表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/57

22:幕間:魔境の揺らぎ

本日もよろしくお願いします。

リスベルから北西へ半日。


山間部に築かれた、小さな観測砦。

本来なら、常駐するのは数名の調査員だけ。


だが今、その空気は異様なほど重かった。


「……数値がまた上がっています」


若い研究員が震える声で言う。


机の上には、複数の羊皮紙。

そこに記された魔力波形は、明らかに乱れていた。


「三日前から急激です」

「魔物の活性化も確認済み」

「周辺生態系の移動速度も異常値を――」


「静かにしろ」


低い声。


部屋の奥。

ローブを纏った老齢の男が、窓の外を見ていた。


名を、エドガー・セルヴェイン。

元Aランク冒険者。

現在は王国魔境対策局の顧問を務める人物だった。


彼はゆっくりと目を閉じる。


「……早すぎる」


本来、“周期”はまだ先のはずだった。



魔境。


人類未踏領域。

膨大な魔力が渦巻き、魔物を生み続ける異常地帯。


そして、数十年に一度。

そこでは“揺らぎ”が起こる。


魔力濃度の変動。

生態系の暴走。

魔物の大移動。


だが――


「今回の反応は、過去記録と一致していない」


エドガーが呟く。


若い研究員が唾を飲む。


「それは……」



「何かが起きている」



短い一言だった。

部屋の空気が冷える。


「魔境内部で、“変化”が始まっている可能性が高い」


それは、王国にとって最悪級の報せだった。


「原因は不明」

「発生源も不明」

「だが確実に、外縁部へ影響が出始めている」


リスベルの魔物襲撃。


それも、その一端に過ぎない。


「上へ報告を」


エドガーが言う。


「各地方ギルドへ警戒通達」

「特に――」


そこで一度、言葉を切る。


「中堅層の消耗を避けろ」


研究員が怪訝な顔をした。


「上位冒険者ではなく、ですか?」


エドガーは静かに首を振る。


「上位は数が少ない。本当に失えば立て直せないのは、“次世代”だ」


Dランク。

Cランク。


伸び始めたばかりの冒険者たち。


本来なら、まだ数年かけて育つはずの層。



だが時代は、それを待たないかもしれない。


窓の外。

遠くの山脈。


その奥には、“魔境”がある。


人の理を拒む、深淵。


エドガーは長く息を吐いた。



「……嫌な時代になるぞ」



誰にも届かない声が、静かな部屋へ沈んでいった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ