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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


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30/52

30:最期の攻撃、そして帰還

本日もよろしくお願いします。

異常個体の黒狼が崩れ落ち、その少しあと。


砕けた“核”から、赤黒い魔力が噴き出した。


「下が――」


リオが叫ぶ。


だが、遅い。



轟ッ――!!



暴風、そして爆ぜるような衝撃波が周囲を薙ぎ払った。



木々が揺れる。

岩が砕ける。


レオンは咄嗟に杖を突き立てる。

妖精鳥を全開で展開。


「耐えてくださいッ!」


ダグラスが盾を地面へ押し込む。

弓手と回復術師が身を伏せる。


だが。


「リオ!!」


一番近くにいたリオが吹き飛ばされた。


岩へ激突。

鈍い音。


「っ……!」


レオンが駆け寄る。


腕が、不自然に曲がっていた。


さらに、全身に裂傷。


風圧に混じった魔力片で切り裂かれたのだ。


血が滲む。


「骨、いってるな……」


ダグラスが顔をしかめた。


リオは苦笑する。


「いやー……最後に派手なの残してたなあ。意地が悪い時間差攻撃だよ全く...」


「喋らないでください」


レオンが即座に治癒支援を飛ばす。

完全治癒は無理だが、痛みは多少抑えられる。


回復術師も治療へ入る。


「応急固定します」


折れた腕を固定。

止血。

裂傷処置。



一通り終わった頃には、全員疲労困憊だった。


「……しかし、これ」


弓手が黒狼の死体を見る。


「完全に任務内容超えてるだろ」


今回の依頼は本来、《山岳地帯調査・護衛任務》。


最近増えている魔物異常の調査、そして、その調査員たちの護衛。


二班編成だった。


レオンたち“調査班”は、

異常の痕跡確認と原因調査を担当し、

別動の“護衛班”は、

荷運びや研究員の護衛を主目的として動いていた。


異常個体と遭遇したのは、調査範囲を広げたレオンたち側だった。


「戦闘音、かなり響いてたよな……」


ダグラスの呟きに、リオが頷く。


「護衛班、危険判断して下がったかもな」


当然の判断だった。


このレベルの戦闘に巻き込まれれば、普通は壊滅する。



帰りにはかなり時間がかかった。

リオは歩ける状態ではないため、ダグラスとレオンで支えながら進む必要があった。


「悪いな」


リオが苦笑する。


「……いつも前走ってる人の台詞じゃないですね」


レオンが返す。


「はは、違いねえ」


全員疲弊していた。

軽口でも叩いていないとやっていられない。

レオンも魔力がかなり減っている。


それでも、誰も死ななかった。


それだけは確かだった。



町近くまで戻った時だった。


「――いた!!」


前方から声。


護衛班だった。


数名の調査員と、護衛担当の冒険者たち。


彼らは戦闘音を聞き、危険を察知して町側へ後退していた。


その顔が、凍る。


「お、おい……」


レオンたちの姿を見たからだ。


全員ボロボロ。



ダグラスの鎧は砕け、弓手は血塗れ。

レオンのローブも裂けている。


そして。


リオ。


Cランク昇格直後の実力者が、

腕を固定された状態で支えられていた。


「なにがあったんだよ……」


護衛班の一人が呟く。


誰もすぐには答えなかった。


代わりに、ダグラスが後ろを親指で指す。


「異常個体」


空気が変わる。


「……は?」


「しかも、かなりヤバいやつ」


調査員の顔色が青くなる。


「討伐、したんですか……?」


沈黙。


そして。


「まあな」


傷だらけのリオが得意げに笑う。


その瞬間、護衛班全員の視線が変わった。


驚愕。

困惑。


そして、


少しの恐怖。


“Cランクが重傷を負う相手”。


それを理解したからだ。



リスベルへ戻った頃には、すでに夕暮れだった。

門兵がレオンたちを見て目を見開く。


「医療班呼べ!」


ギルド内も騒然となる。


「リオがやられた!?」

「異常個体ってなんだ!?」

「生きて帰ってきたのか……!?」


怒号。

ざわめき。


レオンはそこで初めて、周囲の視線を感じた。


以前とは違う。


“ただのDランクを見る目”じゃない。


その時、担架へ移されながら、リオが笑う。


「……だから言ったろ」


「お前、伸びるって」


レオンは何も返せなかった。

ただ、ギルド奥に運び込まれる黒狼の死体を見つめる。


あれは、間違いなく異常だった。


そして。


あんなものが、魔境側から流れ始めている。


その事実が、

静かに現実味を帯び始めていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は少し文章量が長くなってしまいました。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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