。


だが実際には、若い冒険者たちを支える側に回る場面の方が多かった。


「衰えってのは、ある日急に来るんじゃねえ」


「少しずつ、“できねえこと”が増えるんだ」


冒険者にとって、

“衰えを自覚する”のは酷く残酷だ。


それでもガドは、どこか吹っ切れた顔をしていた。


「で、完全に暇になるのも性に合わねえからな」


ガドは続ける。


「町の自警組織に入ることになった」


リスベルの衛兵隊は人数が少ない。

そのため、元冒険者中心の補助組織が存在する。


巡回や避難誘導、低級魔物対処など、正規衛兵の補佐役のような役回りだ。


「あと、ギルドでたまに実技教官もやる」


「教官、ですか」


「あんま似合わねえなって顔すんなよな」


ガドが笑う。


「体動かすことしか取り柄ねえからな、俺」


でも、レオンは思った。


多分この人は、“教える側”に向いている。


強さだけじゃない。


失敗も。

衰えも。

生き残る難しさも。


全部知っているから。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

ガドは正ヒロインです()

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