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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


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34/55

34:盾を置く日

本日もよろしくお願いします。

呼び出しがあった。


「ガドさんが?」


昼下がり。

ギルド受付でそう聞かされて、レオンは少し首を傾げた。


「はい。裏庭にいると思いますよ」


受付嬢が微笑む。


「……珍しいですね」


普段のガドは、ギルド酒場か依頼掲示板前にいることが多い。


裏庭。


そこは新人冒険者が訓練に使う場所だった。



レオンが向かうと――


「お、来たか」


木陰。

丸太椅子に腰掛けたガドが片手を上げた。


その隣には、大盾。

長年使い込まれた傷だらけの、

それでいて手入れの行き届いた、


彼の相棒。


「話って何ですか?」


レオンが近づく。

するとガドは少しだけ空を見上げた。



「……俺、引退するわ」



レオンは目を瞬かせた。


「……急ですね」


「まあな」


ガドが笑う。


「でも、前から考えてた」


ガド・バレイン。

四十五歳。


冒険者としては、かなり年長だ。


もちろんガドよりも年上の冒険者もいる。

だが、前線職として長く戦い続けられる人間は少ない。


特に大盾使い。


“受ける”役割は、身体への負担が大きすぎる。


「最近、分かるんだよ」


ガドは自分の左脚を軽く叩いた。


「反応が遅ぇ」


「……」


「若い頃なら間に合ってた一歩が、間に合わねえ」



軽く言っている。

だが、それがどれだけ重い話かはレオンにも分かった。


「この前の町防衛戦見ててもな」


ガドは苦笑する。


「昔の俺なら、もっと前で踏ん張れてたって思っちまった」


町へ押し寄せた魔物の群れ。

あの時、ガドも最前線の一角に立っていた。


だが実際には、若い冒険者たちを支える側に回る場面の方が多かった。


「衰えってのは、ある日急に来るんじゃねえ」


「少しずつ、“できねえこと”が増えるんだ」


冒険者にとって、

“衰えを自覚する”のは酷く残酷だ。


それでもガドは、どこか吹っ切れた顔をしていた。


「で、完全に暇になるのも性に合わねえからな」


ガドは続ける。


「町の自警組織に入ることになった」


リスベルの衛兵隊は人数が少ない。

そのため、元冒険者中心の補助組織が存在する。


巡回や避難誘導、低級魔物対処など、正規衛兵の補佐役のような役回りだ。


「あと、ギルドでたまに実技教官もやる」


「教官、ですか」


「あんま似合わねえなって顔すんなよな」


ガドが笑う。


「体動かすことしか取り柄ねえからな、俺」


でも、レオンは思った。


多分この人は、“教える側”に向いている。


強さだけじゃない。


失敗も。

衰えも。

生き残る難しさも。


全部知っているから。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

ガドは正ヒロインです()

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