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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
山岳地帯調査

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30/143

30:最期の攻撃、そして帰還

本日もよろしくお願いします。

異常個体の黒狼が崩れ落ち、その少しあと。


砕けた“核”から、赤黒い魔力が噴き出した。


「下が――」


リオが叫ぶ。


だが、遅い。


⸻


轟ッ――!!


⸻


暴風、そして爆ぜるような衝撃波が周囲を薙ぎ払った。



木々が揺れる。

岩が砕ける。


レオンは咄嗟に杖を突き立てる。

妖精鳥を全開で展開。


「耐えてくださいッ!」


ダグラスが盾を地面へ押し込む。

弓手と回復術師が身を伏せる。


だが。


「リオ!!」


一番近くにいたリオが吹き飛ばされた。


岩へ激突。

鈍い音。


「っ……!」


レオンが駆け寄る。


腕が、不自然に曲がっていた。


さらに、全身に裂傷。


風圧に混じった魔力片で切り裂かれたのだ。


血が滲む。


「骨、いってるな……」


ダグラスが顔をしかめた。


リオは苦笑する。


「いやー……最後に派手なの残してたなあ。意地が悪い時間差攻撃だよ全く...」


「喋らないでください」


レオンが即座に治癒支援を飛ばす。

完全治癒は無理だが、痛みは多少抑えられる。


回復術師も治療へ入る。


「応急固定します」


折れた腕を固定。

止血。

裂傷処置。


⸻


一通り終わった頃には、全員疲労困憊だった。


「……しかし、これ」


弓手が黒狼の死体を見る。


「完全に任務内容超えてるだろ」


今回の依頼は本来、《山岳地帯調査・護衛任務》。


最近増えている魔物異常の調査、そして、その調査員たちの護衛。


二班編成だった。


レオンたち“調査班”は、

異常の痕跡確認と原因調査を担当し、

別動の“護衛班”は、

荷運びや研究員の護衛を主目的として動いていた。


異常個体と遭遇したのは、調査範囲を広げたレオンたち側だった。


「戦闘音、かなり響いてたよな……」


ダグラスの呟きに、リオが頷く。


「護衛班、危険判断して下がったかもな」


当然の判断だった。


このレベルの戦闘に巻き込まれれば、普通は壊滅する。



帰りにはかなり時間がかかった。

リオは歩ける状態ではないため、ダグラスとレオンで支えながら進む必要があった。


「悪いな」


リオが苦笑する。


「……いつも前走ってる人の台詞じゃないですね」


レオンが返す。


「はは、違いねえ」


全員疲弊していた。

軽口でも叩いていないとやっていられない。

レオンも魔力がかなり減っている。


それでも、誰も死ななかった。


それだけは確かだった。


⸻


町近くまで戻った時だった。


「――いた!!」


前方から声。


護衛班だった。


数名の調査員と、護衛担当の冒険者たち。


彼らは戦闘音を聞き、危険を察知して町側へ後退していた。


その顔が、凍る。


「お、おい……」


レオンたちの姿を見たからだ。


全員ボロボロ。



ダグラスの鎧は砕け、弓手は血塗れ。

レオンのローブも裂けている。


そして。


リオ。


Cランク昇格直後の実力者が、

腕を固定された状態で支えられていた。


「なにがあったんだよ……」


護衛班の一人が呟く。


誰もすぐには答えなかった。


代わりに、ダグラスが後ろを親指で指す。


「異常個体」


空気が変わる。


「……は?」


「しかも、かなりヤバいやつ」


調査員の顔色が青くなる。


「討伐、したんですか……?」


沈黙。


そして。


「まあな」


傷だらけのリオが得意げに笑う。


その瞬間、護衛班全員の視線が変わった。


驚愕。

困惑。


そして、


少しの恐怖。


“Cランクが重傷を負う相手”。


それを理解したからだ。


⸻


リスベルへ戻った頃には、すでに夕暮れだった。

門兵がレオンたちを見て目を見開く。


「医療班呼べ!」


ギルド内も騒然となる。


「リオがやられた!?」

「異常個体ってなんだ!?」

「生きて帰ってきたのか……!?」


怒号。

ざわめき。


レオンはそこで初めて、周囲の視線を感じた。


以前とは違う。


“ただのDランクを見る目”じゃない。


その時、担架へ移されながら、リオが笑う。


「……だから言ったろ」


「お前、伸びるって」


レオンは何も返せなかった。

ただ、ギルド奥に運び込まれる黒狼の死体を見つめる。


あれは、間違いなく異常だった。


そして。


あんなものが、魔境側から流れ始めている。


その事実が、

静かに現実味を帯び始めていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は少し文章量が長くなってしまいました。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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