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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
リスベル防衛戦

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22/143

22:幕間:魔境の揺らぎ

本日もよろしくお願いします。

リスベルから北西へ半日。


山間部に築かれた、小さな観測砦。

本来なら、常駐するのは数名の調査員だけ。


だが今、その空気は異様なほど重かった。


「……数値がまた上がっています」


若い研究員が震える声で言う。


机の上には、複数の羊皮紙。

そこに記された魔力波形は、明らかに乱れていた。


「三日前から急激です」

「魔物の活性化も確認済み」

「周辺生態系の移動速度も異常値を――」


「静かにしろ」


低い声。


部屋の奥。

ローブを纏った老齢の男が、窓の外を見ていた。


名を、エドガー・セルヴェイン。

元Aランク冒険者。

現在は王国魔境対策局の顧問を務める人物だった。


彼はゆっくりと目を閉じる。


「……早すぎる」


本来、“周期”はまだ先のはずだった。


⸻


魔境。


人類未踏領域。

膨大な魔力が渦巻き、魔物を生み続ける異常地帯。


そして、数十年に一度。

そこでは“揺らぎ”が起こる。


魔力濃度の変動。

生態系の暴走。

魔物の大移動。


だが――


「今回の反応は、過去記録と一致していない」


エドガーが呟く。


若い研究員が唾を飲む。


「それは……」


⸻


「何かが起きている」


⸻


短い一言だった。

部屋の空気が冷える。


「魔境内部で、“変化”が始まっている可能性が高い」


それは、王国にとって最悪級の報せだった。


「原因は不明」

「発生源も不明」

「だが確実に、外縁部へ影響が出始めている」


リスベルの魔物襲撃。


それも、その一端に過ぎない。


「上へ報告を」


エドガーが言う。


「各地方ギルドへ警戒通達」

「特に――」


そこで一度、言葉を切る。


「中堅層の消耗を避けろ」


研究員が怪訝な顔をした。


「上位冒険者ではなく、ですか?」


エドガーは静かに首を振る。


「上位は数が少ない。本当に失えば立て直せないのは、“次世代”だ」


Dランク。

Cランク。


伸び始めたばかりの冒険者たち。


本来なら、まだ数年かけて育つはずの層。



だが時代は、それを待たないかもしれない。


窓の外。

遠くの山脈。


その奥には、“魔境”がある。


人の理を拒む、深淵。


エドガーは長く息を吐いた。



「……嫌な時代になるぞ」



誰にも届かない声が、静かな部屋へ沈んでいった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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