23:経験の値段
本日もよろしくお願いします。
「また行くのか?」
朝、ギルドの受付前。
ガド・バレインが呆れたように言った。
レオン・アルバーンは依頼書を手にしたまま頷く。
「……空いてる依頼が多いので」
町襲撃から数日経ったが、リスベル周辺はまだ不安定だった。
魔物の出現数も増えている。
結果として、依頼は山積み。
「若いなあ……」
ガドは苦笑した。
ここ数日、レオンは異様なペースで依頼を受けていた。
護衛。
採取。
討伐。
探索。
規模は様々。
まるで“止まるのを嫌がる”みたいに。
「無理すんなよ」
ガドが言う。
「……大丈夫です」
だが、ガドは鼻を鳴らした。
「大丈夫って言うやつほど危ねえんだよ」
レオンは少しだけ困った顔をした。
⸻
「座れ」
ガドが椅子を引く。
昼前のギルドは比較的空いていた。
「……はい」
レオンも腰を下ろす。
ガドはしばらく黙ってから口を開いた。
「お前、“急いでる”だろ」
レオンの手が止まる。
「昇格試験落ちたからか?」
否定できなかった。
ガドはため息を吐く。
「気持ちは分かる」
「俺も昔、無茶した」
酒臭い笑い。
「若い頃は、“数こなせば強くなる”って思うんだよ」
「……違うんですか?」
「半分正解、半分間違いだ」
ガドは指を立てる。
「経験は必要だし、場数も踏まなきゃ話にならねえ。
そこは否定しない。」
「でもな」
視線が真っ直ぐ向く。
「経験ってのは、“考えて残した経験”じゃねえと意味がねえ」
レオンは黙って聞く。
「死にかけました〜だの、ギリギリ勝ちました〜だの」
ガドは肩をすくめならが言った。
「そんなんだけ積み重ねても、ただ消耗するだけだ」
「……」
「ちゃんと、“何が良かったか”を残せ」
一拍。
「お前、最近ちょっと視野狭くなってるぞ」
その言葉に、レオンは少しだけ目を見開いた。
図星だった。
昇格試験。
町防衛。
足りないと言われたこと。
それが頭から離れない。
だから、とにかく前へ進もうとしていた。
「焦るなとは言わねえ」
ガドが言う。
「でも、“急ぐ”と“雑になる”は違うからな」
レオンは静かに頷いた。
「……ありがとう、ございます」
その日の午後。
掲示板前で依頼を探していた時だった。
「お、いたいた」
聞き覚えのある声に振り返る。
赤髪。
軽い笑み。
リオ・ヴァレット。
「久しぶり」
Cランクへ昇格したばかりの剣士。
レオンは少し驚く。
「……リオさん」
「今から任務?」
「はい」
リオは掲示板を見る。
「じゃあ一緒だわ」
指差した依頼。
⸻
《山岳地帯における調査・護衛任務》
⸻
「俺もそれ受ける」
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